過剰在庫がもたらすリスクとは|発生要因から具体的な解消方法を解説
本記事では、過剰在庫の定義とその発生要因やリスク、解消方法を詳しく解説します。過剰在庫のリスクをしっかりと理解し、企業のキャッシュフローや収益性を高めるためのヒントにお役立てください。
過剰在庫とは
過剰在庫とは、在庫として抱えている商品の量が需要を大きく上回っている状態を指します。
販売予測に対して実在庫が多い状態を示す言葉として使われます。また、「余剰在庫」も同様の意味で使われています。過剰在庫と混同されがちな言葉に「滞留在庫」がありますが、これは入荷してから商品が一定期間以上荷動きなく保管されている在庫を指し、定義が異なります。定義にある「一定期間」をどれくらいの期間とするのかは企業や商品によって異なります。
過剰在庫がもたらすリスク
企業活動を円滑に進めるためには、一定水準の在庫は必要です。ただし、抱え過ぎた在庫は、単に売れ残りという問題だけでなく、企業の資金繰りや運営に影響を与えます。過剰在庫がもたらすリスクについて以下で解説します。
スペース圧迫と保管費用の増大
在庫を大量に抱えるということは、それだけの倉庫や保管スペースを確保しなければならないことを意味します。本来なら別の商品を保管できるスペースを奪ってしまい、販売計画に基づいた入荷ができない状態に陥る可能性もあります。保管場所を別に確保することになれば、それにかかる賃料、保険料、場合によっては固定資産税などの無駄なコストが発生してしまいます。
作業生産性の低下と人件費の増大
在庫を多く抱えるということは保管の観点だけではなく、入荷・出荷等の倉庫全体の作業生産性の悪化を招きます。例えば入荷商品を棚に格納する際に空き棚を探す、本来であれば近場に格納したい商品を遠い棚に格納する、ピッキング時に遠い棚まで取りに行く、など他の商品の作業にも影響しかねません。また在庫全体の数が増えることにより棚卸作業での作業工数の増加、倉庫全体の管理人件費の増加なども該当します。
キャッシュフローの減少と資金繰りの悪化
抱える在庫が増え、管理費などの追加コストが重なり、在庫を抱える期間が長くなるほどトータルコストが増大していきます。結果として、利益の減少や財務指標の悪化につながるリスクが高まります。
また、過剰在庫分については仕入や生産の支払いと売上のバランスが崩れます。経営に回せる資金が減少するため、新規商品の仕入や生産、設備投資などに割り当てる余裕が失われます。
不良在庫の発生による損失
在庫の保管期間が長引くほど、商品の品質は低下し、販売可能性は低くなっていきます。特に消費財や食品など消費期限が設定されている商材では、値引き販売や廃棄処分が避けられません。また、商品自体の品質に問題はなくても商品が陳腐化することで同様の対処が行われるケースがあります。こうした対処による売上減少や追加コストは、企業の収益に大きなダメージを与えます。
商品価値やブランドイメージの低下
安易な値下げ販売を続けるとブランドの価値が損なわれ、顧客から見ても魅力的でない商品という印象を与えかねません。結果として、企業全体のブランドイメージに影響を及ぼし、今後の販売戦略にも支障が出る恐れがあります。
過剰在庫が発生する背景
需要予測と実態の乖離
需要予測は過去の売上実績や顧客ニーズに基づいて行われますが、市場データや季節要因を十分に考慮しきれない場合、予測が大きく外れることがあります。例えば、急激なトレンドの変化、競合他社の参入、技術革新などによって需要が激減することも珍しくありません。こうした予測との乖離が重なると、過度に蓄積された在庫が発生してしまいます。
発注や計画の不備
在庫状況を正確に把握しないまま、漫然と大きなロットで発注してしまうと、その分の在庫を抱え続けるリスクが高まります。現場の販売データや市場動向が経営陣にうまく共有されず、過去の発注実績を参考にするだけでは、需要と供給に大きなギャップが生じることがあるでしょう。定期的に関係する各部門と発注基準や在庫量の見直しを行い、在庫の適正化を行う必要があります。
