誤出荷の原因を徹底解剖!6つの対策や影響についてわかりやすく解説
誤出荷は物流業務において、企業の信用を大きく左右する問題です。現場での単純なミスの積み重ねが大きな影響を及ぼし、顧客満足度やコスト面にも悪影響を及ぼします。
本記事では、誤出荷の定義や起こりがちなケースから、原因、さらに具体的な防止策までを総合的に解説します。
誤出荷とは?
誤出荷とは、注文された商品が数量、宛先などが正しくない状態で出荷されてしまうことを指します。
例えば、色やサイズを誤って送ってしまったり、配送先を取り違える「テレコ出荷」をしてしまい、別の顧客へ商品が届いてしまったりするケースなどが該当します。急増するEC販売により、多品種少量ロットの出荷が増加し、誤出荷はさらに起こりやすい状況になっていると言えるでしょう。取り扱う在庫数が増え管理の複雑化が進む一方で、顧客はより迅速な対応を求めるようになっています。その結果、作業に少しでも不備があるとトラブルが発生しやすくなります。企業が誤出荷によるクレームを受けると、顧客の信頼を損ねるだけでなく、追加の配送コストなどが重なり大きな損失に直結します。
誤出荷の主な原因
人為的ミスからシステム面の問題まで、誤出荷を引き起こす原因は多岐にわたります。
誤出荷が引き起こされる大きな要因としては、以下の4点が挙げられます。
入荷作業ミス
誤出荷の原因として多いものの一つは入荷作業時のミスです。入荷商品の誤認やJANなどのコードがない商品に対する識別コードの貼り間違えや、バラ売りで在庫管理すべきだった商品をケース単位で計上してしまうなど入荷計上のミスがその後の誤出荷を引き起こしてしまいます。入荷作業で誤ったまま在庫管理してしまうとシステムを導入していても従業員が何かのきっかけで気づく以外では誤出荷を防止することは困難です。
出荷指示ミスやシステムエラー
出荷指示時に数量や商品コードを誤って指定してしまうことで誤出荷は発生します。システムが導入されていても、出荷の指示自体に誤りがあると指示通りに作業をしても顧客にとっては誤出荷となります。
システムエラーの場合は早期発見が重要となり、バックアップ処理や冗長化の仕組みを整えておく必要があります。入力作業やデータ管理でもヒューマンエラーをゼロにするのは難しいため、二重チェックを含む対策が求められます。
ピッキング時の商品・数量間違いと検品不足
商品そのものを取り違えるケースと、数量を間違えるケースは誤出荷の代表的な要因です。例えば色違いやサイズ違い、色・サイズ共に類似した商品をピックしてしまったり、5個注文のところを4個しか入れなかったりといったことが考えられます。ピッキング時に誤った商品を選んだまま、検品も不十分でそのまま荷造りへ進んでしまうケースもあります。
また、キャンペーンやセールによってセット販売になっていたり、商品の外装箱が期間限定状態になっていたりするなど普段と異なる状況では特に出荷ミスが発生しやすいため注意が必要です。その他にも、出荷作業中に出荷伝票を紛失し、出荷漏れに気づけなかったというケースもあるでしょう。
一方で、作業手順や検品作業が適切に機能していれば誤出荷は未然に防げることが多いです。しかし、検品体制が不十分だと自然とチェック漏れが発生し、誤出荷のリスクが格段に上がります。
宛先間違いと同梱物の入れ忘れ
出荷時の送り状の貼り間違えやノベルティなどの同梱物の入れ忘れも主にECの物流現場で発生する誤出荷の一つです。
貼り間違えのほかにも送り状を作成する際に住所情報の入力が誤っているケースなどもあります。また、書類やノベルティなどの同梱物を入れ忘れは、顧客の立場では「必要な案内が足りない」、または「このノベルティが欲しくて購入したのに」と不満を抱いてしまうため、商品だけでなく同梱物のチェックを徹底することが大切です。
実在庫と在庫データの差異
実際の在庫数(実在庫)と在庫データ(論理在庫)の間で差異が発生することによる誤出荷のケースもあります。
これにより本来あるはずの商品が欠品扱いになったり、逆に在庫の無い商品が販売されてしまったりと、出荷できなくなるなどの事象に繋がります。
倉庫内作業による汚破損や在庫管理中に発見した商品不良など入出荷以外でも在庫数が変わるシーンは多々あります。
論理在庫と実在庫が一致しないということは商品の販売や受注後の出荷のいずれにおいても多大な影響を引き起こします。
誤出荷が及ぼす影響
一度誤出荷が発生すると、信用面とコスト面の両方で深刻なダメージに繋がります。
以下では誤出荷が企業に及ぼす影響について解説します。
顧客からの信頼の低下
取り扱い商品が良くても、商品が正しく届かなかったり、何度もトラブルが続いたりする場合、顧客が不安を感じるのは当然です。一度低下した信頼を取り戻すには時間とコストがかかり、その間に競合他社へ移られてしまう可能性も高まります。
口コミによってネガティブな内容が投稿されることで、ECサイトや企業の評価は下落します。顧客が安心して利用できる環境を整備することが、長期的なブランド価値を維持する上で重要といえます。
個人情報の漏洩リスク
送り状の貼り間違えにより宛先を間違えることで、別の顧客の情報が第三者の手に渡る恐れがあります。誤出荷によって住所・氏名・電話番号などの個人情報が漏洩すれば、企業の信用は大きく損なわれます。
情報漏洩は法的リスクにも直結し、場合によっては賠償責任が発生することもあります。
