定温倉庫とは?定温倉庫に適した荷物やメリット・デメリット、選び方などを解説
倉庫で荷物を保管するにあたっては、倉庫内の温度管理が課題になるケースも多いものです。荷物の種類によっては、品質を保つために綿密な温度管理が求められる場合もあります。
定温倉庫は、そのような温度管理の課題解決に役立つ倉庫です。本記事では、定温倉庫のメリットや、定温倉庫に適した荷物などを解説します。
定温倉庫とは
定温倉庫とは、一体どのような倉庫なのでしょうか。ここでは、定温倉庫の概要を解説します。
温度・湿度を一定に保てる倉庫
定温倉庫とは、倉庫内の温度と湿度を一定に保てる倉庫のことです。保管環境の温度管理が求められる場合に適しており、食品から精密機器までさまざまな荷物の保管に用いられます。
定温倉庫の温度・湿度の目安
定温倉庫内の温度は10〜20度、湿度は40~50%程度が目安です。上記の範囲内で、保管する荷物に合わせて最適な温度・湿度を保つことができます。
定温倉庫に必要な設備
定温倉庫には、温度・湿度を一定に保つために次のような設備が必要です。
・冷却システム
・温度・湿度監視システム
・断熱設備(断熱カーテンや断熱性の高い壁、二重扉)
・シーリングファンなど
また、電力の供給が途絶えても温度・湿度を保てるよう、停電に備えた設備も重要となります。
定温倉庫と低温倉庫の違い
定温倉庫と低温倉庫は、温度管理された倉庫という点で類似していますが、主な違いは管理温度にあります。定温倉庫は一般的に10℃~20℃で管理されています。一方、低温倉庫は主に10℃以下のチルド帯で管理され、保管に適した物品が異なります。ただし、どちらも10℃以下の倉庫を指す意味で使用している場合もあるため、注意が必要です。
倉庫内の温度設定による分類
倉庫は、倉庫内の温度設定によって「常温倉庫」「低温倉庫」「冷蔵倉庫」「冷凍倉庫」の4種類に分類されます。
常温倉庫
常温倉庫とは、倉庫内の温度を調整せず、外気温に比例した常温で荷物を保管するタイプの倉庫です。最も一般的な倉庫で、費用を抑えやすく大きさの種類も豊富です。常温倉庫には温度調整の設備がないため、倉庫内の温度は季節によって変化します。家具や資材など、温度管理が不要な荷物を保管する場合が多いでしょう。
低温倉庫
低温倉庫とは、倉庫内の温度を10度~20度の間で保つ倉庫のことです。倉庫によって定義が異なる場合もありますが、基本的には定温倉庫=低温倉庫とされています。
冷蔵倉庫
冷蔵倉庫とは、倉庫内の温度を10度以下で保つ倉庫のことです。主に食品の保管に活用されます。倉庫業法の改正により基準が変更となり、基本的には-18度〜10度の間で温度を維持する倉庫のことを冷蔵倉庫と呼びます。
冷凍倉庫
分類上、倉庫内が10度以下の倉庫はすべて冷蔵倉庫ですが、そのうち-18度以下で温度を保つ倉庫のことを冷凍倉庫と区別することもあります。
温度帯 | |
C3 | -2度超、10度以下 |
C2 | -10度超、-2度以下 |
C1 | -18度超、-10度以下 |
F1 | -24度超、-18度以下 |
F2 | -30度超、-24度以下 |
F3 | -35度超、-30度以下 |
SF1 | -40度超、-35度以下 |
SF2 | -45度超、-40度以下 |
SF3 | -50度超、-45度以下 |
SF4 | -50度以下 |
倉庫業法では上記のように区分されており、F級(フリーザー級)〜SF級(スーパーフリーザー級)にあたるものを冷凍倉庫と呼びます。冷凍倉庫は、主に食品や医薬品などを保管する場合に活用されます。
定温倉庫に適した荷物
倉庫の設定温度によって保管に適した物品は異なります。定温倉庫に適した荷物には、一体何が含まれるのでしょうか。ここでは、定温倉庫に適した荷物について解説します。
米や小麦粉などの食品
米や小麦粉のほかには、豆類やナッツ類、チョコレートや飴などの溶ける食品が適しています。なかでも穀物は、水分蒸発により目減りすることがあるので、温度・湿度管理に注意したい食品の1つです。
ワインや日本酒などの酒類
酒類は温度・湿度の変化により、風味や香りが損なわれることがあります。とくにワインの保管においては、温度が最も大切な要素とされています。日本酒は種類により適温が異なりますが、吟醸酒なら10度前後、純米酒や本醸造酒、普通酒などは20度前後が保管温度の目安です。
種苗
種苗も食品と同じく、鮮度を保つためには定温管理が重要です。また、発芽や開花の時期をコントロールする意味合いもあります。定温倉庫で温度と湿度を調節すれば、時期をずらした出荷も可能です。
医薬品・化粧品
医薬品や化粧品は、含有されている化合物や添加物が温度・湿度の変化により影響を受ける場合があります。薬効や作用に影響する可能性もあるため、定温倉庫が適している荷物の1つです。なお、メーカーにより保管温度が指定されていることもあるため注意しましょう。
精密機器
パソコンやスマートフォンなどの精密機器に結露が発生すると、水分により電子部品が正常に作用しなくなったり、金属が変質したりと故障の原因になります。結露は温かい空気が冷やされることで起こるので、温度・湿度管理の重要性は高いといえるでしょう。
美術品
美術品の保管においても温度・湿度管理は重要です。美術品に適さない環境での保管は、カビや板のゆがみ、ひび割れなど作品の劣化を早める原因になることがあります。急激な温度変化も作品の劣化につながるので、温度を保てる定温倉庫が適しています。
