(レポート)株式会社フェリシモの送料値上げ対策と置き配JVCの取り組み

CREフォーラム レポート
株式会社フェリシモ

(レポート)株式会社フェリシモの送料値上げ対策と置き配JVCの取り組み

株式会社フェリシモ 新事業開発本部 副本部長
株式会社LOCCO 取締役
市橋 邦弘 氏

フェリシモについて

フェリシモは1965年に創業したダイレクトマーケティングの会社で、連結売上高は296億円(2024年2月期)です。1998年に総合物流・情報施設「エスパスフェリシモ」を開設し、2006年には東京証券取引所第二部に上場、翌2007年に一部に指定されました。また今年の4月にリニューアルオープンした神戸ポートタワーの運営も行っています。

物流2024問題とは?

2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働が年間960時間に上限規制され、労働時間が短縮されました。この規制により、ドライバーの働き方が大きく変わり、輸送能力が低下する懸念が生じています。このまま対策を講じなければ、例えば長距離輸送や夜間配送など、一部の輸送が困難になり、2030年には日本の物流全体の約35%が滞るという試算もあります。この状況は、経済活動全体に大きな影響を与える可能性があり、『物流2024問題』と呼ばれています。

この背景にはEC市場の急成長があります。ECの市場規模はこの10年で2倍近くになり、それにともない宅配便の取り扱い数も増加。2009年度が30億個だったのに対し、2022年度は50億個にまで増えました。この数字は大手宅配事業社を利用しない大手ECの取り扱いを含んでいないので、実際はもっと数が多いと考えられます。

一方で、ドライバーの数は減少しています。ドライバーの数は1995年の98万人をピークに減少しており、2025年は58万人、2030年は52万人になるといわれています。

ドライバーが減少する理由は高齢化、低賃金、長時間労働などの影響が考えられています。ドライバー減少の結果、 ドライバーの有効求人倍率は全職業よりも2倍ほど高い状態が続いています。

物流2024問題の打開策としては、ドライバーの待遇改善が必要で、労働基準法改定にともない、ドライバーの拘束時間が減り、代わりに休息時間が増えました。しかしこの結果、1日に運べる荷物の量が減り、物流会社の売上・利益が減少、ドライバーの収入減少へとつながってしまっています。

この状況に対応すべく、業務の合理化・労働時間の改善やワークシェアなどを業界全体で取り組む必要があるといわれています。

物流2024年問題で予想される荷主側の影響

物流2024年問題により、荷主側には以下の影響が出るといわれています。

1. 配送料金の値上げ
2. 荷物引き取り時間の切り上げ
3. 総量規制(荷受け個数制限)
4. n日配達エリアの縮小 

今回は1の「配送料金の値上げ」について、当社の取り組みをご紹介します。

フェリシモ定期便を例に挙げると、お客さま負担送料の推移は以下のとおりです。

また、当社以外の送料設定は以下のようになっています。

送料が値上げされるコストが上がり、利益が減ります。小売業界のおける売上高営業利益率は平均2.1%といわれておりますが、販売費の中で大きなウエイトを占める送料が値上げされると、会社の営業利益に大きな影響が出ます。売上の10%程度を占めるといわれる物流コストが10%上がると、売上高営業利益率が半分くらいに減ってしまいます。

当社は、2017年の物流クライシス時には、下記のような送料値上げ対策を検討しました。

・持ち込み(集荷から)……運送会社さまに来てもらうのではなく、当社から運送会社さまに荷物を持ち込む
・資材の見直し(全体コスト)……ダンボール箱や緩衝材などの資材を見直す
・配送業者の見直し(地域別)……地域ごとに最適な運送業者さまを選ぶ
・商品個装の見直し(サイズ)……商品の個装サイズを見直す
・お届け箱サイズダウン(圧縮)……120サイズから100サイズにするなど、お届け箱のサイズダウンを図る
・郵パケット郵メールの活用……ポストに入るサイズで送ることで送料を下げる
・ご注文金額別送料の見直し……送料無料のハードルを見直す
・再配達不要先にお届け(置き配)……置き配にすることで送料を下げる
・商品別送料設定……160サイズなど大物商品に関して送料を別途設定する
・郵パケットビジネス(共同配送)……共同配送を行い、輸送を効率化する
・ラストワンマイルベンチャー……お客さまを運び手にし、置き配でラストワンマイルをお届けする
 

