リバースロジスティクスとは?物流業界の問題を解決する方法や事例について解説
物流業界では、通常の物流に関する事柄だけではなく返品などにフォーカスしたリバースロジスティクスにも注目が集まっています。
本記事では、リバースロジスティクスの概要や重要とされている理由、取り組み事例などについて解説します。物流業界に携わっている方は、ぜひ参考にしてください。
リバースロジスティクスとは
リバースロジスティクスとは、顧客から生産者へ向かう物流プロセスを指す言葉です。通常の物流は、製品を生産者から顧客へ届ける「順方向」の流れです。一方、リバースロジスティクスは、製品を消費者から返品・回収する「逆方向」の流れを指します。
還流物流とも呼ばれるリバースロジスティクスは、環境問題への取り組みもあり、近年注目されています。具体的な取り組みの例は、以下のとおりです。
・製品を返品、回収する
・パーツや材料を再利用する
・製品を修理する
など
概念が生まれた経緯
リバースロジスティクスが広く知られるようになったのは、アメリカの経営学者ジェームス・R・ストック(James R. Stock)氏による1992年のCLM白書がきっかけです。同氏はこの白書を通じて、製品の代替や再利用によって、リユース・リデュース・リサイクルに貢献するべきだと意見を発表しました。
SDGsなど環境に関する事柄に注目が集まっていることも、リバースロジスティクスが広まった要因の1つです。
リバースロジスティクスが重要な理由
ここでは、リバースロジスティクスが重要な理由について解説します。
顧客ロイヤルティを高めるため
リバースロジスティクスが重要な理由は、顧客ロイヤルティを高めるためです。導入により、顧客に対してスムーズな返品・回収対応を提供できます。手続きがスムーズであれば、顧客満足度がアップし、結果としてブランドへの信頼とロイヤルティを高める効果が期待できます。
ECにおける例としてアパレルがあります。アパレルECは商品のサイズ、色、素材感など実際に手に取って確認できないので返品が発生しやすい傾向にあります。
返品をする顧客は、潜在的に不満を抱えている可能性が高いため、返品対応に手間がかかれば、不満がさらに募る結果になりかねません。逆に、返品対応がしっかりしている企業は、顧客に「安心して購入できる」という印象を与えられます。
SDGsに取り組むため
SDGsへの取り組みという観点からも、リバースロジスティクスは重要です。特に「12.つくる責任、つかう責任」との関わりが深く、製品の再利用やリサイクルを推進することで、廃棄物の削減や資源の有効活用を実現できます。
また、環境に配慮した取り組みを行うことで、企業の社会的責任(CSR)を果たすことができます。結果として、環境意識の高い顧客層からの支持が得られ、社会的な信頼性が増すでしょう。
販売機会の損失を防ぐため
リバースロジスティクスが重要な理由は、販売機会の増加に直結するためです。例えば、ECアパレル商品などは、前述のとおり商品の返品が発生する機会が多いです。その際に、返品ポリシーが明確でなければ、顧客は商品購入時に不安を感じやすくなったり、返品時のコストの発生を懸念したりするはずです。その結果、購入をためらう可能性が考えられます。
逆に、返品対応が迅速かつ簡単であることが明示されていれば、購入後のリスクを心配せずに商品を購入できるでしょう。結果として、販売機会を大きく広げられます。
コスト増加の抑制するため
リバースロジスティクスのプロセスが確立されていない場合、返品や廃棄物処理の非効率な管理によりコストが増加するリスクがあります。それらにかかるコストによって企業の収益を圧迫する可能性があります。
リバースロジスティクスを確立することで、返品業務にかかるコストを削減でき、対応にあたるスタッフの人件費や返品分の送料を削減できます。また、返品された商品の再販や、回収した製品を修理して再利用することで、新たな収益源を生み出すことができるでしょう。
リバースロジスティクスに関する課題
ここでは、リバースロジスティクスに関する課題について解説します。
体制を整備する必要性
