インタビュー
上智大学・荒木勉教授

SCM効率化にRFIDが果たす役割

最近、トラックドライバー不足が大きく話題になっているが、今の荷主には単なる物流の一課題としてではなく、SCMの最適化、効率化も含めて考えてほしいと思っている。SCMの最適化については、RFID導入の効果について、長年研究してきた。ここにきて、障害物に強いUHF波の有効性が周知されたり、RFIDチップの値段が下がってきたりしたこともあり、アパレル業界中心に取り入れた改善例を目にすることが増えた。

SCM効率化にRFIDが果たす役割

日本のアパレル業界での代表例といえば、BEAMSが挙げられる。同社はライフスタイルブランド「ビーミング ライフストア」から始まり、全面的にRFIDタグを導入する方針を取っている。流行の移り変わりが速く、またRFIDを使用するに耐える価格帯の商品を数多く持つアパレルブランドとして、SCMの情報管理の重要性、欠品のない迅速かつ適正な商品供給を実現する手段として、大いに注目している。

海外では、スポーツブランドや高級アパレルなどに多く利用されている。また、ウォルマート、マークス&スペンサーといった莫大な物量を流通させる小売大手でも、導入されている。

日本の製造業では10年ほど前に導入の機運が高まったが、RFIDは金属との相性があまりよくなく、当時は価格が高かったため、広まらなかった経緯がある。ただ、海外では製造業において、製造工程の一部にRFIDタグの取り付けを組み込んでしまい、製品のトレースだけでなく、製造工程のデータ収集、改善に役立てている事例もある。

製品だけでなく、カゴ車・パレットなどマテハン機器への導入も始まっている。どこの物流現場でも目にするマテハン機器は、残念ながら企業に会社の資産として管理する意識が薄い。しかし、購入・レンタルには年間少なからぬ費用がかかっている。トレーサビリティと会社の資産管理との両面からRFID導入の効果が期待される。

最近のRFIDをめぐる動きとしては、やはり物流現場における人手不足との関係が切り離せない。トラックドライバー不足のため、荷主の中には共同配送に活路を見出そうとしている企業がある。この場合、荷主の物流センターから共同配送の混載センターに集め、店舗ごとに配送するなど輸送経路が複雑になり、検品の必要性も生じる。ここで人手をかけてしまうとせっかくの共同化の効果が薄まってしまう。そこで、RFIDを活用すれば、荷主のセンターから店舗まで、出荷以降の検品をなくし、省力化を実現できる。また、物流品質も向上する。

東日本大震災で企業に重要性が痛感されるようになった事業継続計画(BCP)、トラックドライバー不足などに端を発する物流費高騰などから、今まで以上に荷主が本気で物流改革に取り組むべき時期に来ている。そのことは、同時にSCMにおける物流の重要性が意識されるようになったことに他ならない。

私の大学のゼミでも、卒論にASEAN物流や物流不動産など物流に関するテーマを選ぶ学生が増えている。海外では、ロジスティクスを重視する企業は多いが、日本も傾向が変わってきたことを感じる。今後、現在の危機を乗り越え、日本のSCMのさらなる向上に期待したい。

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