CREフォーラム レポート
株式会社日通総合研究所

(レポート)日通総研 日本の物流の現状と課題~グローバルな視点から~

日通総合研究所の概要

日通総合研究所の概要

日通総合研究所は、1961年に設立された日本通運株式会社の100%子会社で、調査・研究・コンサルティング業務を行っている会社です。

中でも最近はコンサルティング業務が増えてきており、荷主企業の物流改善や物流事業者の経営改善などにも携わっています。

日本の物流、ウソのようなホントの話

・減り続ける日本の貨物輸送量
トラックドライバーの不足問題がマスコミでもよく取り上げられているので、「日本の貨物輸送量は年々増え続けているのではないか」という印象を持たれる方もいるかもしれません。しかし実際は、国内貨物輸送量は年々減り続けています。

日本の貨物量が漸減している理由はさまざまありますが、代表的な要因は3つあると思います。1つ目は、日本から工場がなくなり、海外へシフトしているため、原材料や部品など工場に関わるさまざまな物の輸送が減ってきているということ。2つ目は、人口減少に伴う貨物量の減少、そして3つ目は、工業製品自体の小型化による物量の減少です。

このような理由により、日本の貨物輸送量は減る傾向にあるという認識をまずは持っていただきたいと思います。

・宅配便の全体貨物輸送量に占める割合
最近話題になることが多い宅配便ですが、確かに宅配便の輸送量は増えてはいます。しかし、右肩上がりに大幅に伸びているわけではありません。漸増です。さらに言えば、宅配便が全体貨物輸送量に占める割合は、どんなに大きく見積もっても2%台、恐らくは1%以下でしかないのです。宅配便などのBtoCより、土木建築資材など、BtoBの貨物量のほうが圧倒的に多いのが日本の物流の現状です。

日本の物流は世界でどのように評価されているか?

・日本の物流は160カ国中12位
世界銀行が、世界160カ国にアンケート調査をした「Logistics Performance Index」による各国物流の評価において、日本は12位です。シンガポールと香港を除けば、日本より上位にいるのは欧米の国々です。

・日本型物流と欧米型物流
「Logistics Performance Index」で上位を占める欧米の物流と日本の物流には明確な違いがあります。日本型物流は「オートクチュール型」(Customization)で、個々の荷主のニーズを聞いて、そのニーズに応える質の高いサービスを目指しています。

一方、欧米型物流は「プレタポルテ型」(Standardization)です。物流事業者側からロジスティクスの高度な知識に基づく提案をして、荷主にそれを理解してもらい実現していくという形です。

どちらのほうがいいとは一概には言えませんが、欧米型に学ぶところも多いのではないかと考えます。

現在の日本の経済・経営環境の変化の中で物流が抱える問題

・人件費比率が高いトラック運送事業
トラック運送事業の経費において、半分近くを占めるのが人件費です。とはいえ、ドライバーの平均給与が決して高いわけではありません。むしろ、製造業や建設業などに比べると低いです。

・長いドライバーの拘束時間~主な要因は手待ち時間と荷役時間~
ドライバーの平均給与が低い理由の1つは、ドライバーの拘束時間が長いからです。運送自体にかかる時間は6時間前後ぐらいでも、手待ち時間や荷役時間があるために、ドライバーの拘束時間は全体で12、13時間台になってしまうのです。

拘束時間が長く、給与が安いため、ドライバーのなり手が少なく、そのことに対して荷主も危機感を抱いています。荷主の依頼が運送事業者に断られるケースも出てきており、荷主のほうも、物流業者と協力して、物流現場の改善やドライバーの労働負担軽減に取り組まなければならなくなっているのです。

世界、特に先進国の物流はどのように変貌してきたのか?(米国を事例として)

・ロジスティクスにおけるイノベーションの変遷(ロジスティクス1.0、2.0、3.0)
さて、ここで、アメリカではどのように物流が変遷してきたかを見たいと思います。ヨーロッパ最大の経営コンサルティング会社であるローランド・ベルガーは、ロジスティクスは以下のように変遷してきたのではないかと言っています。まずはロジスティクス1.0、これは20世紀に入ってからで、内燃機関を利用した輸送機器で貨物を運ぶことで大量輸送が可能になった時代です。

次はロジスティクス2.0で、これは1960年代以降で、輸送だけではなく、荷役も機械化された時代です。その次がロジスティクス3.0で、1980年代以降、物流管理がシステム化されていく時代です。

・国際海上コンテナ輸送システムの確立
ロジスティクス2.0において荷役が機械化できた1つの大きな理由は、海上コンテナ輸送システムが確立されたことにあります。これを行ったのは、アメリカの運送業者のマルコム・マクリーンという人です。

