株式会社シーアールイー

(レポート)CREベトナムフォーラム2019 ~いま、なぜベトナムか?その投資先としての魅力を探る~

基調講演 「アジア経済統合とベトナム」

株式会社日本総合研究所
調査部 上席主任研究員
大泉 啓一郎 氏

東アジア経済の魅力は、「東アジアは世界の経済成長の中心である」という点にあります。1990年には世界の20%でしかなかった東アジアの経済規模は、今や30%となり、5年後には35%になると言われています。

東アジア諸国が共通して経済成長ができた理由は、貿易にあります。貿易において相互依存関係を持ちながら経済成長してきたのが東アジアの特徴です。そしてベトナムもまた、他の東アジアとともに経済成長してきました。

ベトナムは、特に最近の10年間で構造的な変化が起きています。輸出品が、原油等の天然資源から通信機器等の工業製品へと変わり、一方、輸入品は、工業製品の原材料・部品が増えています。

ベトナムの1つの強みはサプライチェーンにあります。ASEAN諸国はもちろんのこと、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)により中国、インド、韓国等、TPP(自由貿易協定)により日本、カナダ等とのサプライチェーンが出来上がっています。また現在、アメリカはベトナムにとって最大の市場となっています。

ベトナムの1人当たりのGDPは約3,000ドルで、ベトナムの消費市場はそれほど魅力があるものにはまだなっていません。ベトナムの消費市場全体が伸びるのにはもう少し時間がかかりそうですが、購買力のある高所得者層は確実に増えています。高所得者層に対するマーケティングと低所得者・中所得者層に対するマーケティングは異なるということには注意していただきたいと思います。

日本と東アジア(韓国+台湾+香港+中国+ASEAN加盟10カ国)の名目GDPの推移を比較すると、2004年に東アジアが日本を抜いています。2010年には中国単体で日本を抜いています。今現在、東アジアの名目GDPは日本の3倍以上あります。

このような現状を踏まえ、私たちは東アジアに対する考え方を変える必要が出てきています。私たちは今まで「日本とアジア」という視点でものを考えてきました。しかし、ここ10年、20年の急激な変化の中では、そのような考え方は通用しなくなりました。今後は、昔のパラダイムを捨て、「アジアの中の日本」という視点でものの動きを見ていかなければならないと考えます。

プレゼンテーション /パネルディスカッション

「ベトナム 最新トピックス」 SCMソリューションデザイン

SCMソリューションデザイン
代表
魚住 和宏 氏

最近1年ぐらいのベトナムでのトピックスを、インフラ関係を中心に4点ご紹介します。

まず1点目は、南北縦貫高速鉄道と高速道路です。ベトナム縦貫高速鉄道の計画は、現在在来線で30時間かかるところを、時速350キロの新幹線方式により5時間半で結ぶというものです。しかし、工費の6.5兆円の調達が難しく、時速150~160キロ程度の高速鉄道になる可能性が高いとのことです。一方、南北を結ぶ高速道路は、ハノイ-ハイフォン間を初めとする一部は既に開通していますが、ハノイからカントーまでの1,914キロ全線開通までにはまだ時間がかかりそうです。

2点目は、北部でのインフラ整備です。北部では上述のハノイ-ハイフォン間の高速道路に加え、ベトナム第2の深海港、ラックフェン港が開港しました。

3点目は、都市鉄道・地下鉄です。ハノイ、ホーチミンの年々ひどくなる渋滞を解消するために、現在、都市鉄道のプロジェクトが動いており、2019年4月にハノイで一部が開業します。一方ホーチミンのほうは、資金難で計画が大幅に遅れています。

4点目は、配車アプリ等の先進技術の浸透です。「GRAB」や「GoViet」という配車アプリは既に庶民の間で浸透しており、また物流版UBERの「LOGIVAN」が、荷主と運送業者を直接つなぐプラットフォーム事業を本格的に開始しています。

「味の素のベトナムにおける事業活動」 味の素株式会社 

味の素株式会社 
執行役員 食品事業本部 副事業本部長
本橋 弘治 氏

味の素グループは、現在、世界に約3万5,000人の従業員がいます。「新しい価値の創造」「開拓者精神」「社会への貢献」「人を大切にする」という「味の素グループWay」という行動規範を海外のグループ会社にも徹底させています。

私たちは、味の素グループならではの取組みで、社会課題の解決に貢献しつつ事業を発展拡大するために、ASV(The Ajinomoto Group Creating Shared Value)という方針を掲げています。ベトナムにおけるASVは、「健康な生活」と「食資源」と「地球持続性」への貢献です。

「ベトナム味の素」は、1991年に設立され、開発から生産、販売までフルファンクションを備える事業会社です。ASEANや日本にいる専門家によるサポート体制が確立されていることも味の素グループの特徴で、これが、私たちがベトナムで成功している1つの理由ではないかと考えます。

私たちは、現地の食文化の深い理解に基づく製品設計を行っています。ベトナムの食文化は豚ダシ文化です。豚肉と豚の骨で作ったスープが下地となった食事が多く、それを製品化したのが「Aji-ngonⓇ」(アジゴンと読む)という風味調味料です。