季節商品やトレンド商品による影響
特に衣類や季節限定品は、売れ行きのピーク時期が明確なため、販売タイミングを逃すと一気に在庫が滞留するリスクがあります。トレンド商品の場合、流行が一巡すると需要が急減してしまい、在庫処分コストが膨れ上がることも少なくありません。こうした商品は販売サイクルが短いため、需要予測と在庫管理をより緻密に行う必要があります。
過剰在庫を防ぐポイント
在庫を最適化するための具体策を紹介します。
過剰在庫を回避するためには、発生する原因究明を行い、打ち手を考えていく必要があります。以下では、過剰在庫を未然に防ぐポイントについて述べます。
精度の高い需要予測と適正な在庫計画
過去の販売データや在庫データ、生産能力などの定量的情報や口コミなどの定性的情報に加え、経済や社会動向、市場の成長率、競合他社の動きなどの外部環境の情報をもとに需要計画を立てます。さらに、大口注文の有無や特定顧客の需要動向などの情報も考慮することで正確な需要予測を立案できます。これらを緻密に取り込んだ在庫計画を策定することで、在庫リスクを抑制できます。結果として、無駄のない供給体制を築くことでサプライチェーン全体のコスト最適化につながり、企業の収益性の向上に寄与します。
単品収益管理の導入
商品単品単位の収益管理を導入することも有効な対策のひとつです。単品単位で売上、原価(仕入原価や物流費など)を割り出し、収益性を見定めていく手法です。
これにより販売までに要する保管期間とコスト、在庫量の適正度、特定単位仕入による割引率等の条件の貢献度などが把握でき、全体のなかで販売商品の優先度や適正な在庫量の見極めに繋げることができるでしょう。導入には多大な労力もかかりますが、仕入れ部門、販売部門、物流部門など部門を横断して適正なバランスを図っていくには有効な手段のひとつです。
在庫管理システムの導入と活用
在庫管理システムを使えば、リアルタイムで在庫状況を把握し、流通や販売の動きを即座に反映させることができます。在庫の状態を可視化することで、担当者が在庫の過不足を早期に察知しやすくなるでしょう。また、予測データと連動させることで、具体的な発注タイミングや販売促進策を立案しやすくなる点も魅力です。
ABC分析による在庫整理
ABC分析は、商品を売上への貢献度が高い順に分類し、管理を強化する手法です。Aランクの商品は欠品を防ぐよう在庫を厚めに確保し、B・Cランクの商品はこまめな発注を心がけるなど、メリハリのある管理方針が立てやすくなります。こうした分析を定期的に実施し、変化する顧客ニーズや市場動向に対応することが、過剰在庫を防ぐことにつながります。
サプライチェーン全体での情報共有
社内の関係部門や社外の仕入先や販売先、物流業務の委託先などと需要データを共有し、在庫や受注情報をリアルタイムで把握できる体制を構築することで、過剰在庫のリスクを最小化できます。各段階での発注数量を最適化し、適時に計画を修正できる体制を構築することが重要です。サプライチェーン全体での連携を深めることで、企業単独では対応しきれない市場の変化にも柔軟に対処できるでしょう。
まとめ
過剰在庫対策には、需要予測や管理体制の整備、社内外での情報共有が不可欠です。
過剰在庫は、在庫として抱えている商品の量が需要を大きく上回っている状態を指し、過剰在庫は一時的な在庫過多ではなく、企業のブランドイメージや経営効率、資金繰りにまで大きく影響する重要な課題です。需要予測や在庫管理システムの活用、戦略的なセール計画など、解決策は多岐にわたりますが、いずれも継続的な改善とモニタリングが欠かせません。社内の関係部署や取引先とも連携しつつ、具体的なデータをもとにした管理体制を整えれば、無駄を減らして効果的に利益を生み出す在庫運用を実現できるでしょう。
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