それまで海上輸送において一番コストがかかっていたのは荷役の人件費でした。そこで、マルコムは、1つの規格化された大きな箱、「コンテナ」を作りました。コンテナは、陸上ではトレーラーとなり、積み替えなしの輸送が可能です。このことで海陸一貫輸送が実現し、荷役の人件費を大幅にカットすることに成功したのです。

・米国で進む物流の標準化
このような海上輸送のコンテナをはじめとして、米国では物流に関するさまざまなものが標準化されています。

例えば、日本では形式がばらばらな送り状も、VICSという標準化された送り状があります。またNMFTA(National Motor Freight Traffic Association)が中心となり、運送人コード、また貨物品目コードと運賃クラスも標準化されています。さらに、Southern Motor Carriers Rate Association,Inc.という協会で、トラック路線運賃も標準化されています。

また、GMA(Grocery Manufacturers Association)において、パレットも標準化されています。

さらに、バーコードも、GS1(Global Standard One)という国際組織が標準化していて、これは米国だけでなく、欧州とも共有化されています。

日本の物流業界が解決しなければならない諸課題

このように、欧米を中心に世界の物流において標準化が進んでいる中で、先ほども少し触れましたが、日本の物流業界にはさまざまな課題があります。それを1つずつ解決していかなければ、日本の物流は将来的に世界から取り残されることになります。

・労働条件の改善
日本の物流が解決すべき課題の1つ目は、労働条件の改善です。物流業界を他産業並みの労働条件にして、新卒者や若年層、また女性や高齢者にとっても魅力ある業種へ改善・転換していかなければなりません。労働条件の改善には原資が必要なので、まずは適正運賃を収受できる体制に変えていく必要があります。

・少人数でこなせる物流の仕組みづくり
2つ目の課題は、物流の仕組みを少人数でこなせるものにすることです。そのためには、荷役作業を軽減し、物流の取引条件を見直す必要があります。本来的に考えれば、運送事業者が持つべき責任は運送責任であり、荷役の責任はないはずです。にもかかわらず、荷主の方でも、荷物を下ろすのはドライバーの役割だと考えている人が多くいます。日本の場合、荷主と運送事業者との契約条件が曖昧なため、そのような考えがまかり通っているのです。そこは、欧米並みに契約条件を明確化して、車上受け・車上渡しが基本となるように変えていくべきです。

予想される物流業界の近未来~IoT・AIの進化による省人化・標準化~

製造業を中心に、コンピューターの処理能力の向上、通信技術の発展、センサー技術の高度化によって大量のデータを取得・分析することが容易になりつつあります。これらの技術により無人化・自動化が進展し、製造業へのAIの導入が進んでいくでしょう。

現在、ロジスティクス分野においては、AIが導入されているものはほとんどなく、立ち遅れていますが、今後5年以内にはAIを用いた無人化・自動化のシステムが市場に登場してくると思われます。

今後、世界のロジスティクス企業で生き残れるのは、製造業のIoTやAIに関わる技術のトレンドを常に捉え、知見を蓄積し、即時対応が可能で、業界をリードできる体制を整えた企業だと考えます。

日本に必要な物流の標準化

日本の物流業界においても、IoTやAIを導入していく必要がありますが、鍵となるのは「標準化」です。標準化なくしてIoTやAIの導入はあり得ません。

グローバルに通用する物流の標準化を推進していくことが、今後、日本の物流業界が生き延びるために最も必要なことだと考えます。

参考:米国物流スタンダード各団体ウェブサイト

●VICS(Voluntary Interindustry Commerce Solutions Association)
http://www.123edi.com/vics-bol-bill-of-lading.asp

●NMFTA(National Motor Freight Traffic Association)
http://www.nmfta.org/

●Southern Motor Carriers Rate Association, Inc.
http://www.smc3.com/czarlite.htm

●GMA(Grocery Manufacturers Association)
http://www.gmaonline.org/

●GS1(Global Standard One)
https://www.gs1.org/barcod

講師紹介

株式会社日通総合研究所
https://www.nittsu-soken.co.jp/

専務取締役
田阪 幹雄(たさか みきお)氏

株式会社日通総合研究所
https://www.nittsu-soken.co.jp/

専務取締役
田阪 幹雄(たさか みきお)氏

本セミナーのポイント

●日本の物流、ウソのようなホントの話(以外に知られていない物流の現実)
●日本の物流は世界でどのように評価されている?
●日本の経済・経営環境の変化
●経済・経営環境の変化の中で、日本の物流はどんな問題を抱えているのか?
●世界、特に先進国の物流はどのように変貌してきたのか、しようとしているのか?(米国を事例として)
●日本の物流はどこに向かおうとしているのか、向かうべきなのか?
...and more.

募集要項

イベント名 第40回CREフォーラム|『日本の物流の現状と課題~グローバルな視点から~』
日時 2017年 11月10日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了
会場 虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階
東京都港区虎ノ門2-10-1
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング室
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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