(レポート)シームレス・ロジスティクスの潮流とキーワード
1990年代以降、グローバル化が急速に進み、日本のものづくりは大きな変化にさらされた。市場の拡大から、地域・国によって生産・販売などの機能分担が進み、原材料・部品の調達、商品の生産、販売が世界中に拡散し、サプライチェーン(SCM)が今まで以上に長く複雑化していった。
消費者の価値観も多様化しており、大量生産の画一的な商品より、個人のそれぞれの好みが反映された商品の供給が望まれている。世界各地で消費者の嗜好の大きな変化が起きている。海外における日本食のブームなど、以前は生の食品を好まなかった外国でも、安全な日本の野菜を輸入する需要が生まれている。また、販売チャネルに関しても、実店舗だけでなく、インターネット通販の成長など若い世代を中心に購買行動は大きく変化している。
そういった消費者の変化に応えるひとつの方策として、「オムニチャネル」があげられる。2011年米国大手百貨店メイシーズが取り入れた施策で、店頭で、店員はタブレットなど端末を駆使し、迅速に在庫状況を確認。顧客は自分の好みや都合に合わせ、店頭でもインターネットでも商品を購入できる。店頭在庫とインターネット在庫の区別なく管理する全社の在庫の把握、顧客の手元に最適な店舗、倉庫から配送するなど顧客のためにすべてのチャネルを連結し、サービスやサポートも統一化する戦略をいう。
こういったすべてのチャネルを統合し、よりシームレスな販売戦略を立てるには、企業のすべての活動にロジスティクスの概念を導入する必要がある。シームレスなロジスティクスを実現することが、企業経営の要となる。ただし、企業においてシームレス・ロジスティクスを実現するには、3つの大きな阻害要因がある。一つは、トップマネジメントと現場の壁、経営陣のビジネスの感覚と現場が把握している題の乖離が見られることである。二つ目は、同一の企業内での機能や役割の違いなど組織間の壁があげられる。また、三つ目はサプライチェーンを構成する企業が複雑化し、複数企業間で利益相反が生じてしまうという問題である。
グローバルSCMは、ノード(在庫場所)とフロー(輸送)、モード(トラック、航空、海運)など組み合わせが最適か、中長期的に数値に基づいて検証する必要がある。国際間のすべてのプロセスにおけるコストは、国や事業部門単位で管理体制が異なることにより、トータルで把握するのは難しいという課題がある。
グローバルSCMの改革は日本の商習慣をベースにしたり、他社の成功事例を取り入れたりするだけではうまくいかないことが多い。グローバルSCM改革には、企業戦略を踏まえた、グローバルオペレーションモデルを作る必要がある。物流部門だけでなく、製造・販売を巻き込んだアプローチが重要だ。組織横断的で、輸送中の製品も含めた在庫の把握、ノードとフローを含めたシームレスなビジビリティー管理、一元的かつ柔軟なロジスティクス管理とルール化など様々な課題がある。こういった在庫の把握とロジスティクス部門からのデータ提供と実態の把握が求められるようになる。これらが実現すると、ロジスティクスだけでなく、各部門の協業により組織のパワーを最大化させ、より経営に貢献できるようになる。
講師紹介
パナソニック株式会社 関西渉外室部長 増森 毅氏
1983年 | 日本電気株式会社 入社 |
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1988年 | 松下電器産業(現パナソニック株式会社) 入社 |
2009年 | 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科 修士課程修了(MBA) |
2010年 | パナソニック株式会社 関西渉外室部長就任 (現在に至る) |
募集要項
イベント名 | 第14回CREフォーラム|『シームレス・ロジスティクスの潮流とキーワード』 |
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日時 | 2015年 3月20日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了 |
会場 |
虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階 東京都港区虎ノ門2-10-1 |
参加対象者 | 荷主企業 様、物流会社 様 |
参加費/定員 | 無料/70名限定 |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティング部
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- leasing_mail@cre-jpn.com
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