CREフォーラム レポート
日本郵便株式会社

(レポート)日本郵便の物流事業

日本郵便株式会社の沿革と概要

日本郵便株式会社の沿革と概要

日本郵便は、明治4(1871)年に郵便事業を開始し、明治25(1892)年に現在の「ゆうパック」の前身となる郵便小包事業を始めました。その後、逓信省、郵政省の時代は、郵便法に基づいて国が自ら事業を行ってきました。

そして平成13(2001)年、省庁再編の際に「業務」と「監督」の分離が行われ、郵便事業を監督する総務省と、実際に業務を実施する郵政事業庁に分かれました。

平成15(2003)年には、郵政事業庁は公社化されて日本郵政公社となり、さらに、平成19(2007)年に民営化され、日本郵政株式会社・郵便事業株式会社・郵便局株式会社・株式会社ゆうちょ銀行・株式会社かんぽ生命保険の5社体制になり、そして平成24(2012)年に、5社のうち、郵便事業株式会社と郵便局株式会社が統合されて日本郵便株式会社となり、現在の4社体制になりました。

日本郵便の業務の概要

日本郵便が行う業務は、「郵便・物流」「金融窓口」「国際物流(トール社)」の3つのセグメントに分けられます。

「郵便・物流」においては、国内郵便、国際郵便、印紙の販売、荷物の配送、物流ソリューション事業を行っています。

「金融窓口」においては、ゆうちょ銀行、かんぽ生命からの委託を受けて行う銀行窓口業務・保険窓口業務、ガン保険や自動車保険の販売等を行う提携金融、ふるさと小包等の物販、不動産事業を行っています。

「国際物流」においては、2015年にオーストラリアの物流会社であるトール社を完全子会社化し、豪州国内物流事業や国際フォワーディング事業、3PL(サードパーティ・ロジスティクス:荷主に対してロジスティクス改革を提案し、包括的にロジスティクスサービスを受託する業務)を行っています。

本日は、このうち、1つ目のセグメントである「郵便・物流」事業を中心に話を進めていきます。

郵便・物流事業を取り巻く市場環境の変化

現在、郵便・物流事業を取り巻く市場環境は、さまざまに変化しており、私たちの事業に影響を与えています。その主なものとして、3点あると考えます。

まず1つ目は、国内人口の減少、高齢化・過疎化の進展です。
人口減少は、郵便や「ゆうパック」等の利用減につながり、高齢化による労働人口の減少は雇用の困難につながり、過疎化の進展は、過疎地域の業務能率の悪化につながっていきます。

2つ目は、インターネットの普及です。
これは郵便と荷物では正反対の影響が出ています。請求書のウェブ化の進展により、郵便物数の多くを占めていた通信会社や金融機関の請求書が減少しています。一方で、eコマース市場の拡大に伴い、通販・宅配便市場が拡大し、荷物の取扱量は増えています。

3つ目は、国際輸送の拡大、物流のグローバル化です。
通販等の国際間のやりとりが増え、国際郵便は増加して、プラスの影響が出ています。

1日当たりの配達物数・配達箇所数の変化

これらの市場環境の変化に伴い、1日当たりの配達物数と配達箇所数はどのように変化しているかというと、配達物数は減少傾向にありますが、配達箇所数にはほとんど変化が見られません。その原因は、1世帯当たりの人数は減っているため、世帯数は増加しているからです。そのため、配達箇所数が減らないまま、配達物数が減っていくことになり、配達能率が低下していくという苦しい状況となっています。

日本郵便のインフラ~郵便・物流ネットワークの再編~

日本郵便は、郵便・物流を支えるインフラとして、2万9,000台の軽四輪、8万5,000台のバイク、全国で約2万の郵便局、18万個のポスト等を持っており、全国を網羅する郵便・物流ネットワークを築いています。

この郵便・物流ネットワーク全体の生産を向上させるために最近取り組んでいるのが、郵便・物流ネットワークの再編です。集配郵便局内で行っている郵便物や「ゆうパック」「ゆうメール」等の区分作業拠点を地域区分郵便局に集約するほか、機械処理率の向上等の取り組みを行っています。これによって、今後の成長基盤を構築していきたいと考えています。

日本郵便のサービス~お客様のニーズに応える多種多様な国内配送サービス~

◆「ゆうパック」と「ゆうメール」
日本郵便が行う国内配送サービスにおいて代表的なものが「ゆうパック」と「ゆうメール」です。

「ゆうパック」は宅配便のサービスです。他社と比べて特徴的な点は、不在再配達になった際に全国の郵便局に無料で転送するサービスを行っていることです。また、郵便局以外に職場に転送するサービスも行っており、これは今後さらに強化していく必要があると考えています。