フェリシモにおける物流2024年問題対策 ①共同配送(輸送の効率化)

物流2024年問題に向けて当社が行っているおもな対策は「共同配送」「宅配のJVC」「置き配の推進」の3つです。

「共同配送」は、当社の配送センターから荷物を送るときに、他社さまの荷物も一緒に送る形で行っています。自社配送センターの波動対策で生まれる余剰リソースを活用して複数の荷主さまを誘致しています。

当社の物流規模を10とした場合、1~2の規模感で共同配送を行っています。現在は10社前後の荷主さまと共同配送を行っており、自社荷物+他社荷物で積載効率を高め、物流コストの一部をサービス原価に振り替えることで、売上、利益増に貢献しています。

具体的な共同配送の進め方は以下のとおりです。

当社の配送センターのAPIをオープン化することで、他社さまの製品も自社製品と同じように在庫管理し、販売チャネルごとの配送指示に合わせて梱包し、共同配送しています。

フェリシモにおける物流2024年問題対策 ②宅配のJVC(運び手の確保)

「宅配のJVC」は、ジョイントベンチャーカンパニーを使った「運び手を確保するシステム」です。

セイノーラストワンマイル株式会社、株式会社フェリシモの2社が出資し、株式会社LOCCOを運営しています。お客さまを運び手にし、置き配でラストワンマイルをお届けする仕組みを組織化しました。

具体的な事業内容は「物流版のコミュニケーションインフラ」で、置き配を専門にしたサービスを提供しています。

従来の宅配便は1荷物1伝票で出荷から配達完了まで行いますが、LOCCOは荷主から荷物を集荷するときに、複数の荷物をひとつの折りたたみコンテナ/カゴテナーにまとめたうえで幹線輸送しコストを削減。各地域のデポに着店した後は、地域の方々が隙間時間を活用して配送を行います。

この仕組みは、当社が利用するだけではなく、同業他社や地域と連携し、開放的で公共性の高い物流プラットホーム構築へとつなげていきたいと考えています。そのメリットは以下のとおりです。

・共同輸配送、ラストワンマイル集約による積載・配送効率向上
・置き配による、再配達削減
・共同輸配送による適切な運賃の提供
・社会課題解決と業界の効率化や環境に貢献する多様な運び方の提供
・荷主さま、着荷主さまの潜在ニーズの発掘
・アイドルタイムを利用した新たな運び手の発掘 

実際、当社がLOCCOを導入した結果、配送料金を10%削減、再配達率を2.8%に減少(業界平均11.8%)することができました。また杉の木約4000本分のCO2を削減する効果もありました。

フェリシモにおける物流2024年問題対策 ③置き配の推進(再配達の削減)

置き配にすることで再配達を減らし、配送料のコストを削減することができます。そこで当社では「置き配の推進」にも力を入れています。

具体的には、LOCCOの対象エリアのお客さまに向けて、メールDMで置き配のメリットをご紹介し、注文フォームに置き配サービスの誘導バナーを設置しています。

お客さまが「置き配お申し込み番号」で注文をすると、LOCCOからメールが届くので、玄関前/宅配ボックス/個別指定場所から置き配をする場所を指定。荷物が届いたら、20分以内に写真付き完了メールが届く仕組みです。

置き配を促進した結果、2024年5月現在、置き配の選択注文数は月間3万件程度、置き配選択注文率は20数%(対象エリア内)、置き配選択注文率は50%弱(対象エリア内Web注文分)となりました。また置き配を選んだお客さまにアンケートを取ったところ、満足度は92%、 置き配継続希望は89%でした。

フェリシモは物流2024年問題対策として、「共同配送」による輸送効率化、地域の方々がラストワンマイルを担う「運び手の確保」、 再配達を削減する「置き配推進」に取り組んでいます。今後も自社以外の物流の最適化や、新たな運び手の確保、再配達削減に取り組んでいきたいと考えています。

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■講師
株式会社フェリシモ 新事業開発本部 副本部長
株式会社LOCCO 取締役
市橋 邦弘 氏

募集要項

イベント名 7/25 オンライン:株式会社フェリシモの送料値上げ対策と置き配JVCの取り組み
日時 2024年7月25日(木) 16:00~17:00
会場 オンライン受講(Zoom)
参加対象者 荷主企業・物流部門 、物流企業、EC事業者 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
担当:
浅沼(アサヌマ)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048
 
 

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