CREフォーラム レポート
サンスターグループ

(レポート)サンスターのSCM事例 ―在庫の適正化へ向けて―

サンスターのSCM組織の構築

サンスターのSCM組織の構築

私が担当している部署「SCM」(Supply Chain Management:原材料の調達から製造、流通、販売までを含む、生産から消費に至る商品供給の流れのこと)は、“在庫削減”を目的としたSCMを行うために、生産量を確定する「需給調整チーム」、顧客の需要を直接聞く「受注チーム」、物の流れをトータルで実行する「物流企画チーム」が統合されて作られた部署です。

具体的には、顧客の動向や販売計画等を考え併せ、需要予測をして生産数量を決める、適切な物流の流れを決める、受注作業で得られた顧客情報を生産部や営業部等へ伝える…などの業務を日々行っています。

在庫が増える理由

営業部、生産部、物流部は、それぞれ異なるKPI(Key Performance Indicator:企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標)に基づいて活動しています。営業のKPIは「売上利益拡大」、生産のKPIは「原価低減・生産効率向上」、物流のKPIは「物流費削減」です。しかし、いずれの部署も欠品を嫌うので、結果的に、営業部は余分に製品を要望し、生産部は余分に生産し、物流部は余分に輸送することになります。これらの行為はすべて在庫の増大につながってしまいます。

そこで「物流企画チームが、生産部、営業部、物流部それぞれに在庫削減を促す必要が出てきます。在庫削減は、調達・販売部門にとっては不利益な活動であることが多いです。口では「在庫は減らさなきゃいけない」と言っていても、本音では、たくさん在庫があって、いつでも売れる状態にしておきたいのです。

なぜメーカーの販売計画と、市場の販売推移に差が出るのか?

販売計画と実際の売れ行きに差が出てしまう理由は3つ考えられます。1つ目は、「販売計画が営業部によって作られる」という点です。営業部は、「1年間という単位でどれだけ売るか」、金額をまず最初に決めて動きます。その目標金額を1年で帳尻を合わせるために、月々の販売計画を作るのです。したがって「今月の売上げが悪かったら、翌月は今月より高い目標を掲げた計画を作る」というようにして計画を作ります。これは決して需要予測をして立てた計画ではありません。言ってみれば、「販売はこれだけ頑張ってくれるだろう」という期待を込めて立てられた計画にすぎません。このため、計画と実際の売れ行きに違いが出てしまうのです。

2つ目の要因は、「在庫エリアが多い」ということです。我々の商品がお客様に実際に消費されるまでに、商品は、製品工場、卸店、店頭、家庭へと移動していきます。そして、それぞれの場所に商品が在庫としてある程度の日数置かれます。商品が消費者に届くまで、在庫として留め置かれる期間があるため、販売計画と実際の販売推移にずれが生じてきてしまいます。

3つ目の要因は、「時間軸の違い」です。営業から販売計画をもらっても、すぐには商品を生産できず、資材の購入等にかかる時間を見ておかなくてはなりません。したがって、2カ月前に販売計画をもらい、それに基づいて生産部は予定を立てていきます。営業部も「2カ月後にどの商品がどれだけ売れる」かを明確に理解して計画を立てているわけではありませんから、生産数と実際の売上げには当然差が出てきます。

これら3つの要因が重なり合い、結果的にメーカーの販売計画と市場の販売推移には差が出てきてしまいます。

販売計画の問題点

先ほど申し上げたように、営業部のKPIは売上利益拡大ですから、「全体の売上げが上がればいい」という考えで販売計画を立てていました。そこで、実際にその販売計画の中身を詳細に見てみると、SKU(Stock Keeping Unit:在庫管理の最小単位)ごとの正確な販売数量までは計画していないことがわかってきました。そのため、全体の売上計画は達成していても、個々の製品については、在庫が増加したり、欠品率が悪化するという現象が起きていたのです。

在庫削減に向けて行うべきこと

在庫を削減していくためには、まず在庫を正確に把握しなければなりません。そのためには、在庫は月末に合計で見るのではなく、1つひとつのSKUごとに毎日チェックし、また、カテゴリー、ブランド、価格等の観点から多角的に見ていくことが必要になってきます。そして、「種別や分類定義を明確にしなければならない」ということに、在庫把握に取り組んでいくなかで気づいてきました。

そこで、在庫を全部洗い出し、在庫増加の原因となっている「問題在庫」の種類を3つに分けて名前を付けました。数カ月販売がない、または出荷期限以上に在庫日数があるものを「死蔵在庫」、補充時の在庫が安全在庫を上回るものを「過剰在庫」、最低在庫が増加、あるいは販売が低迷し在庫日数が増加したものを「膨張在庫」と命名しました。

以上の3つに分けて、問題在庫を把握し、管理し、在庫削減していこうと考え、2つの方法を社内に示しました。「圧縮」と「縮減」です。販売終了した品や旧品、過剰安全在庫は圧縮していき、定番品や新製品などは、必要以上に増やさないように収縮していくというやり方です。

しかし、いざ実際に実行しようとすると、たとえば営業部の方から「在庫を圧縮してしまうのはもったいない」などの意見が出て、在庫削減はうまく進みませんでした。そこで、一歩ずつでもいいから在庫削減を実行していくために、具体的に4つのステップを考え出しました。1つ目は、「死蔵在庫を発見し、早く処分する」。2つ目は、「安全在庫を適正値まで下げる」。3つ目は、「膨張する在庫の発注停止」。4つ目は、「消費推移と計画差異の常時監視」といった内容です。そしてようやく、1つずつステップを踏み、時間をかけて在庫削減に取り組んだ結果、40%の在庫削減と欠品の低減を実現することができました。

これから求められるSCM

我々サンスターが扱う日用雑貨品は、今までは大型スーパー等に大量に並べられることが多かったのですが、最近はコンビニやスモールスーパー等の増加に伴い、商品を置けるスペースが小さくなってきています。一方で、EC(Electronic Commerce:インターネット等、電子的な手段を介して行う商取引)での販売量もどんどん増加しています。需要予測や在庫適正化の調整は今後、より複雑で大変になってくると思われます。

これまでは過去の販売実績等をもとにして需要予測を行ってきましたが、現在は、SNSの口コミやPOSデータ等、需要予測に生かせるデータが様々にあります。我々、SCMを行う者としては、今後は、テクニカルな部分や知識の部分も含めて、環境の変化に合わせてもっと高度化していかなければならないと考えています。

講師紹介

サンスター グループ
経営本部 理事 荒木 協和 氏

サンスター グループ
経営本部 理事 荒木 協和 氏

物流会社経営を経て、1994年サンスターグループに入社。以後、中間流通物流企画、メーカーの生産物流改革、販売物流企画などを担当。2007年に物流・需給調整・受注・回収管理を統合したSCM部門を新設し、グループのサプライチェーンを担当する。2009年に在庫適正化を目的とした、在庫可視化システムP.S.I.V.を日立ソリューション東日本社と共同で開発。4つの特許を取得し、在庫の40%削減を推進する。また2012年、日本を含むアジア統括の受注センターをバンコクに立ち上げ、グローバルな観点でのSCM最適化を進めている。

物流会社経営経験による業界事情の把握と、消費財メーカーのロジスティクス知識を複合し、現状に適した構造改革を目指している。

募集要項

イベント名 第26回CREフォーラム|「サンスターのSCM事例 ―在庫の適正化へ向けて―」
日時 2016年 7月22日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了
会場 虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階
東京都港区虎ノ門2-10-1
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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