在庫引当とは?物流現場での重要性や仕組みについて解説
在庫引当は倉庫や物流の現場において、顧客からの注文に必要な在庫を確保するために欠かせないプロセスです。本記事では、在庫引当の具体的な定義やメリットを解説しつつ、在庫管理の現場で起こりがちな事例も紹介していきます。
在庫引当とは何か?
在庫引当とは、顧客からの注文が入った際に、実在庫数から受注した分の在庫を確保する作業、または機能のことです。
引当を行わず曖昧な在庫情報のまま運用がされたり、スムーズに受注情報が連携されないと、最終的に販売可能在庫数のズレが発生しやすくなり、受注した商品の出荷時に在庫切れやダブルブッキングによる欠品や出荷遅延につながる恐れがあります。
十分な在庫があるかどうかをリアルタイムで共有・確認することが重要であり、ここで生じるミスが受注トラブルや顧客からの評価の悪化に直結する可能性があります。
在庫引当の重要性とメリット
在庫引当はECの普及に伴い、リアルタイムな在庫管理が求められる倉庫や物流の現場で欠かせないファクターとなっています。それだけではなく、出荷遅延などのミスを起こさないことは顧客や取引先からの信頼性獲得にもつながっているため、健全な在庫管理は企業運営のうえでも重要な役割を担っているといえます。
ここでは在庫引当の仕組みを整えておくことの重要性やメリットについて紹介します。
在庫不足や余剰在庫の防止
在庫の引当が曖昧になり、正確な在庫数が管理・把握できていないと、在庫不足が起こり、必要なタイミングで商品を用意できず、顧客や取引先にも影響が出るリスクがあります。特にECでは24時間注文を受け付ける環境なので1つの在庫不足の事象が過受注を引き起こすなど連鎖的に他の注文にも影響を与えやすい特性を持っています。在庫引当機能が適正に働くことで注文された商品を問題なく顧客にお届けし、販売サイトでは顧客が安心感をもってお買い物をする環境を整えることができます。一方で、逆に余剰在庫は保管コストや廃棄リスクといった無駄を生む要因となりますが、在庫引当による正しい在庫管理ができていればタイミングを見極め、ロス無く最適な量を確保しやすくなります。
在庫の適切な配分と情報の一元管理
在庫が複数の拠点に分散している場合でも、在庫引当の仕組みを整えておくことで、どこにどのくらいの在庫を確保できるかをスムーズに把握できます。これにより、出荷場所を最適に振り分けるなどの戦略が立てやすくなり、物流コストの削減にもつながります。
情報が一元管理されていると、担当者同士で不必要な確認や問い合わせをせずに済みます。リアルタイムで在庫状況を共有できると、オーダー対応や補充スケジュールの調整が容易となり、結果的に顧客対応の品質向上につながります。
効率化による作業時間の削減
当然、在庫切れが起こると現場担当者はピッキングや出荷の際に在庫を補充したり探したりすることで無駄な作業や時間が発生してしまいます。前述した在庫不足の防止ができているだけで作業効率が上がり、全体の作業時間は削減されます。あらかじめ割り当てが明確になっているため、倉庫内での動線や業務指示を最適化しやすい点もメリットとして挙げられます。
納品遅延リスク低減による顧客満足度の向上
当然ではありますが、受注数に対応した在庫を事前に確保しておくことで、結果的に納品スケジュールを守りやすくなり、顧客が求めるタイミングで商品を届けることができます。こうして顧客の信頼性を維持し、リピート受注や、顧客ロイヤルティの向上にも貢献します。
在庫引当の仕組みとロジック
在庫をどのようなロジックで引き当てるか、その考え方と実際のシステム運用を紹介します。
在庫引当を上手く運用するコツは、在庫の消費順序や優先度をあらかじめ設定しておくことが鍵となります。一度設定したルールを一貫して適用すれば、作業者ごとの判断のばらつきが少なくなり、ミスは削減できます。
また、倉庫管理システム(WMS)と連携して自動的に引当を行う仕組みを整えることで、リアルタイムの在庫状況に基づいた正確な判断が可能になります。在庫引当をシステム化することで手動での入力作業や二重処理の手間を減らせるので、全体の業務効率化にもつながります。
引き当ての種類と手法
在庫引当には、大きく分けて固定的な引当(静的)と、状況に応じて変動させる引当(動的)の2種類があります。
固定的な引当方式では、既定の在庫量をあらかじめ割り当てるため、安定した運用が可能です。
一方で、動的引当方式では最新の受注数や需要予測に応じて割り当てを行うため、変動が大きい需要にも対応できます。企業のビジネスモデルや商品特性、物流波動により、最適な組み合わせを模索することをおすすめします。
在庫引当ロジックの基本(FIFOなど)
FIFOとは先入れ先出し(First In First Out)のことで、古い在庫から優先的に出荷する方法で、在庫の滞留や品質リスクを防げるメリットがあります。食品や医薬品といった商品は、単に入庫日の古い在庫から出すだけでなく、商品特性や消費期限などを考慮した在庫ローテーションを設計して運用しているケースもあります。
また、品質の維持だけでなくFIFOの運用によって常に在庫が整理された状態になるため、棚卸や入れ替えの際の効率化にもつながってきます。
更に、同じ出荷先の注文に対して引当をする場合、前回出荷したロットより古いロットの商品を出荷してしまうロット逆転が起こらないようにすることも品質管理の観点で重要になります。
特に食品においてはロットによって賞味期限も異なるため、出荷先からのクレームや納品拒否のリスクもあるため注意が必要です。
生産性を上げる在庫引当のポイント
生産性をあげる上での在庫引当のポイントは作業者の歩行距離とピッキング対象の棚へのアプローチ回数が基本となります。
例えばトータルピックを行う上での在庫引当では棚への一回のアプローチでより多くの商品をピック出来るようなロジックとしたり、ピッキング対象の商品が格納されている全てのロケーションを結んだ時の密度などを引当ロジックとして意識するとよいでしょう。
一方でピッキング商品のロケーションやルートに作業者が集中しないよう適度に分散をかけれるように同じピッキングルートでも順序を逆順にできるようなオプションがあると渋滞の回避に繋がります。
優先順位の設定とルール
顧客の重要度や注文の緊急度を考慮して、先に割り当てる商品や数量を設定するという運用ルールを設けることも効果的です。例えば、優良顧客には在庫が限られた場合でも優先的に引当を行い、新規顧客には一定数だけを確保するといった運用も考えられます。
こうした優先順位を明確にすることで、担当者間の衝突や調整作業を減らし、企業としてのサービスレベルを守りやすくなります。ただし、ルールが複雑になりすぎるとオペレーションに支障をきたすため、バランスを見極めてカスタマイズして安定的に運用していくことが大切です。
まとめ
在庫引当の基本やメリット、運用上の注意点を踏まえたうえで、次なる改善策を検討してみましょう。
在庫引当は、在庫管理全体の中でも特に重要な要素であり、顧客満足度や業務効率に大きく影響します。適切に運用することで、受注後の納品リードタイムを短縮し、在庫の無駄や機会損失を防ぐことが可能です。
まずは現状の在庫管理体制を見直し、在庫数の正確さを高める取り組みからスタートしてみましょう。そこから引当ロジックの設定やシステム導入を段階的に行うことで、在庫回転率の向上や顧客満足度の維持に役立つはずです。継続的な運用改善を行いながら、自社に最適な在庫引当の方法を模索し続けることが成功への鍵となります。
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