荷役とは? 基礎知識から目的、荷役作業の危険性を解説
本記事では、物流現場で欠かせない荷役の基本的な意味や重要性、安全対策などのポイントを詳しく解説します。荷役作業は物流業務において重要な役割を果たしており、効率的な荷役がおこなわれなければ、商品がスムーズに流通しないだけでなく、安全面やコスト面にも影響が及ぶ可能性があります。本記事では、物流の専門用語に馴染みがない方でもわかるように、基礎から解説します。
荷役の基本的な意味と重要性
荷役の基本的な意味
荷役とは、物流現場で扱われる貨物を適切な場所へ移動させる一連の作業を指します。具体的には、荷物をトラックや車両などの乗り物へ積み込んだり降ろしたりする作業、倉庫内で保管場所まで運搬する作業、仕分けやピッキングといった出荷準備などが含まれます。一言で「荷役」といっても、その内容は業種や扱う貨物の種類によって大きく異なります。例えば、港湾ではコンテナの積み下ろしや保管が中心になる一方、倉庫内では棚入れやピッキング、積付けなどの作業が主軸となります。
貿易・港湾における重要性
国際物流を支える港湾では、コンテナの積み下ろしから輸出入手続きまで多様な作業が行われます。これらの作業の中心となるのが荷役であり、大量かつ大型の貨物を効率的に扱うスキルと設備が求められます。また、港湾では国際輸送のスケジュールに合わせて作業が行われるため、時間管理が厳しくなる傾向にあります。グローバルサプライチェーンを円滑に機能させるためには、荷役の作業品質や効率は極めて重要です。
主な荷役作業
多くの荷役作業は、車両や倉庫内で貨物を取り扱う際に共通する工程が含まれます。
積み降ろし
積み降ろしは、トラックや船舶などへの貨物の積み込みと取り降ろしを指します。重量や形状に合わせてフォークリフトやクレーンを使うなど、作業を円滑に進めるためには技術と機材が必要です。積み降ろし時は床面や貨物の安定性、車両のブレーキのかけ忘れなど、思わぬ事故につながる要素が多いため、常に十分な安全確認がおこなわれます。
運搬
運搬は、倉庫や敷地内、または荷降ろし場所から保管場所までの貨物移動を指します。台車やフォークリフトをはじめ、自動搬送ロボットなどを活用することで省力化と効率化が期待できます。ただし、運搬経路には作業員や他の機器が混在していることが多いため、動線計画や周囲の安全確認が重要となります。
入庫と出庫
入庫は、貨物を物流拠点や倉庫に受け入れる作業です。検品や荷札の付与、在庫システムへの登録など、入庫時に正確な管理をおこなうことで在庫管理の精度が高まります。
一方、出庫は、出荷や配送のために倉庫から貨物を取り出す工程です。オーダー内容の誤りや取り出しミスを防止するためにも、作業フローを定型化している企業が多いです。
仕分け
仕分けは、行き先や種類、注文内容などに応じて貨物を分類する作業です。複数の顧客向けの商品をまとめて納品する場合などでは、仕分けの精度が後のトラブル防止に大きく貢献します。近年では自動仕分け装置やバーコードスキャナを活用することにより、仕分け作業のミスや時間ロスを大幅に減らす取り組みが進んでいます。
保管(棚入れ)
保管や棚入れは、入庫した貨物を指定の場所に適切にレイアウトする作業です。倉庫のレイアウト設計や棚の種類によって、作業効率や在庫管理のしやすさが大きく左右されます。
収納場所の割り振りを誤ると必要なときに商品を取り出せなかったり、余分な場所を占有してしまったりと、在庫管理に支障が出るため注意が必要です。
ピッキング
ピッキングは、出荷や製造ラインへの供給などに必要な商品を棚から抜き取る作業をいいます。ピッキング精度が低いと誤出荷や在庫ずれを引き起こし、サービス品質に影響を与えます。作業場では効率を高めるために、ピッキングリストやハンディターミナルなどを用いて作業を簡略化する工夫が行われています。
検品と梱包
検品は商品の品質や数量に誤りがないかをチェックする工程です。破損や汚損、型番違いなどの荷物に関する異常を発見し、防止する役割を担います。
梱包は商品を輸送に耐えられるよう包装する作業で、配送方法や製品特性に合わせて梱包材や手順が変わります。適切な梱包を行うことは、損害賠償リスクの回避にもつながります。
荷役作業の危険性
荷役現場は多種多様な機械や労働者が同時に動く環境であるため、想定外の事故が起こりやすい面があります。特に、重機が稼働する場所では作業エリアの確保に加え、作業員の死角を作らない工夫や安全対策の徹底が重要です。
運送業界における、死亡災害の約8割を占める「荷役5大災害」
「荷役5大災害」とは、荷役作業の中でも①堕落・転落、②荷崩れ、③フォークリフト使用時の事故、④無人暴走、⑤後退時の事故の5つの作業のことを指します。
荷役作業における死亡災害の約8割を占める上記の作業は、陸運事業者及び荷主が特に重点的に確認しなければならないとされており、厚生労働省では、荷役5大災害を防止するためにチェックリストを作成しています。荷役作業の労働災害が多い理由には、荷役作業そのものの種類が多く、作業員が慣れないまま複数の工程を同時進行するケースが多い点も挙げられます。
荷役作業の災害防止に向けた取り組み
以下では、荷役作業の災害防止に向けた取り組みについて解説します。
「荷役作業安全ガイドライン」の順守
「荷役作業安全ガイドライン」は、平成25年3月25日に厚生労働省が策定した、荷役作業時の安全確保や事故防止を目的としたガイドラインのことを指します。陸運事業者、荷主、配送先、元請事業者などが、労働者の荷役作業での労働災害を防ぐために取り組むべき事項を具体的に示したものです。具体的には、作業場の危険箇所の特定や、安全教育の徹底、適切な保護具の使用など、さまざまな観点から安全管理の手法を定めています。
政府機関や業界団体が公表するガイドラインは、常に最新情報をチェックし、作業現場にフィードバックしていくことが大切です。
リスクアセスメントの導入
リスクアセスメントとは、作業を行う前にそのリスクの重大性や発生確率を評価し、適切な対策を講じるプロセスを指します。危険度が高い工程については優先的に対策を講じることで、重大事故の発生確率を大幅に下げることが可能になります。法的にリスクアセスメントの実施が義務づけられている現場もあり、多くの企業が手法の導入を積極的に進めています。
まとめ
荷役は物流全体の核となる作業であり、安全と効率を同時に追い求めることが企業の競争力に直結します。その一方で、荷役作業は労働災害が多く、安全対策もしっかり講じなければなりません。
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