リバースロジスティクスを導入・運用するうえでの課題の一つは、新たに体制を整える必要がある点です。返品・回収のプロセスは通常の物流業務とは異なるため、対応するための特別なノウハウやシステムの導入などが求められます。さらに、リバースロジスティクスの効率化には、サプライチェーン全体での情報共有と各プロセスにおける連携が不可欠です。社内で対応するために、体制構築や専門知識のある人材の雇用など準備が必要です。
自社でリバースロジスティクスを効率的に運用できない場合は、外部業者への委託も検討するとよいでしょう。
予測しにくい
リバースロジスティクスの課題は、予測の難しさです。返品や回収の発生は、顧客のニーズや行動に大きく依存しています。そのため、どの程度の返品が発生するかを正確に予測することは難しいでしょう。
不確実な内容であるため、急な返品や回収が発生した場合に、対応が後手に回るリスクがあります。
コストが増える
リバースロジスティクスの運用には、通常のロジスティクス以上に工数が多く、コストが増大することが課題として挙げられます。
返品された商品は、品質や状態を点検して、場合によっては、返金を行う必要があります。この工程は手間がかかり、人件費がかさむ要因となります。
さらに、顧客側にもコストが発生する点も見逃せません。返品をする場合、商品を梱包し、発送の手続きを行う必要があり、ものによっては配送料がかかる可能性もあります。配送料がかかる場合には、顧客の満足度が低下するリスクもあります。
リバースロジスティクスの導入事例
ここでは、リバースロジスティクスの導入事例を紹介します。
セブン&アイグループ
セブン&アイグループも、リバースロジスティクスに積極的に取り組んでいます。具体的には、生ゴミや廃油など食品由来のゴミを冷凍保存し、畜産農家の飼料として用いる体制を整えています。また、食品廃棄物を削減する取り組みの1つとして、商品の納品期限を緩和しました。
単なる製品の返品手続きとは少し手法が異なりますが、これもリバースロジスティクスの1つのあり方です。
ロコンド
ロコンドは、「試着できる通販」として認知度を高め、ECサイトで販売している衣料品や靴を消費者が気軽に返品できる体制を整えています。
具体的には、出荷から14日以内であれば、サイズ交換などに対応をしており、消費者が自分にあった商品を見つけるためのサポートをしています。返品できることを前面に押し出すという消費者目線の対応により、ロコンドは成長を遂げました。
リバースロジスティクスの将来性
ここでは、リバースロジスティクスの将来性について解説します。
テクノロジーの進化による効率化
リバースロジスティクスの将来は、AIやIoTなどの先端技術によって大きく変わる可能性があります。最新の技術を活用することで、返品・回収が効率化され、業務がよりスムーズに進むでしょう。例えば、AIを活用して返品処理を自動化すれば、作業にかかる時間を大きく削減できます。
持続可能な物流システムの構築
環境問題への意識が高まっている現代社会では、リバースロジスティクスが重要な働きを担います。企業は、廃棄物削減や資源の有効活用を実現し、リサイクルやリユースに取り組む必要があります。活用することで、企業は物流によって発生する環境負荷を削減し、二酸化炭素排出量の削減にも貢献可能です。
リバースロジスティクス専門業者の登場
リバースロジスティクスは、物流を取り扱う業者にとって欠かせない取り組みとなっています。アメリカで創業した企業は、商品を回収するだけではなく、その商品を再販処理・再出荷することによって利益を生み出す仕組みまでサービスとして提供しています。この取り組みによるさらなる利益が見込めれば、今後日本でもリバースロジスティクスを専門とした企業が立ち上がる可能性もあるでしょう。
まとめ
リバースロジスティクスに力を入れることで、顧客に対して寄り添いつつ自社にとってもさまざまなメリットを得られます。運用の難しさはあるものの、将来的な目線でも欠かせない取り組みとなるでしょう。
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