CREフォーラム レポート
株式会社ノーリツ

(レポート)ノーリツのロジスティクス改革(スルー型クロスドッキングシステム)

株式会社ノーリツの概要

株式会社ノーリツの概要

ノーリツは、ガス給湯器や石油ボイラー、システムバスなどの住宅設備機器を製造販売するメーカーです。創業は昭和26年で、兵庫県神戸市中央区に本社があります。平成28年12月期の連結売上高は2,118億円になります。

NRPS(NORITZ Production System)活動による生産性向上と効率化

私たちは1980年代半ばから、NRPSという、トヨタ生産方式をベースとした「必要な商品を必要な分だけ、必要な時にお届けする」ことができる独自の生産方式を推進しています。NRPSの目的は、あらゆる無駄を排除すること、そして短納期で商品をお客様に届けることです。またNRPS活動は、生産現場のみにとどまらず、営業・管理業務、その他の業務へと展開していくことで、企業活動トータルの生産性向上と効率化も目指しています。

企業全体の経営効率を向上させるためには、「営業」「生産」「物流」の3つの部門のタイミングを合わせることが重要です。営業には「売るわがまま」、生産には「つくる勝手」、物流には「運ぶ都合」があり、部門間には見えない壁が存在します。この壁を取り払い、3部門が連携してタイミングを合わせることで、初めて効率が上がるのです。

NRPSによるトータルリードタイムの短縮

製造や物流においてはコストダウンを求められることが多いですが、もうひとつ重要なのが、発注から納品までにかかる時間、つまりリードタイムの短縮です。リードタイムには、調達のリードタイム、生産のリードタイム、販売物流のリードタイムがありますが、ノーリツは、それらすべてを短縮してトータルのリードタイムを短くする活動に取り組んでいます。

たとえば、部品を製造する協力メーカーさんに対して、私たちは、生産計画を1日に12回に分けて順に生産着工指示を出して、部品調達をするという方法をとっています。これによって、受注生産品において、受注翌日の生産・出荷、受注翌々日の発送が可能になり、トータルリードタイムを3日短縮することができました。

「便別着工」-トラックに合わせて生産着工

NRPSにおいて特徴的な取り組みにはもうひとつ、「便別着工」があります。システムバスとシステムキッチンは基本的に便別着工で製造しています。便別着工というのは、製品が出来てからトラックを呼ぶのではなく、トラックが工場に来る時間をあらかじめ決めておいて、それに合わせて生産をするという方法です。これによって、積み込み場の荷物の滞留がなくなり、またリードタイムも短縮できました。

NRPS活動で顕在化した倉庫の課題-DC(在庫型物流センター)の削減

NRPS活動によって、いくつかの課題も明らかになりました。たとえば「ノーリツが所有する倉庫の設置場所と数は、在庫管理において最適であるか」という問題もそのひとつです。1995年当時、ノーリツは、群馬県前橋市と茨城県土浦市と兵庫県明石市に工場を持ち、そのほかに福岡、広島、相模原、大宮、新潟、仙台、札幌にDCを設置していました。しかし、在庫管理の効率化を考ると、DCから出荷するよりも、生産拠点から出荷するほうが良いのではないかと考えるようになり、仙台、札幌以外のDCは廃止しました。これによって、在庫日数の削減ができました。

在庫管理の改善-「先入れ先出し」ができる倉庫へ

さらに、在庫管理という点において、倉庫内の製品の積み方も変える必要が出てきました。なぜなら、2009年に施行された「長期使用製品安全点検制度」により、私たちのメインの製品である給湯器は、10年に一度点検をしなければならなくなったからです。製造年月日から数えて10年ということになりますから、ちょっとでも古い製造年月日の商品をお客様に届けるとクレームがくる場合も出てきたのです。

そこで私たちは、「先入れ先出し」(保管品の長期滞留による劣化を防ぐために、先に仕入れたものを先に出庫すること)ができるように製品の積み方を変え、倉庫の在庫管理を効率的にできるように改善しました。

