冷凍倉庫の需要と課題|外部委託先の選定ポイントや流れも解説
自社で冷凍保存が必要な製品を取り扱うことになった場合、まずは冷凍保存や倉庫に関して情報収集をするでしょう。本記事では、冷凍倉庫の需要動向や課題について解説します。また、冷凍倉庫における物流業務をアウトソーシングする際のメリットや外部委託先の選定ポイント、自社で運営する際のメリットについても解説します。
物流・倉庫に関する情報をお探しの際はぜひ「CRE倉庫検索」をご活用ください。
物品は適切な温度の倉庫で保管する必要がある
物品には、それぞれ保管する場合に適切な温度があります。そのため、温度に合わせた倉庫での保管が必要です。倉庫の温度管理が適切でない場合、保管している物品にダメージが発生し、変色や破損、病害虫などのトラブルにつながる恐れもあります。適切な温度帯を維持するためには、相応の設備投資が必要になります。
冷凍倉庫の需要と供給
近年、冷凍倉庫はほぼ満床状態となり逼迫しています。ここでは、逼迫の背景にある2つの事象について述べます。
冷凍食品の需要増加
1つ目は、急速な冷凍食品の需要増加に伴う冷凍倉庫の保管ニーズの高まりです。コロナ期の巣ごもり需要以降急速に家庭用冷凍食品の需要が伸びたほか、冷凍技術の進化や人手が不足している外食産業でも調理に手間がかからない冷凍食品の導入が相次いでおり、業務用として利用が拡大しています。
倉庫老朽化による供給量の減少
2つ目は、倉庫の老朽化が進む一方で、新設・建て替えが滞ることが予想されていることです。東京や千葉などでは築年数が40年を超える倉庫も多く、建て替えや新設も考えられますが、巨額の投資が求められるため、新設や建て替えが進まず、新規供給が滞り、全体供給量が減少していくと予想されています。
保管温度による物流倉庫の分類
物流倉庫は、次の4つの分類ごとに保管温度が異なります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。
常温倉庫
常温倉庫は、温度や湿度の調整が行われていない倉庫です。庫内環境も外気温と同様に夏は暑く、冬は寒くなります。温度調整の設備が不要なため、低コストで運用できるのもポイントです。
常温倉庫は常温保管が可能な紙、陶器、化学薬品、建材などを保管できます。食品であれば、砂糖、清涼飲料水、缶詰などの温度変化に強い製品の保管に選択されます。
定温倉庫
定温倉庫は、一定の温度が保たれている倉庫のことです。倉庫によって庫内温度に違いはありますが、10℃~20℃の間で一定の温度を保っていることが多いです。
通年で倉庫の温度や湿度を一定に保つため、温度の影響を受けやすい物品を保管するのに用いられます。定温倉庫で保管する物品には、精密機器や医薬品、食品だとワインやチョコレート菓子、米穀類を保管することが多いでしょう。定温倉庫を導入することで、適切な温度や湿度で保管でき、品質をキープすることができます。
冷蔵倉庫
また、近年の冷凍食品の保管量の増加や電力料金の高騰等の環境の変化に伴い、過冷凍による保管品の劣化防止や、保管コスト削減、環境負荷の低減を図る観点から、令和6年4月1日に施行された「倉庫業法第3条の基準等に関する告示」の改正によって、温度帯区分は7等級から10等級に細分化されました。
なお、10等級のうち「冷蔵(チルド)保存」に該当するのは、C3〜C1級までです。
冷凍倉庫
冷蔵倉庫に分類される倉庫のなかでも、室温が-18℃度以下の倉庫のことを冷凍倉庫といいます。冷凍倉庫で保管する物品は、冷凍食品やアイスクリームなどです。また、超冷凍温度帯の倉庫はマグロなどの保管に使用されます。
冷凍倉庫が該当する温度帯は、F1〜SF4までの7等級です。
冷凍倉庫を使用する企業が抱える課題
ここでは、冷凍倉庫を使用する企業が抱える課題について解説します。
倉庫の老朽化
現在、全国的に冷凍倉庫の老朽化が問題視されています。冷凍倉庫は、安全に使用したり、物品を保管したりするために耐震性や耐火性、冷却機能などが求められます。しかし、古い倉庫や設備ではこれらが担保できない場合があり、設備や冷凍倉庫の刷新には多大な費用が必要です。
また、倉庫を新しくする際、現在の在庫の保管場所を確保することが困難な場合もあるでしょう。
フロン規制
フロン規制とは、環境に影響を及ぼすとされるフロンガスの使用を制限する取り決めのことです。
冷凍倉庫には、業務用の大規模な冷媒設備が使用されていますが、この設備に代替えフロンが使用されているケースがあります。その場合、フロン規制に対応するためには、自然冷媒に切り替える必要がありますが、費用の確保が難しい場合、代替フロンの完全生産廃止までの数年間まではそのまま使用し続けようという考えがあるのも現状です。
運用コストの増加
冷凍倉庫の運用には、空調や冷凍設備などが必要です。冷凍倉庫の室温を常時維持するためにも、光熱費やメンテナンス費がかかりますが、近年は光熱費の高騰が著しく、コストが増えている傾向にあります。
また、冷凍倉庫を管理するには従業員の人件費確保も必要です。冷凍倉庫の業務に就く人材は、募集が容易でなく、採用にもコストがかかります。
スペース不足
近年、冷凍倉庫のスペース不足が深刻な問題となっています。冷凍食品市場の成長が続いている一方で、冷凍倉庫の供給量の減少が予測されていることなどから、今後も倉庫の逼迫は続くと予想されています。
