(レポート)ゼロから始める鉄道輸送 ~貴社物流に鉄道というSolutionを~
日本貨物鉄道(JR貨物)の概要
日本貨物鉄道(JR貨物)は1987年発足、各地域の旅客会社の線路をお借りして走る仕組みで民営化を行った。私は20年前からJR貨物(日本貨物鉄道)で営業職に従事しているが、世間では鉄道輸送を理解されていないことが多い。
鉄道貨物を導入されていない企業の方は鉄道貨物で何を運べるのか、窓口はどこにあるのか、時間がかかりそう、品質・サービスが悪そうなど、トラック輸送に比べて料金の仕組みがわかりにくいとよく言われるため、本日は簡単にご紹介させていただきたい。
日本貨物鉄道の営業線区は78線区、営業キロ数は現在8,166㎞となる。貨物駅は243駅あるが、コンテナ取扱駅は153駅。1日あたり479本の列車本数があり、走行距離は一日約20万km。全輸送量3,031万トンのうちコンテナ2,154万トン、車扱876万トン。
平成7年より全国に支店を配置する制度を開始する以前は、通運事業部として通運免許を主有する利用運送事業者さんを通しての営業活動を展開してきた。これは物流市場の厳しい環境において、お客様の声を経営に反映させる必要があるためだ。約300名の営業マンが各エリアからお客様情報を共有している。
貨物特性が持つ特徴・優位性
JR貨物が展開する鉄道貨物は一日あたり地球5周分走行距離を持ち、機関車1台で10tトラック65台分の物量を一気に輸送することができる。また営業トラック9分の1のCO2排出量で環境面でもアドバンテージを持つ。
鉄道のメリットは大まかに(1)中長距離走行、(2)大量、(3)定時性の3点ある。特に定時性では遅延が許されない日本のお客様を対象にした緻密なサービスで世界でも類を見ない正確性がある。
日本で最も長い距離を走る列車は札幌貨物ターミナル・福岡貨物ターミナル間の2,130kmを37時間で結んでおり、平成 25 年度の繁忙期積載率は99.9%だった。
これまで鉄道輸送は600km以上の長距離がメインだったが、近年では東京・仙台間の300kmなど、中距離のニーズも年々増加し、繁忙期には列車の供給が間に合わない程になっている。
輸送機関別CO2排出「原単位」が平成9年から導入され、国土交通省では数字を毎年更新している。平成25年度のデータでは自家用トラック1,201に比べて、営業用トラック217、内航海運39、鉄道は25で自家用トラックの約9分の1を記録した。
追い風は環境面だけではない。トラックドライバーの需給将来予測を見ると2020年に10万人超(全体の10%)が不足すると見られているが、中長距離を鉄道輸送にシフトすることで恒常的なドライバー不足の解消にも貢献できることから鉄道への期待は高まる一方だ。
エコレールマーク
貨物鉄道輸送はエネルギー効率に優れた輸送手段となるが、一般の消費者がお店で商品を選ぶ際には、その商品がどうやって運ばれたのかを知る手段がなかった。そこで、商品を輸送する時に貨物鉄道を一定割合以上利用している場合に、認定を受けられる仕組みが「エコレールマーク」だ。
環境にやさしい貨物鉄道輸送によって運ばれているものだということを一般消費者に認知していただき、それらを積極的に選択する目安を提供するとともに、企業側では環境問題に積極的に取り組んでいるということを一般の消費者にアピールできる。
余談だが、私はエコマーク部長時代に映画「踊る大捜査線」でキャラクターのエコレールマークちゃんとともに出演させていただいたこともある。
鉄道輸送商品と仕組み
鉄道貨物が走るのはJR東日本や東海など旅客会社の線路上となるため、緻密なダイヤを中心とした鉄道輸送サービスを欠かすことはできない。例えば東海道線貨物ダイヤでは、(1)最大5分に1本の頻度で走行可能、(2)最大26両編成、(3)1編成で30個のコンテナが輸送可能。
お使いいただく運賃は、空コンテナの発駅から出荷元への配送、配送完了後の使用済みコンテナ返送費を含めた「集荷料金」「鉄道運賃」「配送運賃」をセットに「複合一貫輸送費」としてJR貨物がお見積もりをお客様にお出ししている。
JR貨物が使用するコンテナ
JR貨物では12ft両側開きのコンテナ「19D形式」を6万個所有、小ロットでの輸送に適しており、内部が板張りのため中の貨物にやさしいことが特徴。フォークリフトによるパレット荷役が効率的に行え、貨物の固定のためのラッシングフックを装備するイプをはじめ、農産物対応「通風コンテナ」や、かさ高貨物に対応「背高コンテナ」など、さまざまな種類からお選びいただいている。
また10tトラックと同じ 31ftのウィングコンテナ「48A形式」が60個所有で今後は40個製造する予定。お客様の輸送単位、荷役作業を変更することなく、モーダルシフトを実現できる。
貨物利用運送事業はお客様との運送契約により、国内外を問わず、陸海空のうち最適な輸送手段を利用して貨物の集荷から配達までを一貫して行う輸送サービス。鉄道や海運では大量輸送貨物を、航空、自動車、鉄道など各々の輸送手段の特性を生かした輸送モードを選択し、お客様の要請に応えることができるもの。実際に荷主のお客様の貨物の鉄道輸送をする場合は実運送事業者であるJR貨物を利用し、第二種利用運送事業を取得していただく必要がある(全国通運連盟に423社所属)。
高まるモーダルシフト機運
モーダルシフトとは国内の貨物輸送をトラック輸送から、大量輸送機関である鉄道または海運に転換すること。輸送手段を鉄道などに転換することで、交通渋滞回避、CO2/排気ガス削減、トラックドライバー不足、トラック交通事故のリスク低減、定時運行による定期的・安定的な物流システム、大量輸送によるコストメリットなどを実現。環境負荷の低減に加え、エネルギー問題および今後の少子高齢化に伴う労働力問題の解決に資することを目的としている。
近年では異業種による 31ftコンテナの共同利用、同業界2社による大型コンテナ往復利用、異業種間での大型コンテナ往復利用など、活用事例が増加中。2015年にはJR貨物とイオンの物流を担うイオングローバルSCMが幹事を務めるイオン鉄道輸送研究会(32社参画)が、経済産業省の「グリーン物流優良事業者表彰」において大臣表彰を受賞した。「持続可能な物流体系の構築に特に顕著な功績があった」との評価をいただいたもの。今後も鉄道貨物にご期待いただきたい。
講師紹介
日本貨物鉄道株式会社 鉄道ロジスティクス本部
営業統括部 営業部担当部長 西山 賢治 氏
1984年 上智大学外国語学部卒
1996年 日本貨物鉄道入社
1997年 岐阜営業支店長 兼 岐阜貨物ターミナル駅長
2000年 本社営業開発行動部グループリーダー
2005年 関東支社東京営業支店長
2006年 日本オイルターミナル(株)営業部長 (出向)
2008年 本社営業部担当部長
2010年 社団法人鉄道貨物協会理事 (出向)
2014年 本社国際物流開発部長
2015年 本社営業部担当部長 兼 (株)ジェイアール貨物・インターナショナル社長(現任)
募集要項
イベント名 | 第20回CREフォーラム|「ゼロから始める鉄道輸送 ~貴社物流に鉄道というSolutionを~」 |
---|---|
日時 | 2015年 11月20日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了 |
会場 |
虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階 東京都港区虎ノ門2-10-1 |
参加対象者 | 荷主企業 様、物流会社 様 |
参加費/定員 | 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります) |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティング部
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
- 電話:
- 03-5572-6604