CREフォーラム レポート
サンスターグループ

(レポート)荷主におけるSCM改革 KPIを活用した在庫最適化

SCM部門のミッション

SCM部門のミッション

サンスターグループのSCM部は、2007年に物流・需給調整・受注管理を統合して新設された部門です。SCM部門の最大のミッションは、メーカー全体の在庫削減を行うことです。しかしSCM部門は、実際に製品を作っていないし、売ってもいないため、円滑に在庫削減を進めるためには、生産や販売などの実働部門に在庫削減活動の重要性を理解してもらう必要があります。

●在庫コントロールが困難な5つの要因

在庫削減は、メーカー全体にとって重要な活動ではありますが、そこには大きな壁が5つあります。

まず1つ目は、「組織全体が在庫削減を優先する体制になっていない」ということです。各部門のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)はさまざまで、たとえば生産部門のKPIは原価低減・生産効率向上であり、販売部門のKPIは売上利益拡大です。それらの部門において在庫削減があまり重要視されていなかったということが、在庫削減の一番大きな壁となっていました。

2つ目は、「高い販売計画の達成を目指した総売上額体制」です。営業部は目標である年間総売上額を達成するため、1年で帳尻を合わせようと月々の販売計画を立てるので、計画と売上実態に差が出てきます。需要予測に基づいた販売計画でないためにどうしても在庫が出てしまうのです。

3つ目は、「製品が消費者に届くまでにストック場所がたくさんあるため、在庫移管ができてしまう販売体制」です。メーカーの倉庫、卸店の倉庫、店頭等、在庫を置く場所が多くあるため、全体の在庫の実態をつかみにくく、そのことが精度の高い販売計画を作ることを難しくしています。

4つ目は、「在庫把握が、期ごと、あるいは月ごとになされている」点です。日々在庫は変化しているので、期末・月末の在庫管理のみでは正しい在庫変化数量を把握できないのです。

5つ目は、「生産と営業とで時間軸に違いがある」点です。製品の生産は、2カ月ぐらいかかるため、2カ月前に営業から販売計画をもらい、それに基づいて製品を作ります。しかし、2カ月の間に状況は変化するので、2カ月前に出した販売計画通りにモノが売れないということが必ず起きてしまいます。そのため、在庫も発生してしまうのです。

●5つの在庫要因を解決するための3つの対策(在庫コントロール体制の構築/可視化/在庫KPIの設定とPI活動)

これらの5つの在庫増加要因を解決するために、SCM部門は以下の3つの対策に取り組んでいます。

1つ目の対策は、「在庫コントロール体制の構築」です。最初にお話ししたように、在庫削減を目的として私たちのSCM部門は設立されました。生産・販売・在庫の最適化のために、メーカーの全体を把握し、流通の状況を客観的に判断できる部署が必要だと判断したからです。SCM部門は、販売計画ではなく実績を重視し、市場実態を正しく把握して、必要量を決めていきます。そして、その必要量に基づいて販売計画を立て生産してもらうように各部署を説得して、メーカー全体の在庫を減らしていく取り組みを行っています。

2つ目の対策は、「全てを可視化する」ということです。今までエクセルの表で数字だけで出していた生産・販売・在庫実績を同時にグラフとしても見られるようにしました。これは、グラフ化して視覚に訴えて、生産・販売の在庫の実態を理解しやすくするという取り組みです。

3つ目の対策は「在庫KPIの設定とPI活動」です。先ほどお話しした通り、各部門では在庫KPIが優先されていない状態だったので、私たちSCM部門は具体的に、「滞留在庫削減〇〇%」、「処分損失削減〇〇以下」「平均在庫日数〇〇日以下」「欠品率削減〇〇%以下」等の在庫KPIを設定しました。そして、それぞれのKPIに対して具体的にどのようなPI(Performance Indicator:業務指標)があるのかを一つひとつ挙げていき、SCM部門内でそれを誰が担当するかを決めていくという、PIの職務分掌化を行いました。

●KPIに基づく在庫と欠品削減に向けた具体的活動(4つの削減ステップ)

