(レポート)ベトナム在住の講師が語る!コロナ禍のベトナムへの投資事情 ~製造業における北部・中部への投資事例を交えて~
ベトナムにおける産業集積と投資動向
ベトナムのGDP成長率は、2019年まで7%前後で推移していましたが、コロナ禍で2%台にまで低下しました。しかしIMFの予測によると、2022年以降は6%程度まで回復する見込みです。
また以前は、外国企業による直接投資と輸出が経済成長を支えてきましたが、近年は内需も成長要因になっています。
海外からの直接投資は、コロナ禍でも大きく減少しませんでした。製造業への投資が約6割となっており、ベトナムは引き続き製造拠点として位置付けられています。
製造業におけるFDIを見てみると、コロナ禍で入国が難しい状況が続いたこともあってか、新規投資を追加投資が上回っています。すでに進出している企業の増設が近年の特徴といえるでしょう。
出資国ごとのFDI(2021年)を見てみると、投資額はシンガポールが1位、日本が2位となっています。また新規投資件数では、韓国、シンガポールがトップ2でした。
ベトナムの国土は南北に細長く、北のハノイと南のホーチミンをどう結んで流通させるかがポイントとなります。
特徴として、北部は中国から材料を調達し、おもに電気電子や二輪・四輪を組み立てて輸出しており、南部は内需狙いの企業が多いといえます。
材料調達先と輸出先、現地市場を狙うかどうかが、ベトナムのどこに進出するかを決める要因になります。
ベトナムにおける投資には現在、懸念材料がひとつあります。それは為替推移の変化で、2020年4月以降、ドン高傾向に転じていることです。
円ドンで見ると、2021年3月末は1円210ドンほどでしたが、現在(2020年3月末)は1円184ドンで、かなり円安になっており注視が必要です。
近年の北部および中部への投資事例
より具体的な投資状況を見てみましょう。
北部は、四輪・二輪系のサプライヤーがハノイ市の西側周辺に多く、電気電子系のサプライヤーはハイフォン市からハノイ市にかけての地域に多いのが特徴です。またハノイの南方のナムディン省などでは、縫製企業や縫製機械メーカーが集積しています。
今後は、より安い労働力と労働者確保を目指して、北中部のゲアン省やタンホア省などへの投資が行われるのではと考えています。
また、内需が好調なベトナム国内での販売拡大を図るため、住宅設備関連の工場増設の動きも見られます。
コロナ禍でのベトナム国内消費の変化、ECの拡大
次にベトナムの国内消費の変化を見てみましょう。
まず小売りおよびEコマースの状況ですが、2021年から2025年まで、小売市場の成長率は5%程度で推移すると予測されています。
一方でEコマースの成長率は16.9%で推移すると見られており、中でもファッション関係や美容製品、食料・飲料などが伸びています。
ただ、ベトナムの成長は堅調だと言われていますが、今後は伸びる分野と伸びない分野が明確に分かれていくと思います。
その理由はおもに少子化で、2017年以降、人口の成長率は年々減少しています。アパレルを例に出すと、婦人服などは今後も伸びていきますが、子ども服の市場規模は2025年をピークに減少に転じると予測されています。
次に地域別消費者の動向を見てみましょう。北部の人々は、他人や医師などの専門家のアドバイスに従って購入する傾向があり、南部の人々は、製品の機能などを見て、自分の意見で購入する傾向にあります。
ベトナム国内物流の現状とコロナ禍での変化
前述したように、ベトナムの国土は南北に細長く、北のハノイと南のホーチミンをどう結んで流通させるかがポイントとなります。
中でも南北間の物流は、国道1号線による陸上輸送がおもな手段なのですが、輸送需要の偏りから、双方向での輸送コストに約1.5倍の差が出ており、片荷問題が起きています。
ベトナム国内物流における次の課題はコールドチェーンの整備です。
水産物加工の多い南部や消費地であるホーチミン市周辺などは冷凍倉庫が整備されていますが、北部含めその他のエリアは冷凍冷蔵倉庫やコールドチェーンの整備は遅れています。
コロナ禍で、Eコマースでも生鮮食品の販売が行われるようになりましたが、一部ではまだ常温での輸送も見られます。
そのEコマースに関しては現在、ShopeeやTIKIなどのプレイヤーたちが、輸送手段や倉庫などの自社物流網に積極的に投資を行っています。またEC製品の配送や代引きを行うローカル系物流会社が成長し、小型トラックや倉庫設備・管理システムへの投資も拡大。Eコマースの拡大とともに近代化が進んでいる状況です。
講師紹介
Yamada Consulting & Spire Vietnam Co., Ltd.
(山田コンサルティンググループ株式会社 ベトナム現地法人)
General Director
淺野 英治(あさの えいじ)氏
日系都市銀行でベトナム、フィリピンを中心に日系企業の海外進出を支援。ベトナム滞在歴も長く、多数の現地企業とのM&A、提携の実績を有する。
その後大手コンサルティング会社を経て2017年より山田コンサルティングに参加。2018年6月よりベトナム法人代表、2019年6月よりハノイ支店長を兼務。
募集要項
イベント名 | 第79回CREフォーラム「ベトナム在住の講師が語る! コロナ禍のベトナムへの投資事情 ~製造業における北部・中部への投資事例を交えて~」 |
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日時 | 2022年3月23日(水) 16:00~17:00 |
会場 | オンライン受講(Zoom) |
参加対象者 | 荷主・物流企業 様 |
参加費/定員 | 参加費無料 / 定員100名 |
本件に関するお問合せ
- お問合せ先:
- 株式会社シーアールイー マーケティングチーム
- 担当:
- 立原(タチハラ)
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