「ゆうメール」は、以前は冊子小包と言っていたもので、本やカタログ類等の紙製品を郵便受けに配達するサービスです。

◆「ゆうパケット」と「クリックポスト」~再配達問題に対する1つの解決策として~
「ゆうパック」と「ゆうメール」は日本郵便が長らく行ってきた荷物分野のサービスですが、現在、力を入れている新しいサービスに「ゆうパケット」と「クリックポスト」があります。

最近、宅配便の再配達問題が話題になっていますが、弊社の「ゆうパック」においては、ここ10年間、再配達率は変わっていません。宅配便業界全体で再配達数が増えてきているのは、BtoB(事業所宛て荷物)とBtoC(個人宛て荷物)のバランスが変化し、BtoCの比率が増えてきたためではないかと考えます。「ゆうパック」はもともとBtoBの荷物がほとんどなく、BtoCやCtoCが多かったので、再配達の比率の変化はほとんど見られません。しかし、業務の効率化という面からも、日本郵便も再配達問題には何かしらの方策を打っていく必要があると考えます。

そもそも不在再配達問題がなぜ起こるかというと、人が対面で荷物を配達しようとするからです。女性が結婚・出産後も働くことが当たり前になり、日中、各家庭に人が安定的にいることが見込めない状況下において、日中、配達に行って、直接対面で荷物を受け渡すことは難しくなっています。

そこで弊社が始めたサービスが、「ゆうパケット」と「クリックポスト」です。

「ゆうパケット」は、厚さ3cm以内、3辺計60cm以内、重さ1kg以内の小型で薄い荷物を郵便受けに配達するサービスで、対面での受け渡しは行いません。また、運賃も「ゆうパック」より安く設定しています。

「クリックポスト」は、自宅で簡単に運賃支払手続と宛て名ラベル作成ができ、厚さ3cm以内、長さ34cm以内、幅25cm以内、重さ1kg以内の荷物を全国一律運賃(164円)で送ることができるサービスです。「クリックポスト」も「ゆうパケット」と同じように対面の受け渡しは行わず、郵便受けに配達します。

不在再配達問題を考えるときに、「ゆうパケット」や「クリックポスト」のようなサービスは、1つの答えになるのではないかと考えます。

受取チャネルの多様化

厚さ3cm以内の小型の荷物は、「ゆうパケット」や「クリックポスト」を利用することで再配達問題は解決できますが、それより大きな荷物の再配達を減らすためにはどうしたらいいかという問題はまだ残っています。それを解決するために取り組んでいることの1つが、受取チャネルの多様化です。

日中、自宅で荷物を受け取ることが難しいお客様のために、日本郵便は、インターネット通販の荷物の受取場所として、「はこぽす」(郵便局等に設置された宅配ロッカー)やコンビニ、郵便局等、受取場所を選択できるサービスを提供しています。これにより、お客様は好きな時間に荷物を受け取ることができ、また、再配達の問題も解決できます。

宅配便市場全体の伸張等を背景に、「ゆうパック」の取扱数は増加傾向にあります。「ゆうパック」においては、再配達をなくすということが事業の効率を決定づける一番大きな要素となりますので、受取チャネルの多様化等を進めていくことで再配達を減らしていくことが、今後数年間の日本郵便の課題の1つであると考えています。

日本郵便の物流ソリューション~業態の拡大~

日本郵便は、民営化以前から行っている郵便や「ゆうパック」等の配送事業だけでなく、民営化以降は、物流ソリューション(いわゆるロジスティクス業務)の提供にも取り組んできました。その1つとして、例えば、1日当たり約2万8,000個の荷物・商品を全国2万4,000の郵便局に発送する社内物流ノウハウを活かし、企業さまの物流業務改善に対する提案及び提供を行っています。

今後、郵便物の減少傾向が続いていく中で、日本郵便として事業を維持していくためには、「ゆうパック」や「ゆうメール」等、従来行ってきた配送事業を拡大するということも1つありますが、一方で、物流ソリューションの提供をはじめとして、もう一段、業態を広げていく取り組みも進めていかなければならないと考えております。

講師紹介

日本郵便株式会社
郵便・物流事業企画部長
指宿 一郎(いぶすき いちろう)氏

日本郵便株式会社
郵便・物流事業企画部長
指宿 一郎(いぶすき いちろう)氏

1997年 郵政省入省
2007年 郵政民営化に伴い、郵便事業株式会社経営企画部課長、同担当部長
2012年 郵便局会社との会社統合以降、日本郵便株式会社経営企画部担当部長、経営管理部長、郵便・物流商品サービス企画部長を歴任
2017年4月 日本郵便株式会社郵便・物流事業企画部長

募集要項

イベント名 第36回CREフォーラム|『日本郵便の物流事業』
日時 2017年 7月28日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了
会場 虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階
東京都港区虎ノ門2-10-1
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング室
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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