(レポート)味の素ゼネラルフーヅ サプライチェーンにおける輸入原料の食の安全
味の素ゼネラルフーヅ株式会社(AGF)の概要
味の素ゼネラルフーヅ(AGF)は、1973年に味の素株式会社とアメリカのゼネラルフーヅの合弁会社として設立され、昨年、2015年4月に味の素の100%子会社になりました。
おもにインスタントコーヒーやスティックコーヒーなどの飲食料品の製造、および販売を行う食品メーカーで、2016年3月決算の売上高は1,018億円になります。従業員は2016年4月現在で1,132名おります。
AGFが目指す「食の安全・安心」
「安全とは、人とその共同体への損傷、ならびに人、組織、公共の所有物に損害がないと客観的に判断されることである」と文部科学省によって定義されています。つまり、人や物に危害を加えないことが「安全」であるということです。
一方、「安心」は、個人の主観的な判断に大きく依存するものであり、一人一人の感情に基づくものであります。
「安全・安心」が求められる食品を扱うAGFとしては、お客様に危害を与えず、かつお客様に満足して飲んでもらえる商品を提供していかなければならないと考えています。
サプライチェーンマネジメントを軸にした品質管理
AGFは、食の安全・安心を確保するために、商品の設計から原材料の調達、製造、物流、営業までのサプライチェーンの全工程を通じて品質保証活動を行っています。具体的には、味の素グループ品質保証規格(ASQUA)および品質の国際規格である「ISO9001」、食品安全の国際規格である「FSSC22000(ISO22000+ISO/TS22002-1)」をもとにつくったAGFの品質保証システムに則って、品質保証活動を行なっています。
また、AGFの品質管理の特長としては、設計・開発、原材料の調達、生産、物流の各ステップで品質を管理するための規格基準およびその手順を設定しています。
このように、サプライチェーンの各段階において品質を細かくチェックしていくことで、AGFの商品の安全・安心が確保されています。
輸入原料と食の安全――輸入原料に対するAGFの品質保証の仕組み
私たちは、輸入原料に関して、品質保証のために、使用添加物や残留農薬についての規格を細かくつくっています。
使用添加物については、大腸菌やサルモネラ菌、異物が混入していないかどうかをチェックし、加えて原材料メーカーさんにお願いし、水分量、たんぱく量、脂質量などのデータを使用添加物調査表に入力してもらいます。このデータを見ながら、安全上の問題がないかを確認していきます。
残留農薬については、厚生労働省の規定に基づき2006年に施行された「残留農薬等に関するポジティブリスト制度」に対応して、残留農薬分析を行っています。残留農薬が基準値以上含まれるコーヒーを1杯飲んだからといって、それが直接危害に結びつくことはありませんが、それが蓄積されれば、何らかの弊害が出てきます。その対策として、私たちは、全納入ロットごとに448農薬について残留農薬検査を行なっています。ここまでの対策を講じているのは、現在コーヒーメーカーではAGFだけです。
さらに、原料を買う際は、原料メーカーの工場に行って査察を行います。査察実施時には、品質管理システムおよび責任についての確認項目、経営資源の管理についての確認項目、製品の実現化についての確認項目、測定・分析および改善についての確認項目を規定し、チェックしていきます。
そして、これらの品質確認項目、原料の受入検査項目、サプライヤーの品質査察項目を購買契約書にきちんと明記することが重要です。そのことによって、これらすべての項目がきちんと行われることが保証されるのです。
コーヒー生豆輸送の革新
AGFは1994年に日本で初めてコーヒー生豆の輸送をバルク化(包装したり箱詰めすることなくそのままの状態で輸送する方式)しました。それまではコーヒー豆を麻袋に入れて輸送していました。1つの麻袋に60~70キログラムぐらい入れて、それを250~300袋(17~18トン)ほどコンテナに積んで運んでいたのです。それをバルク化して1つの袋に入れて運ぶことによって、20~21トンを1コンテナで運べるようになり、物流コストを削減することができました。
一方、バルク化したことによる新たな問題も出てきました。麻袋で輸入していたときは、日本に豆が来たときに、袋ごとに検査をして、買うか買わないかを判断すればよかったのですが、バルク輸送によって1つの袋で来てしまうと、もうそれは買わなければなりません。そのため、輸入する前にサンプル評価をきちんとやる必要が出てきたのです。そこで、生産地で船積み前にカップテスト(味覚検査)を行い、オーケーが出たものだけを積むという仕組みをつくりました。
バルク化により輸送コストの削減ができ、さらに、倉庫を経由せずに直接生産工場まで運ぶことで倉庫費用がかからなくなったため、年間数億円のコスト削減を実現することができました。
コストダウンと品質保証
バルク輸送は輸送費のコストダウンのために始めたことですが、それによって品質が下がっては意味がありません。そこでAGFは、よりよい品質のコーヒー豆を産地で選ぶために、出荷港で品質をチェックする仕組みもつくりました。コストダウンと品質維持は表裏一体の面がありますが、2つとも同時に実現できるようなアイデアを考えながら、仕組みづくりを進めています。
四日市港陸揚げの取り組み
私たちはもともと、鈴鹿工場へコーヒー豆を輸送するために、名古屋港をずっと使っていました。しかし四日市港が国際港になったのをきっかけに、2005年1月から四日市港での陸揚げを開始しました。このことにより輸送距離が半分になったので、年間数千万円を超える価格メリットが生じました。
ただ、四日市港に陸揚げするにあたっては、解決すべき課題が幾つかありました。四日市港は国際港になったばかりだったので、我々の商品を陸揚げするのに必要な設備がまだ整っていなかったのです。そこで、四日市港のある三重県と四日市港湾管理組合に協力してもらい、我々の商品の陸揚げに必要な設備を整えていきました。県の協力を得られたのは、三重県側も四日市港を国際港として発展させていきたいという意向があったからです。
何かを実現しようとするときには、四日市港陸揚げの場合は三重県でしたが、国、あるいは県や市、関連企業など、連携できるところを探して、ともに協力し合いながらやっていくことが重要だと考えています。
AGFのミッション
AGFはこれからも、食品メーカーとして「食の安全・安心」を第一に考え、品質保証とコストの両方を考慮した取り組みを行うことで、「お客様のやすらぎと健康」への貢献と、「社会と環境の持続可能性」への貢献というミッションを実現していきたいと考えています。
講師紹介
味の素ゼネラルフーヅ株式会社
品質保証・環境部長 阪口 宗 氏
大学院修士課程修了後、味の素ゼネラルフーヅ株式会社に入社。研究、マーケティング、ロジスティクス、生産部門を経験し、2008年より現職。
ロジスティックス部門在籍時は、流通とのCRP(連続的補充計画)の流通との取組み、工場からの各お得意先様への直送体制の拡大を担当。現職では、ISO9001、ISO14001とFSSC22000(食品安全システム)の統合システムの構築を実施。
募集要項
イベント名 | 第30回CREフォーラム|『サプライチェーンにおける輸入原料の食の安全』 |
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日時 | 2016年11月25日(金) 14:30開場 15:00開始 16:40終了 |
会場 |
虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階 東京都港区虎ノ門2-10-1 |
参加対象者 | 荷主企業 様、物流会社 様 |
参加費/定員 | 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります) |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティング部
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
- 電話:
- 03-5572-6604