(レポート)2025年、物流持続可能化の条件!~迫る2024年問題「運命の日」、新物効法とEX/DX/GX~

CREフォーラム レポート
エルテックラボ

(レポート)2025年、物流持続可能化の条件!~迫る2024年問題「運命の日」、新物効法とEX/DX/GX~

エルテックラボ 代表
物流ジャーナリスト
菊田 一郎 氏

物流2024年問題「運命の日」と新物効法の省令展望

2024年度より改善基準告示の改正に基づき、営業用トラック輸送における1年の拘束時間の上限が「原則3300時間」に見直されました。

これを機に輸送能力が不足する「物流2024年問題」が顕在化することになりましたが、その背景には、そもそも構造的な人手不足問題があります。生産年齢人口はこの四半世紀の間に1300万人減り、2021年に7450万人になりました。推計では、2065年には4529万人まで減るとされています。

この恒常的な人手不足時代において、物流を持続可能にするにはどうすればよいでしょうか。そのための重要施策として、私はホワイト物流による従業員体験の革新(EX2)、物流DX、グリーン物流(GX)の3つを提示しています。

物流2024年問題の影響は大きく、2030年度までの物流需要ギャップの推計を合わせると、輸送能力の34.1%(9.4億トン)が不足する可能性が指摘されています。

また、物流2024年問題の危機は2024年に訪れるのではありません。運命の日は2025年に訪れます。なぜなら、時間外労働時間の上限規制が2024年4月から「年間960時間」になりましたが、年度の起算日が4月の会社であれば、2025年の1月から2月までにこの960時間を使い果たし、年度末となる3月の繁忙期に残業できないドライバーが続出する可能性があるからです。

不足するのはドライバーだけでなく、現場作業者も同様です。
では、この危機を回避するために、何をしなければならないのでしょうか。

物流企業については、ドライバーや現場作業者を確保し、維持・定着させなければなりません。そのために賃金アップ、待遇・労働環境改善、職場の心理的安全性向上を実行するとともに、自動化、省力化、デジタル化で3Kブラック現場を脱却し、ホワイト化を図る必要があります。

そして荷主企業は、運んでくれる物流企業に「選ばれる荷主」 になる必要があります。そのために運賃アップに対応し、物流企業を対等なパートナーとして協働しなければなりません。

政府も改正物流効率化法で、複数荷主の貨物の積合せや配送の共同化など、多くの規制的施策を展開しています。2024年11月に発表された「取りまとめ案」では、おもに下記の目標達成に向けた努力義務が荷主・物流事業者に課されます。

・日本全体の5割の運行で、1運行あたりの荷待ち・荷役等の時間を2時間以内に削減する
・日本全体の5割の車両で、積載効率50%を実現する
・全車の平均積載効率は、38%→44%へ改善
・トラック輸送効率化において荷主・物流事業者が行うべきことは「積載効率の向上」
・荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮 

働く人の環境保全/ホワイト物流で人手不足危機を克服

物流を持続可能にするためには、ホワイト物流による従業員体験の革新(EX2)、物流DX、グリーン物流(GX)が必要です。

この中のひとつ、EX2は私の造語ですが、「Employee eXperience Transformation」、つまり従業員体験の改革を意味し、労務経営施策の改革で人材確保・定着率向上を目指すことです。

具体的には、賃金をアップし、ハラスメントを排除・撲滅して安心して働ける職場、尊厳・誇りをもって働ける職場に変えなければいけません。そしてマテハン活用、自動化・ロボット化(物流現場DX)を導入して労働環境を改善することが重要。こうすることで従業員満足(ES)がサービス品質・顧客満足(CS)と収益の向上につながります。これを「SPC理論」といいます。

もうひとつ、「心理的安全性」も重要で、チームの誰もが非難される不安を感じることなく、自分の考えや気持ちを率直に発言でき、行動に移せる環境づくりが必要。心理的安全性の高いチームは 信頼の絆で結ばれ、より生産性の高い仕事をこなし、収益拡大に貢献することが実証されています。これは企業内だけでなく、荷主と物流企業の取引関係においてもいえることです。

物流現場DXと失敗回避の勘所≒自動化・デジタル化

物流現場における自動化の対象は、ASKUL社の作成した以下の図に分かりやすく示されています。

ブルー部分が自動化済みで、グレー部分は人手に頼っています。

同社の最新の自動化事例としては、たとえばギークプラスの自動搬送ロボットシステム「PopPick」があります。これは棚搬送ロボットが、大量のコンテナを備えた大型コンテナ収納ラックをPopPickステーションまで運び、出庫商品のコンテナを自動的に作業員の手元まで届けるシステムで、ピッキング作業の効率性と正確性が飛躍的に向上し、物流プロセス全体の最適化を実現します。

また化粧品などのEC企業オルビスでは、ピッキング支援搬送ロボット「Tキャリーシステム(TCS)」を330台導入しています。小型AGV1台に1オーダーを割り当て、群制御でステージを周回。注文品のあるステーションのみに寄り、人がデジタルピックした商品を受け、梱包ラインへ運びます。これにより作業員は約3割減、出荷コストは約2割減を達成しました。

自動化の注意点としては、「すごい機械を導入するだけでは、全体のパフォーマンスは上がらない」ということです。ある会社は、ロボット自動倉庫を導入したはいいが、その部分だけ性能が上がり、次の梱包ラインが混んでボトルネックになってしまったそうです。前後のバランスが非常に重要です。

GXマストの理由と物流グリーン化の喫緊施策

なぜ、物流GXが今すぐ必要なのでしょうか。地球温暖化を抑制し、気温上昇を1.5℃以下に抑えるためには、あと4000億トン分の累積CO2排出量しか残されていません。それは2019年時点の話で、以後5年が経過した今では、残る「炭素予算」は約2000億トンしかないと考えられます。。
このままでは2029年までに枯渇してしまい、それが定着すれば気温上昇は1.5℃を超えるといわれています。

物流GX/EXの具体策は以下のとおりです。本気で進めないと間に合いません。

①目標と計画
CO2排出量見える化サービスなどを活用し、自社のGHG排出量を算定し、削減目標を決める

②Scope1
トラック車両・船舶をBEVやFCEVなどに切り替え、輸配送・保管を共同化して便数を削減する
※BEV:バッテリー式
※FCEV:燃料電池式

③Scope2
使用電力を再エネ電力契約に切り替える。また、自前または「PPAサービス」で再エネ発電設備を導入する

④Scope3
取引先企業にも以上の推進を要請する
 

17のゴールを2030年までに達成しようとするSDGsは、以上のEX/DX/GXも包含している人類社会の最高位目標です。働く人と物流を持続可能にし、人と経済・物流がよって立つ社会を持続可能にし、社会の基盤と地球環境を守っていかなければなりません。

エルテックラボ 代表/物流ジャーナリスト 菊田 一郎 氏

募集要項

日時 2024年12月19日(木) 16:00~17:10
会場 オンライン受講(Zoom)
参加対象者 荷主企業、物流企業、運送会社 様
参加費/定員 参加費無料 / 定員100名

本件に関するお問合せ

お問合せ先:
株式会社シーアールイー マーケティング部
担当:
杉本(スギモト)
メール:
leasing_mail@cre-jpn.com
電話:
03-5570-8048
 
 

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