ベトナムは偽物が多い国なので、偽物対策をしっかり行っていかないと、消費者の方に安心して使っていただけないという問題があります。偽物を見つけたら、売人を特定し、偽物を作っている工場に現地の公安と一緒に立ち入り、逮捕する場合もあります。

味の素がベトナムで競争優位性を保てている理由には、需要増に応じた増産体制の構築、行政との連携、長期視点に立った人材育成等があります。ベトナムの若い人材をどう使って事業を大きくしていけるかが、「ベトナム味の素」の今後の大きなテーマだと考えています。

「ベトナムにおける食品・リテール事業」 双日株式会社

双日株式会社
リテール・生活産業本部 食品・リテール事業部
部長
小泉 豊 氏

双日株式会社とベトナムとの関わりは50年になります。また、1986年には、外資系の民間企業として初めてハノイに駐在事務所を開設し、20年後の2006年には、これも外資系企業として初めて友好勲章を受章しました。

双日のベトナムにおける事業は、例えば、ネットワーク&ソフトウェア事業、工業団地事業、インフラ事業、食料事業、発電事業、総合物流事業、肥料事業、化学品貯蔵事業、合成樹脂事業、植林事業、木材チップ事業、コンビニエンスストア事業等、さまざまあります。

本日は、私の所属する食品・リテール事業部が行っている事業について紹介します。食品・リテール事業の戦略としては、卸にまず進出し、そこから売り場を確保し、それを起点に製造業へ進出し、ベトナムにおいてリテール事業のプラットフォームを構築するということを考えています。

具体的には、2008年にHuong Thuyという総合食品卸の会社に出資参画を致しました。。Huong Thuyの取扱商品群は、食品が主ですが、ゴルフ用品などの非食品も扱っていて、最近ではSoffellという蚊よけスプレーが非常に売れています。双日が参画した当初は十数億の売上規模でしたが、現在は5~6倍の3桁の売上規模となっています。

2015年からはAEONグループのMINISTOPとコンビニエンス事業を展開しています。従業員数は、パートタイムも含めると1,930名で、店舗数は、2019年1月末現在で124店舗あります。

店舗外観や売り場構成は日本のMINISTOPとほとんど同じです。ただし、日本式のコンビニエンスがベトナムや他のASEAN諸国で100%通用するとは思っていません。特に商品開発の面においてはローカライズしていったほうがいいと考えています。他方、マネジメントや店舗オペレーション、具体的には、発注方法や陳列、清掃、お客様への挨拶等は日本式を貫くべきだと考えます。

このほかに、New Land Vietnam Japanの4温度(常温・冷凍・冷蔵・定温)倉庫事業や、Japan Best Foodsの惣菜製造・販売事業等も展開しています。

上述の4事業を通して学んだことは、日本のいいところとベトナムのいいところ、両方を融合しながら事業を展開していくことが重要だということです。

「ベトナムにおける物流環境と人材について」 郵船ロジスティクス株式会社

郵船ロジスティクス株式会社
第一総合開発営業部 部長
石原 伸一 氏

郵船ロジスティクスは日本郵船のグループ会社で、日本郵船の100%子会社です。私たちは、世界を日本、アメリカ、ヨーロッパ、東アジア、南アジア・オセアニアの5極に分けて運営していて、売上げ構成比はそれぞれ20%ずつぐらいになっています。

私たちの強みの1つはグローバルネットワークで、世界44カ国、333都市に約550の拠点を持っています。従業員数は世界で約2万4,000人です。世界の中で一番事業展開がうまくいっているのが南アジアで、その中でもベトナムは好調です。

郵船ロジスティクス・ベトナムの本社はハノイにあり、国内24カ所に拠点があります。従業員数は1,420人で、事業のサービス内容は、航空・海上フォワーディング、倉庫、トラック輸送、通関、設備機械搬入、コンテナ・デポ、構内物流等です。

ベトナムになぜ24カ所もの拠点を置いているかというと、その理由のひとつが、税関でのトラブル対応のためです。ベトナムでは地域ごとに税関の管轄エリアが細かく区切られており、お客様が入居されている主要な工業団地に1つぐらいの割合で税関が設けられています。税関でトラブルがあったときにすぐ駆けつけられるように、各税関のそばにスタッフを配置しているのです。

「ベトナムは通関が複雑だから気をつけてください」と聞いたことがあると思います。近年は、輸出入申告に関してはペーパーレス化されていますが、それ以外はいまだに原紙を用いた運用が多いのが実情です。また税関手続に関する法律、政令、決定、通達が不明確で連動していません。さらに、これらの規定内容も不明瞭で、解釈に悩むことが多いです。また、人によって理解も対応も違ったりするので、税関の役人と信頼関係を構築することが重要になってきます。

ベトナムの人材に関しては、中間管理職層の人材確保が一番難しいです。国営企業で働いた経験のあるシニア層は、効率を上げて生産性を上げるというマインドセットを持っていない傾向があるので、私たちは、なるべくフレッシュな人材を採用して自分たちで教育するという方針をとりました。

ベトナム進出のキーとなるのはやはり「人」です。お客様に対しても、取引先に対しても、部下に対しても、役所に対しても、人対人の信頼関係を作って、関係をつなげていくということがベトナムでの成功の重要な要素になると考えます。

パネルディスカッションで語られたベトナムでの事業成功の“Key”とは?