冷凍倉庫を外部委託するメリット
保管スペースの確保
冷凍食品を大量に保管する必要がある場合、自社で倉庫を新設するとなると首都圏などのエリアによっては自社に適した場所での用地の確保が難しいこともあるでしょう。大規模な冷凍倉庫を持つ物流会社に委託すれば、物品の保管スペースを確保できるようになります。
また、外部委託すれば保管スペースの需要の変動に対して、常時大きな倉庫を用意する必要がなく、柔軟に対応できる点もメリットといえるでしょう。必要に応じて保管スペースの拡大・縮小が可能です。
専門性
冷凍倉庫の運用には、在庫管理や冷凍設備、冷凍倉庫内での労働環境に対する詳しい知識やノウハウを持つ人材が必要です。冷凍倉庫の外部委託を請け負う企業は、専門的な知見と高度な管理技術を持っています。プロに任せることで、適切な温度管理による品質保持が叶い、在庫管理の適正化や食品ロス削減にも期待できるでしょう。
コア業務へのリソース集中化
冷凍倉庫の運用を外部委託すると、今まで冷凍倉庫の業務に従事していた従業員をコア業務に集中させられます。社内の人材をコア業務へ集中させられるようになれば、会社の売り上げの向上につなげられるでしょう。
冷凍倉庫の外部委託先の選定ポイント
冷凍倉庫の外部委託は、社内の人材を本来従事させる業務に回せるだけでなく、品質や設備の管理をプロに任せられます。外部委託先を選びは、次のポイントから検討していきましょう。
立地
外部委託先の冷凍倉庫の立地によって、配送速度やコストが異なるため、自社の物品管理に適した立地かどうかも事前に確認します。また、通常運用時のことだけでなく、自然災害が起きた際も業務が滞らないように、災害の影響が少ないエリアの冷凍倉庫を選ぶなど、リスクも考慮した選定が重要です。
実績
冷凍倉庫で適切な保管ができなければ、発注通りの商品発送ができなくなり、消費者からの信頼を失ってしまうでしょう。そのため、安心して任せられるかどうかを確認するために、外部委託先の実績を調べるのは重要な選定ポイントです。事前に外部委託先の企業のWebサイトを検索したり、仲介業者や委託先業者の担当者に確認したりしてください。
サポート体制
外部委託先のサポートの対応時間や充実度がどうかを確認します。例えば、倉庫でトラブルが発生した場合、土日祝日にサポートが受けられないと、その間にトラブルが深刻化してしまい解決に時間がかかる恐れがあります。トラブル発生時の損失を最小限に抑えるためにも、サポート体制の整った委託先を選ぶようにしましょう。
冷凍倉庫の賃借という選択肢
これまでは、食品卸売業者や食品メーカーなどによる自社所有が主流でしたが、老朽化した倉庫の建て替えにかかる費用や、自然冷媒への切り替えが求められるなど自社による新設は困難な状況となっています。冷凍食品の需要が増大し、冷凍倉庫を求めるニーズも増加している中で、デベロッパー各社がマルチテナント型での冷凍冷蔵倉庫の供給に着手しています。
冷凍倉庫を自社で運営するメリット
外部委託ではなく冷凍倉庫を自社で賃借し、自社で運営することも一つの手段です。以下で、自社で冷凍倉庫を運営するメリットを解説します。
品質管理の強化
温度管理が必要となる製品は品質管理が難しく、厳密な温湿度管理が重要です。品質低下を防ぐためには、冷凍能力や冷凍管の冷却面積など、冷凍倉庫特有の基準を満たすことが求められます。自社で運営することで、温度や湿度、衛生状態の管理を徹底し、製品の品質を最適に保つことができます。特に食品や医薬品など厳密な温度管理が必要な製品においても、クオリティをしっかりと維持することが可能です。
柔軟な対応が可能になる
季節変動による製品の在庫内容や、需要変動に応じて在庫量を柔軟に調整できるため、出荷や仕入れのタイミングを効果的に管理でき、効率的なサプライチェーンの構築に寄与します。
また、自社倉庫から直接配送することで、配送先までのリードタイムを短縮できます。保存期間が短い製品も迅速な対応が可能です。
カスタマイズの自由度
自社製品に最適な設備やシステムを導入できるため、倉庫の仕様を自由にカスタマイズすることが可能です。例えば、製品の特性や保存条件に合わせた温度・湿度設定や、特定のエリアのみ冷却を強化するゾーン管理システムなど、細かな要件に対応する設計が可能です。また、特定の荷物にだけ異なる温度管理を行う多温度帯対応のスペースを設けるなど、より詳細に庫内レイアウトを組むことも実現できます。こうしたカスタマイズによって、製品ごとの品質管理が最適化されるだけでなく、作業効率の向上や省エネ効果も期待でき、結果的に物流全体のコスト削減や管理精度の向上にもつながるでしょう。
まとめ
冷凍倉庫の市場動向や倉庫使用時の課題、保管場所を確保するための手段として外部委託や賃借について、冷凍倉庫を自社で運営する利点などを解説しました。冷凍倉庫を利用するにあたって、自社の物量や物流体制から何が最適なのか検討することが重要です。
貸し倉庫の利用をお考えの際は、貸し倉庫の賃貸情報サイト「CRE倉庫検索」をご活用ください。また、ご希望をヒアリングし、周辺の労働人口やBCPに関わるハザードマップなどの情報も踏まえた、倉庫の提案もいたします。お気軽にご相談ください。