インタビュー
日本パレットレンタル株式会社

「貸す」から、回収するモデルへ

1971年に創業、今年で45期目を迎える日本パレットレンタル株式会社(JPR)は、JIS規格であるT11型パレットの普及促進とレンタルサービスの提供を通じ、物流最適化を支えてきた。JPRが使命として掲げるのは、出発地から到着地まで、同一のパレットに荷物を積載したままで輸送・保管を行う一貫パレチゼーションの推進だ。製配販にまたがり積み替え無しでのパレット輸送を行うことで、輸送・保管の双方から物流最適化を図る。

「貸す」から、回収するモデルへ

営業部 事業開発部 経営企画部 管掌
取締役 伊地知真弘 氏

またJPRではレンタルパレットの共同利用・回収を推進するほか、近年ではRFタグを活用して企業資産の個体管理が可能となる物流ソリュ―ションシステム「Llink(エルリンク)」を本格投入した。

同社の取組みについて、伊地知真弘取締役に話を聞いた。

「貸す」から、回収するモデルへ

近年はレンタルパレット以外にも資産管理システムを提供するなど事業領域を広げられていますが、レンタルパレットに特化した事業はどのくらい続きましたか。

伊地知 創業してからの20年間はほぼレンタルパレットのみのサービスを展開してきました。パレットをお貸しした日から返却までの料金を、日割り単位でいただくシンプルなビジネスモデルです。

日本のJIS規格で制定されたパレットサイズは数種類ありますが、JPRでは11型パレットをメインに取り扱っています。一貫輸送用平パレットとして国が定めたパレットを普及させていくことが我々の企業使命であると考えています。出荷、入荷、輸送・保管のサプライチェーンにおいて、サイズが統一されたパレットを使用することは非常に重要なファクターとなります。

当時の課題点は?

伊地知 レンタルパレットを導入していただくお客様には加工食品、日用品のメーカー様が多いのですが、工場で商品をパレットに積載して卸様の物流センター等に入荷します。商品を降ろして空パレットになると、各社がJPRロゴが入ったレンタルパレットを使用していますので、どのメーカーが持ち込んできたものか判別がつかなくなります。

納品した枚数分の空パレットを持ち帰る仕組みでは、持ち帰る枚数を間違える可能性もありますし、そもそも大型トラックにパレットを数枚だけ乗せて帰るのも非効率的です。そこで、納品先からの回収はJPRが一括して引き受けましょう、と共同回収の取組みを始めました。

この仕組みを業界全体で活用しているのが加工食品業界で、1990年にP研(JPR11型レンタルパレット共同利用・回収推進会)という団体を組織し、レンタルパレット活用と空パレットの共同回収を行うことで、複数企業間での効率的な一貫パレチゼーションを構築しています。

名称は、「食品メーカー一貫パレチゼーションシステム研究会」「T11型パレット共同利用推進会」「T11型レンタルパレット共同利用推進会」など変遷を重ね、当初は東名阪から開始しましたが、同会の設立後約20年間にかけてようやく全国的な仕組みへとなってきました。

レンタルから、回収するモデルへの転換となりますね。

伊地知 わが社の第1次産業革命のようなものです。次なる目標としては、受け渡しの際に誰が持ってきたパレットなのかを管理することです。貸すという段階から「パレット管理」のフェーズへと入りました。パレットを単に貸していた時代には絶え間なく供給することが重要なファクターでしたが、パレット輸送が普及するにつれ、パレットの管理そのものが効率化する必要性に迫られました。

個体管理を実現する「Llink」

管理をするために必要なものは?