【郵船ロジスティクス株式会社 石原 氏】
ベトナムに進出する際にどの工業団地を選ぶかにあたっては、新しい人が来ると現地の受け入れる側は構えてしまいますので、既にパイプを持っているところを選ぶのが良いと思います。また、税関の役人との人間関係を構築しておくこと、信用できる物流業者を見つけておくことも重要になります。

【双日株式会社 小泉 氏】
ベトナムという国は、外資の進出にすごくセンシティブになっている国でもあります。私たちの競合相手は日系企業ではなく、中国、韓国等の外国企業です。ベトナムに進出している日本の企業同士は協力し合って、他の外国企業と闘っていかなくてはなりません。外国企業に勝つための鍵となるのは、日本式の長所とベトナム式の長所を両立させることと人材育成だと思っています。

【味の素株式会社 本橋 氏】
新しくベトナムで事業を展開する際に重要なことは3つあります。1つ目は、事業のフィジビリティスタディをしっかりやっておくということです。2つ目は、現地の事情に詳しい商社や法律事務所、会計事務所、通信業者等の外部の専門家と一緒に仕事をすることです。日本の常識は通用しないので、その道のプロの力を借りることが必要になります。3つ目は、ベトナム人スタッフの潜在能力を最大化することです。ベトナム進出を考えている皆様にはこの3点を念頭に置いておいていただきたいと思います。

【株式会社日本総合研究所 大泉 氏】
ベトナム進出で成功されていらっしゃるお三方は、企業が海外進出するにあたっての王道を話されたと思います。1つは、進出する前には地道な調査が必要であるということ。2つ目は、現地で工場を運営するときに、日本の良いところと現地の良いところを融合させるということ。3つ目は、人とのつながりを大切にするということ。海外進出においては、これらの王道をきちんとやることが重要であるということを再認識しました。

基調講演

講師紹介

株式会社日本総合研究所
調査部 上席主任研究員
大泉 啓一郎(おおいずみ けいいちろう)氏

1988年京都大学大学院農学研究科修了。2012年京都大博士(地域研究)
1990年から三井銀総合研究所、さくら総合研究所、日本総合研究所でアジア経済研究に従事。東京大学大学院経済学研究科非常勤講師
主著に『老いてゆくアジア』(中公新書)、『消費するアジア』(中公新書)、『新貿易立国論』(文春新書)がある

プレゼンテーション/パネルディスカッション

モデレーター

SCMソリューションデザイン
代表
魚住 和宏(うおずみ かずひろ)氏

1981年味の素株式会社入社。米国駐在、インドネシア駐在を経て、グループ調達センター グローバル戦略グループ長、物流企画部専任部長、味の素物流(株)理事等を歴任。
2017年3月末に味の素(株)・味の素物流(株)を退職、SCMソリューションデザインを設立、SCMのコンサルタントとして活動中。
現在は神奈川大学他3大学の講師と(株)シーアールイー他3社の顧問・アドバイザーを務めている。

パネリスト

味の素株式会社 
執行役員 食品事業本部 副事業本部長
本橋 弘治(もとはし ひろはる)氏

1986年味の素(株)入社。
その後、2005年よりフィリピン味の素 販売マーケティング取締役、2009年より人事部労務グループ長、2012年よりベトナム味の素社長を歴任し2017年より現職。

双日株式会社
リテール・生活産業本部 食品・リテール事業部
部長
小泉 豊(こいずみ ゆたか)氏

1986年日商岩井(株)入社。1991年へ㈱ドライヤーズ・ジャパンへ出向、2000年4月よりホーチミン駐在員事務所副所長。2004年4月より双日㈱ホーチミン駐在員事務所副所長、2009年4月より同社ベトナム法人副社長。2010年11月より同社生活産業部門。2015年5月より双日㈱ベトナム会社副社長、その後リテール事業本部アセアン地域統括等を歴任し、2017年4月より現職。

郵船ロジスティクス株式会社
第一総合開発営業部 部長
石原 伸一(いしはら しんいち)氏

1995年4月郵船航空サービス(株)入社、2007年1月ベトナム郵船航空へ出向、ハノイ支店(ハイズン営業所長)勤務、2010年3月郵船ロジスティクス(株)総合開発営業部(東京本社、航空宇宙産業リーダー)、2013年4月Yusen Logistics America シカゴ支店へ出向、2014年4月より同社ニューヨーク本社(Director of Sales)勤務、2018年4月より現職。

募集要項

イベント名 CREベトナムフォーラム2019|~いま、なぜベトナムか?その投資先としての魅力を探る~
日時 2019年3月8日(金) 開場13:30 開始14:00 終了17:10
会場 虎ノ門ツインビルディング西棟B1階
東京都港区虎ノ門2-10-1 google map
参加対象者 荷主・物流企業 様
参加費/定員 無料/200名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります)

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティングチーム
担当:
石原(イシハラ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5572-6604

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