スルー型クロスドッキングシステム

先ほど述べましたように、ノーリツは、在庫管理を効率化するために、倉庫からの出荷ではなく、生産拠点からの出荷をメインにする方向に切り換えています。現在、私たちの生産拠点は、兵庫県明石市、大阪市、茨木県土浦市、群馬県前橋市にあり、そこから出荷しています。兵庫ではガス温水機器と石油温水機器と洗面化粧台、大阪はテーブルコンロとビルトインコンロ、つくばはシステムバスと石油温水機器、前橋はシステムキッチンと洗面化粧台をそれぞれ出荷しています。

これらの出荷拠点から各製品を全国に効率よく配送するための仕組みがスルー型クロスドッキングシステムです

最近は、新築よりもリフォームの需要が増えていますが、リフォームの場合、システムバスと給湯器と洗面化粧台を一度にまとめて取り替えることがあります。その際、各工場からバラバラに製品を運ぶのではなく、一遍に運べるようにしたいと考えました。そのために、私たちが契約している運送会社の支店に、同じ時間帯に各工場から製品が届くように工場の出荷作業を進めるようにしました。そして、その運送会社の支店で各工場からの製品をドッキングさせ、運送会社にお客様に配送してもらいます。運送会社の支店に在庫としてとどめず、製品が着いてすぐに配送してもらうという意味で「スルー型クロスドッキングシステム」なのです。

スルー型クロスドッキングの要-運行ダイヤグラムと17分サイクルの出荷作業による物流業務の時間管理

運送会社の支店で時間どおりに荷物をドッキングさせるためには、工場の出荷作業の時間管理が必要になります。そこで私たちは、トラックの運行ダイヤグラムを決め、「製品のピッキング」「パレット(荷物を載せるための荷役台)への積み付け」「トラックへの積み込み」という、それぞれの作業を17分サイクルで回すことにしました。

この一連の出荷作業が遅れてしまうと、運送会社の支店でのクロスドッキングに間に合わなくなってしまいます。そして、予定時間どおりにお客様に商品を届けられなくなります。つまり、先ほど申し上げた「営業」と「生産」と「物流」の3部門がすべて連動していないと、このスルー型クロスドッキングシステムもうまく回っていかないのです。

NRPSによる在庫日数の削減

NRPS活動を始めた1980年代前半には、在庫日数は約36日ありましたが、余分なDCを減らしたり、調達・生産・販売物流のトータルリードタイムを短縮するとこで、現在は6日~8日までに在庫日数は減ってきています。「営業」「生産」「物流」の連携を進めるNRPS活動によって、在庫日数の削減が実現できたのです。

荷主及び業界が取り組む課題

物流業界が解決しなければならない現状の課題は数多くあります。大型長距離トラックドライバーの人手不足、ドライバーの待機時間と残業時間の問題、新車発注後1年以上かかるというトラック納車の問題…などなど、このような問題により、需要があるのに「運べない」というリスクが現在、顕在化してきています。

物流には、製造業などの荷主企業、荷主系の物流会社、運送会社など、さまざまなプレーヤーが関わっています。そして、それぞれの立場によって物流の捉え方にギャップがあるのが現状です。

今後、物流に関わる各プレーヤーが、このギャップを埋めていき、協力しながら物流の課題を解決していくことができれば、物流業界全体としての生産性向上ができるのではないかと考えています。

講師紹介

株式会社ノーリツ 物流システム部
副理事・担当部長 三村 光昭 氏

株式会社ノーリツ 物流システム部
副理事・担当部長 三村 光昭 氏

入社後東京支店に配属。
営業課長、経営企画室、グループ会社取締役、経営企画室を経て、2002年から物流システム部に異動。スルー型クロスドッキングシステムなどの物流改革を実践。JILS日本ロジスティクスシステム協会ロジスティクス大賞特別賞を2004年、2007年に受賞。

現在、(公社)日本ロジスティクスシステム協会関西支部運営副委員長、2012年~2017年ロジスティクス関西大会実行委員長、 (一社)兵庫県中小企業診断士協会会員研修委員、ものづくり&SCM研究会代表幹事なども務めている。

募集要項

イベント名 第31回CREフォーラム|『ノーリツのロジスティクス改革(スルー型クロスドッキングシステム)』
日時 2017年 2月24日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了
会場 虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階
東京都港区虎ノ門2-10-1
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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