(レポート)ソフトバンクロボティクス EC・ロジスティクスのこれから ~ロジスティクス戦争の未来~
未来をどうデザインするのか-「改革」ではなくて、「革命」
ソフトバンクロボティクス株式会社
顧問 兼 ロジスティクス本部長他(JMFI理事)
松浦 学(まつうら まなぶ)氏
日本の労働人口はこの10年で7%減少しました。さらに20年先には20%減ると言われています。したがって、今までの延長線上でのサプライチェーン「改革」をやっていっても問題は解決しません。「革命」を起こし、未来をどうデザインするのかという視点が必要になります。
サプライチェーン革命にロボット化は必要か?~産業ロボットの歴史~
サプライチェーン革命に本当にロボットは必要なのかを考えるにあたって、まず、産業ロボットの歴史を振り返ります。
1980年代には、日本の自動車産業や電機産業の工場において、速度や物を置く精度等を追求したライン生産用のロボットが導入されました。後半は汎用性も求められましたが、1990年代になると、バブルが崩壊し、投資回収が厳しく求められるようになり、また、少量多品種へ市場も以降した事からセル生産が主流となり、機器も移行していきました。
2000年代には、外国向けのシェアが高くなった事もあり、労働者の技能のバラつきが課題となった事から再びライン生産向けのロボットが主流になりました。
2010年代になると、アマゾンやアリババ等の大手EC事業者が大口需要者となり、ロボットの開発が盛んになります。規模も大きく、資金力もあるこれらの事業者は、自らがロボットを開発し、運用ノウハウを積み上げていくようになります。EC事業者においては、店舗向けとは異なる細かい作業、SKU数、搬送距離の増大、そしてやはり労働単価と質のバランスなどからロボット化は必須だったわけです。
最大手インテリア企業のロボット導入の事例紹介
事例を紹介します。
まず行ったことは、将来の市場と顧客の生活を描き、さらに将来あるべき会社の姿、社員の姿を描き、その姿を社員に共感してもらうということです。これまでと大きく異なる世界をイメージしたり、共感されなければ仕事の仕方も変わりませんし、ましてテクノロジーの導入など決断できません。
テクノロジーの発展により人の仕事は様変わりします。銀行の窓口からATM、そしてスマホへ…だけでなく、多くの分野で変態をせねばなりません。それに伴い、働く人に求めるスキルも様変わりするのです。逆に全体像を見ず、ロボット導入のみが目的化すると将来の足枷になりかねません。未来と成長戦略を描く事がまずは重要です。
日本初の技術
私は約4年で16個のテクノロジーを導入しましたが、こだわったのは「日本初」ということです。日本初の技術を入れるにあたって、社員に求めたのは、これからの変化に対応していくための新しい技術力、その技術を吸収する力、応用する力などの変化適応力が企業の無形資産として競争優位性になるからです。
人材育成
この会社においてロボット導入は初めてのことですから、もともと人材はいません。ロボット化のために新しい部署を作り、海外の展示会や先端企業の現実を回って勉強させて、人材を磨いてきました。
今までの経験年数とスキル獲得に相関はありません。身に付けさせたいスキルを明確化し、良質なトレーニング方法を開発し、を行えば、それまでの経験値と関係なく、短期間である程度のスキルを身に付けさせることができました。
失敗例に学ぶ ~会社の風土を変える~
人材育成にあたっては、成功例だけでなく、失敗例に学ぶことこそが重要です。失敗例に学びながら、トレーニングを重ね、それが持続的な強みになり、会社の風土を変えていくことができるかどうかが肝になります。
ロボット化の3つのポイント
自分が行った事例を紹介しましたが、ロボット化のポイントをまとめると、以下の3点になります。
1.成長戦略なくして導入なし
ロボット導入以前に、まずは本業の成長戦略を立てることが重要です。マーケット選定と自社のポジションを明確にし、その戦略が時代に合っているかどうかを見きわめます。
2.業務改革なくして導入なし
部分的に困っている工程にロボットを導入するだけではうまくいきません。次世代を見据えた全行程の最適化を行った上で最適なソリューションを選択します。ロボットありきでは失敗します。
3.自前にこだわらず、仲間を頼る
自社にテクノロジー人材を抱えている会社は少ないです。採用条件も経験のさせ方も一般的な企業とは違いすぎます。世の中には優秀な人が多くいるので、外部の人材に頼ることも肝要です。
ロボット導入後の施策
さらに、ロボットを入れて終わりではありません。入れてから運用が軌道に乗るまで、自分たちもロボットもフィットするように改善していく必要があります。そのような作業が3カ月から半年ぐらい続きます。
また、保守やバージョンアップの費用がかかることも頭に入れておかなければなりません。インテグレートを任せる会社だけでなく、そのアサインされる人材を見極めなければうまくいきません。
また、ロボットを入れた工程だけ効率が上がっても、前後の工程でトラブルが起きたりすることがあるので、よどみのない全体プロセス設計をする必要があります。導入後、仮説検証する体制を作り、経営者や責任者は、現場から毎週のようにレポートを上げさせ、現場を見に行き、全体としてどこを改善したらいいかを見きわめていくことが重要です。
最後に
ロボット導入を検討するにあたっては、まずは自社の未来像を描き、ロボットを入れることにより、将来的に売上げが上がるのか、収益力が上がるのか、持続性のある強みになるのかを見きわめていただきたいと思います。
講師紹介
ソフトバンクロボティクス株式会社
顧問 兼 ロジスティクス本部長他(JMFI理事)
松浦 学(まつうら まなぶ)氏
大手コンビニ本部にて商品開発、広告販促、全社業務改革やCRMに基づくSCM改革など多くのプロジェクトを率い、また郵政民営化に関するプロジェクトや海外法人の経営再建なども手掛けてきた。海外で起業。2014年最大手インテリア企業の役員就任。併せてデジタル&ロジスティクスを掲げ、グループのロジスティクス会社社長就任。ITやロボット等、新技術を次々と日本初導入、通販も担う。更に新規事業や販売量の平準化など業界革新に奔走してきた。2018年4月退任。現在、製薬メーカー、カフェチェーンの改革や大手通信系会社のロジスティクス企業の立ち上げに参画中。
募集要項
イベント名 | 第60回CREフォーラム|EC・ロジスティクスのこれから ~ロジスティクス戦争の未来~ |
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日時 | 2019年 12月4日(水) 14:30開場 15:00開始 16:40終了 |
会場 |
虎ノ門ツインビルディング西棟地下1階 東京都港区虎ノ門2-10-1 |
参加対象者 | 荷主・物流企業 様 |
参加費/定員 | 無料/70名限定 (定員数を超えた場合、申し込み期限前でも終了する場合があります) |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティングチーム
- 担当:
- 石原圭子(イシハラ) 近藤玲奈(コンドウ)
- メール:
- leasing_mail@cre-jpn.com
- 電話:
- 03-5572-6604