定温倉庫のメリット
定温倉庫を活用することで得られるメリットは、多岐に渡ります。定温倉庫を利用するメリットは、主に次の3つです。
荷物の品質や鮮度が損なわれない
定温倉庫なら、荷物に合わせて最適な温度を保つことができ、品質や鮮度の劣化を防げます。たとえば、食品のおいしさをキープしたり、精密機器の劣化を防いだりすることが可能です。常温での保管に適さない荷物にも対応できるので、より幅広い商品を取り扱えるようになるでしょう。
廃棄ロスを減らせる
定温倉庫は品質や鮮度を長期間保てるので、廃棄ロスの削減にもつながります。商品の凍結予防や大量の荷物の一時保管にも活用可能です。温度や湿度の問題による品質劣化を防ぐことで廃棄の削減に繋がり、結果として作業コストの「ムダ」を抑制します。
温暖化による影響を軽減
近年、夏季の高温化が目に見えて生活に大きな影響を及ぼしており、特に食品においては従来、常温流通が当たり前だったものでも、高温による品質劣化や成分分離が進んでしまい、本来のポテンシャルを食卓まで保てなくなる可能性が高まっています。通年で温度を一定に保てる定温倉庫は冬季においても温暖化による様々な影響を軽減する効果が期待できます。
定温倉庫のデメリット
定温倉庫には、いくつかのデメリットもあります。ここでは、定温倉庫を利用するデメリットについて解説します。
コストがかかる
倉庫内の温度を一定に保つためには、さまざまな設備が必要です。温度調節にも費用がかかるため、常温倉庫と比べて費用が高額になりやすく、コストがかさんでしまいます。また、大量の荷物を保管するためには広い面積が必要であり、場合によっては倉庫を分ける必要性もでてきます。すると経済的なコストだけでなく、管理コストもかさんでしまうでしょう。
作業者に負担がかかる
定温倉庫の倉庫内は比較的低温に保たれるので、従業員がなかでピッキング作業などをする場合、身体に負担がかかる可能性があります。荷物にとっては最適でも、人間の作業環境にはやや適さないケースもあるでしょう。そのため、なかには自動化により機械にピッキングを任せている倉庫もあります。
設備の管理が複雑
温度・湿度を厳密に管理する必要性から、設備管理の複雑化は避けられません。冷風機や専用カーテン、各種計測器といった専門設備の導入・維持管理が不可欠であり、外気温変動や扉開閉による温度変動リスクへの対応も常時求められます。特に、精密な温度管理が求められる製品の場合、わずかな温度変化が品質に直結するため、管理技術と体制が重要となります。
定温倉庫の利用手段と選び方
荷物の保管に定温倉庫を利用したい場合は、3つの手段があります。以下では、それぞれの手段を選択する際に考慮すべきポイントも合わせて解説します。
委託倉庫を利用する場合:対応サービスをチェックする
委託倉庫とは、荷物の入庫や出庫・在庫の管理・商品の梱包などの、倉庫業務を一括で委託できるサービスのことです。そのほかの方法と比べて手軽に利用でき、初期費用を抑えやすいというメリットもあります。倉庫業務の委託によって人件費も削減できますが、自社にノウハウが蓄積されにくい点がネックです。
委託倉庫を利用する場合は、どのような作業を委託できるのか、対応可能なサービスやオペレーションを確認しておきましょう。その際、どの工程を委託するのか、あらかじめ明確にしておくとスムーズです。また、倉庫作業を一任することになるため、契約後に連携が取れるかどうかも重要となります。
倉庫を自社で建設する場合:建設会社選びを慎重に行う
倉庫を1から建設するのであれば、システムや設備、動線などを自社に合わせて自由に設計できます。ただし、倉庫の建設には高額な費用が必要です。長期的に見ると賃貸や委託よりもコストを抑えられる可能性がありますが、多額の初期導入コストが発生するため、資金に余裕がある企業に限られる方法です。
自社倉庫を建設する場合は、建設を依頼する建設会社選びが重要です。目的や懸念点を担当者に質問し、分かりやすく丁寧に答えてくれるか確認しましょう。温度管理ができる倉庫の実績をチェックし、要望に応えてくれる会社を選ぶことが大切です。
貸し倉庫を利用する場合:取り扱い商品との相性や立地を重視
貸し倉庫とは、その名の通り賃料を支払うことでレンタルできる倉庫のことです。基本的に倉庫内の設備や作業者は自社で調達するため、物流のノウハウを蓄積できるでしょう。また、そのほかの方法と比べて低コストで導入できますが、倉庫によっては運用方法に制限が発生する場合もあります。
貸し倉庫をレンタルする場合は、自社が取り扱う商品に適した環境かチェックしましょう。その際、どのような商品を、どのくらいの量保管するのか明確にすることが大切です。商品の種類や量が明確であれば、倉庫の広さや出入り口の幅などの条件を絞り込みやすくなります。また、倉庫の貸主の意向で、特定の荷物の保管が禁止されることもあるので、注意が必要です。
倉庫を開設するエリアも、重視したいポイントです。仕入れ先や納品先の場所や件数、頻度から、自社に最適な物流拠点がどこかを明確にして、エリアを選びましょう。
まとめ
定温倉庫とは、温度・湿度を一定に保つことができる倉庫です。荷物にとって最適な温度・湿度を保つことにより、品質や鮮度の維持、廃棄ロスの削減につながります。食品や医薬品、化粧品などを取り扱う場合は、ぜひ定温倉庫を活用しましょう。
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