私たちは、3つ目の対策の「在庫KPIの設定とPI活動」を4つのステップに分け、在庫削減の取り組みを進めています。その内容は、第1ステップは「死蔵在庫を発見し早期に処分する」こと、第2ステップは「安全在庫を適正値まで下げる」こと、第3ステップは「膨張する在庫の発注中止」、第4ステップは「消費推移と計画との差異の常時監視」というものです。

具体的には、第1ステップでは、死蔵在庫の確定、損失額の提示、処分承認活動、廃盤・廃棄・在庫販売等を行います。

第2ステップでは、販売実態の証明、安全在庫設定、適正数量確定、小ロット生産要望等を行います。

第3ステップでは、販売・在庫の現状把握、膨張在庫の早期発見、生産調整短縮の説得、生産中止の説明等を行います。

第4ステップでは、販売予測精度向上、計画予実の可視化、生産調整の短縮、販売是正の推進等を行います。

そして、これら4つのステップの後に、仕上げのステップとして5つ目があります。「在庫削減の効果を経営層にアピールする仕組み作り」です。

SCM部門が取り組んだ在庫削減の成果は、貸借対照表(バランスシート)の棚卸資産の項目の数字だけを見ても詳細にはわかりません。そこで私たちは、投資額に対し販売額が最適に運営されているかを理解してもらうための成績表を作りました。この表を、単品ごと、また全体として作り、在庫削減の成果をサプライチェーン全体として経営層に評価してもらう仕組みを構築しました。

●在庫KPI活動の成果

SCM部門でKPIを使った在庫削減活動を始めたのは約6年前ですが、成果としては、たとえば年平均在庫月数は、活動開始当初を100%とすると、6年間で69%まで減らすことができました。また、廃棄・処分販売数も、活動開始当初を100%とすると、6年間で30%まで削減することができました。なおかつ欠品率も、活動当初100%から23%まで下げることができました。

●在庫の管理で心がけていること

在庫は、販売や生産の状況で常に変動する“生き物”のようなものです。常に変動するものを管理するのは、日々リーグ戦を戦っていくのと似ています。今年は在庫を削減できたとしても、気を抜くとまた増加してしまいますので、在庫を減らす努力はし続けなければなりません。

常に在庫を監視し、変化を素早く発見し、対応する。また、在庫を監視する際は、グロスで判断せず、必ずSKU(Stock Keeping Unit:在庫管理の最小単位)別に見ていくことが重要です。在庫の増減には必ず理由があるので、その原因を徹底的に究明しなければなりません。在庫KPIを設定し管理することで、在庫の増減理由の究明も容易になるので、在庫KPIは非常に重要だと考えます。

●SCM部門からの戦略提案

これまで在庫データは数字の羅列のみで、作業効率化の推進など業務系の改善に使ってきましたが、SCM部門としては、将来的にはAI等を使ってデータを分析し、在庫管理の現場から拠点政策改善などの戦略系の改善への提案も積極的に行っていきたいと考えています。

講師紹介

サンスター グループ
経営本部 理事
荒木協和 (あらき やすかず)氏

サンスター グループ
経営本部 理事
荒木協和 (あらき やすかず)氏

物流会社経営を経て、1994年サンスターグループに入社。以後、中間流通物流企画、メーカーの生産物流改革、販売物流企画などを担当。2007年に物流・需給調整・受注・回収管理を統合したSCM部門を新設し、グループのサプライチェーンを担当する。2009年に在庫適正化を目的とした、在庫可視化システムP.S.I.V.を日立ソリューション東日本社と共同で開発。4つの特許を取得し、在庫の40%削減を推進する。また2012年、日本を含むアジア統括の受注センターをバンコクに立ち上げ、グローバルな観点でのSCM最適化を進めている。

募集要項

イベント名 第3回CREフォーラムin大阪|『 荷主におけるSCM改革 KPIを活用した在庫最適化 』
日時 2018年 2月9日(金) 開場15:00 開始15:30 終了17:15
会場 大阪御堂筋ビル 貸会議室
大阪府大阪市中央区久太郎町4-1-3 B4F
参加対象者 荷主企業 様、物流会社 様
参加費/定員 無料/100名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング室
メール:
cre_osaka@cre-jpn.com
電話:
06-6225-3161

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