在庫差異の発生
誤出荷が起こると、商品が出荷されたはずなのに倉庫上のデータではまだ在庫が残っているといった整合性の取れない事態が生じます。結果としてリアルタイムの在庫確認が難しくなり、追加の管理コストを発生させます。
誤った在庫情報は受注対応にも影響を及ぼし、販売の機会損失や過受注、顧客への納期遅延につながる恐れがあります。正確な在庫把握に支障が出ると、全体の物流効率が大幅に低下してしまいます。
無駄なコストがかかる
誤出荷による返品送料や再発送のコストは、大きな負担になります。また、顧客対応に割く人件費も増え、想定外の出費が発生しやすくなります。再発送のコストには、正しい商品へ交換する作業や返品された商品を再び販売できる状態かの確認・復旧作業にかかる人件費なども発生します。配送料などの輸送コストに加え、人件費などのコストも多くかかってしまいます。
誤出荷を防止する具体的な対策6つを紹介
ここからは、誤出荷を最小限に抑えるために有効な具体策を5つ取り上げます。
誤出荷が繰り返される、もしくは発生リスクが高い状態であっても、適切な対策を講じれば問題を効果的に抑制できます。重要なのは現場の業務フローを全体的に見直し、ボトルネックやエラーが生まれやすいポイントを特定することです。
コストや人材面での制約を考慮しつつ、自社に合った対応策を講じていきましょう。
①入荷とロケーション管理の見直し
誤出荷を減らすには、まずは入荷時点での作業と情報登録を正確に行うことが欠かせません。入荷時に商品の情物一致を担保することにより、誤出荷の要因を倉庫内部のオペレーションに限定出来るためミスを防ぎやすくなります。
また、入荷商品のロケーション格納において色・サイズなどの見た目が類似した商品は隣り合わせで格納しないなど取り違えにくい環境と作業手順の工夫も有効です。分かりやすいラベリングや棚番号の表示を行うことも小さなヒューマンエラーを減らす要素と言えます。
②倉庫レイアウトと作業スペース見直し
スムーズな動線を確保し、ピッキングや検品の作業スペースを十分に取ることで、作業者が落ち着いて業務に対応できます。
通路の狭さや棚の配置に無理があると、作業効率だけでなく安全面にも支障が出ます。安全・品質・生産性のバランスのとれた設計にすることで誤出荷の発生頻度を低下させられます。
③従業員への教育と意識向上
作業者一人ひとりが誤出荷のリスク、誤出荷による影響を理解し、常に正確な作業を心がけることが大切です。新しく配属されたスタッフには、倉庫レイアウトやロケーションの割り振り、商品知識や社内ルールを丁寧に教え、正しい手順を身につけてもらうことが必要です。
ミスが起きた場合には原因を明らかにし、共有することで全体のレベルを底上げします。定期的な勉強会や朝礼での周知など、社内コミュニケーションを通じて誤出荷防止の意識を高めることが効果的です。
④KPI設定と改善活動
誤出荷を防止するという漠然とした状態よりも具体的なKPI(Key Performance Indicator)を定めることも有効です。
誤出荷率や在庫差異率などを定め、倉庫で働く従業員全体に共有することで具体的な防止の為の改善活動の土壌になります。
設定目標は百分率や百万分率<PPM(Parts Per Million)とも呼ばれます>など適切な単位で設定しましょう。
改善活動は発生事象に対して”なぜなぜ分析”などによる真因を特定し、5Sの観点を交えた再発防止策を整備すると良いでしょう。
⑤出荷業務の自動化の検討
バーコードやRFIDなどの自動化技術を導入することで、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。例えば、出荷指示を自動化するために、倉庫管理システム(WMS)と受注管理システム(OMS)を導入することで、注文情報の手動対応が不要となり、ヒューマンエラーによる出荷指示のミスが大幅に削減されます。
また、在庫管理システムでリアルタイムに在庫を管理すれば、ピッキングの正確性が高まります。投資コストや導入期間を考慮しながら、段階的にシステム化を進めるのが良いでしょう。
⑥アウトソーシングの検討
自社に十分なリソースやノウハウがない場合、物流や倉庫管理を専門業者に委託するのも一つの方法です。誤出荷リスク低減と同時に、人的コストを削減しながら専門的なサービスが受けられるメリットがあります。
ただし、アウトソーシング先の品質管理やコミュニケーション体制を事前にしっかり確認する必要があります。契約書やSLA(サービス水準合意)などを明確にし、お互いの責任範囲をはっきりさせることでトラブルを避けられます。
まとめ
誤出荷防止は企業の信頼やコスト管理、さらにはブランド価値に直結する重要なテーマです。
誤出荷をなくすためには、現場のヒューマンエラーを減らすだけでなく、システムや管理体制を最適化することが求められます。根本原因を究明し、ロケーション管理や検品工程などを見直すことで大きな効果が期待できます。
また、倉庫レイアウトの設計や従業員教育、さらには自動化ツールの活用など、多角的なアプローチを同時に進めることがポイントです。どれか一つの対策だけに頼るのではなく、複数の対策を組み合わせることでより誤出荷率低下に近づきます。
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