伊地知 レンタルパレットの正確な受け払いを目的に、ITツールとなるWeb物流機器在庫管理システム「epal」(イーパル)を2002年にリリースしました。現在、6,000以上のIDを発行し、パレットの出荷側・入荷側の双方でご利用いただいています。

出荷側・入荷側の両側から確認できる発着照合機能で入出荷情報をマッチングさせることが可能です。ASPサービスのためインターネットを利用することで、いつでもどこでもリアルタイムに物流機器の情報を把握することができます。

epalは「総量管理」となりますが、Linkで目指したのは「個体管理」です。

その個体管理にはバーコードのほか、2次元シンボル、RFIDなど自動認識ツールの活用がキーとなりますので、JPRレンタルパレットへのRFIDの貼布も開始しました。

読み取り率の問題から、RFID貼布はプラスチックパレットのみとしました。現在は約600万枚のプラパレのほとんどに装着済みです。

epalはレンタルパレットを管理する目的で開発したものでしたが、LlinkはRTI全般(パレットやカゴ車、プラスチックコンテナなどの通い容器)の管理を目的として開発しています。

RFID等の自動認識技術を活用して、自社保有のRTIの入出荷データを自動認識技術で吸い上げて、RTIのイベント管理を行います。

また、自社所有の容器がどこにあるのかというステータス管理をより分かりやすく表示するために、ダッシュボード機能も搭載しました。

モノの流れとRTI情報を一体化するクラウドサービスであるLlinkは、RTIのスムーズな管理、流出防止によるコスト削減だけでなく、個体管理により蓄積したビッグデータを分析し活用することで、RTIの新たな可能性を切り拓いていきたいと考えています。

長期滞留、リードタイム、回転日数、入出庫推移の把握がひとめでわかる、RTI管理に欠かせないデータを一括表示することでRTIの状況が分かりやすくなりました。

モノの流れをレンタルと情報で最適化

レンタルパレットにも対応されますか。

伊地知 レンタルパレット用、お客様が所有するRTI用の2シリーズを用意しました。またお客様用には、英語版も用意しています。これにより、例えば海外生産を実施しているメーカー様ではこれまでパレットや容器の管理は困難でしたが、一元管理化することで可視化できるメリットが得られます。

Llinkは、お客様にさまざまなテストでご協力いただきながら開発しました。アサヒビール様は2009年より生ビールの炭酸ガスボンベに金属対応のRFタグを装着して、従来の手書きによる記帳作業とバーコード読取で1本30秒かかっていた検品作業が3秒で作業完了するようになりました。RFIDで一括読み込みが可能となり大幅な作業時間短縮を実現しています。

また貸出先別に滞留日数と回転日数のブレ幅を把握し、これまでは推測だった部分が個体データをもとに分析することで可視化が可能となりました。

イオングローバルSCM様では全国の店舗で2013年から本格的にご利用いただいています。RFタグ付きのカートラック(6輪台車)に商品を積載、物流センターから店舗まで配送を行います。店舗ではカートラックのまま保管、陳列時にもカートラックごと店舗に運びます。使い終わったらセンターに戻しますが、不思議なことにこれがなかなかセンターに戻らなかったそうなんです。目視による現物管理の捕捉率は約7割でしたが、今では個体管理により99.6%まで向上しました。現在イオングローバルSCM様では折りたたみコンテナの管理にもLlinkをご利用いただいております。

Llinkの本格的な外販はこれから?

伊地知 今後はセミナーを開催するなど、業界に向けてアピールし、まずは1万件のお客様に紹介することを目標にしています。

JPRが考えるLlinkの第2フェーズは「商品管理」です。パレットなどに載せた商品は卸様の物流センター等の入荷側で入荷検品が必須な作業となっていますが、パレットのユニークIDと積載した商品とASN(商品出荷情報)を紐付けることでノー検品が可能となります。ストレッチフィルムで巻いておけば途中で商品を抜かれることは考えにくく、またフォークリフトの爪に重量を計測できるアタッチメントを装着することでパレット重量とRFID情報を連動した、盗難・紛失状態も管理しながらの検品も可能となります。

今後もJPRのレンタルパレットをご利用いただくお客様だけではなく、自社で物流容器をお持ちの全ての企業様に新たなサービスとして広く提供していき、モノの流れを最適化するサービスカンパニーを目指していきたいと考えています。

注釈

※インタビュー:2015年9月当時
数字や役職・名称等は、2015年9月当時の情報を使用しています。
※「Llink」は「Logiarx」に名称変更いたしました。(2016年9月)


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