金融

ベトナムの通貨「ドン」について解説

ベトナムの通貨「ドン」について解説

ベトナム国内では「ドン(VND)」という通貨が使われています。昨今の世界的な円安傾向にともない、ドンに対して円の価値は相対的に下落しており、日本からベトナムへの海外投資を進めるうえで大きな障害となっています。

本記事では、ベトナムの通貨であるドンの特徴や、今後の展望について詳しく解説していきます。

ベトナムの通貨「ドン」とは

過去5年間のレートの推移にもあるように、ドンは「ドルに対しては安い」「円に対しては高い」という値動きを示しています。5年前のレートと比較すると、ドルに対して約15%安(1ドル23,000ドン→26,300ドン)、円に対して約20%高(1円210ドン→163ドン)になります。

ドンは変動の激しい東南アジアの通貨の中でも、比較的レートが安定していると言われています。これは貿易収支の悪化がある中でも、政府や中央銀行の介入により、急激な暴落が抑えられているためです。

次からはドンの特徴について、詳しく見ていきましょう。

ベトナムの通貨「ドン」の特徴

ドンは管理フロート制や高い預金金利など、円とは異なる特徴がある通貨です。ここでは、ドンの特徴について詳しく解説していきます。

管理フロート制を採用

ベトナムでは国内の為替市場を管理するため、中国と同様の「管理フロート制」が導入されています。管理フロート制とは、政府や中央銀行が為替相場の決定に関与し、通貨の変動幅を一定範囲に固定・管理する制度のことです。

ベトナムでは、毎日公示される中心レートの上下5%の範囲内での取引が認められます。例えば「1ドル=26,000ドン」という中心レートが公示された場合、銀行や企業間、街の両替所では、上下5%の「1ドル=24,700ドン〜27,300ドン」で取引しなければなりません。

こうした上下5%の範囲内で取引するルールに加え、政情不安や市場のパニック時には、中央銀行による直接介入の仕組みがセットで機能します。万が一、レートがこの境界線を超えそうになった場合は、中央銀行が保有するドルを市場に大量に売り出すなどの介入(ドル売り・ドン買い)を実行する仕組みです。

この2段階の対策によって、ドンの急激な暴落や混乱が未然に防がれています。

銀行では高い預金金利が設定

2026年3月には、ベトナムの銀行では最高9%の定期預金金利が設定されました。この9%は2026年の政策金利「4.5%」を大幅に上回る数字です。

民間銀行の主な資金調達方法には「中央銀行からの借入」と「一般からの預金」の2つがあります。一般的に預金金利は政策金利より低く設定される傾向がありますが、現在は逆転現象が起こっている状況です。その背景には以下が挙げられます。

・中央銀行からは厳しい枠制限がある
・企業への貸出金利が12%〜15%と高水準
・企業へ貸し出すための資金を十分に調達できていない

つまり、市場の現金不足と企業の旺盛な資金需要が反映された結果、高い預金金利が設定されているといえます。

外貨に依存する経済

ベトナムのGDPは製造業が20%超の割合を示していますが、その実態は海外企業による加工組立が中心です。輸入総額は「電子部品・コンピューター関連」が約22.7%、「機械・設備関連」が約12.4%を占めている点からも、海外から部品を輸入して組み立て、再び海外へ輸出する、加工組立拠点としての役割が強いことがわかります。

そうした輸入品の支払いは、通常ドルが用いられます。つまり、決済がドル建てであるため、為替が「ドン安ドル高」に傾くと、同じものを輸入するためにより多くのドンが必要になります。そのため、自国通貨の価値が下落すると輸入コストが一気に跳ね上がり、経済全体を圧迫してしまうという側面もあります。

自国通貨への信頼度が低い

ベトナムでは、過去に深刻なインフレを経験した経験から、自国通貨への信頼度は低い状態が続いています。1980年代後半に数百パーセントに達したハイパーインフレや、2008年の資源高によるインフレで価値が暴落した強烈な記憶があり、現在でも自国通貨であるドンへの信頼度は高くありません。

こうした傾向は、特に中高年層や富裕層によく見られます。そのため、ドンで銀行に預けるのではなく、価値が安定したドルや実物資産のゴールドに替えて保管する文化が深く根付いています。

ベトナムの通貨「ドン」の今後

ドンの価値はここ数年の間安定している一方で、経済は外貨に依存し、過去のインフレの歴史から国民の信頼を得られていない現状があります。ここでは、ドンの今後の展望について詳しく見ていきましょう。

円安ドン高は継続見込み

過去5年間の為替チャートを振り返ると「円安・ドン高」のトレンドが続いています。2026年に入ってからもこの傾向に歯止めはかかっておらず、今後も継続するという見方が一般的です。

日本政府・日銀は2026年4月から5月にかけて、総額11兆7,349億円の断続的な為替介入(円買い・ドル売り)を実施しました。しかし、為替介入は一時的な効果しか得られておらず、根本的な金融環境に変化がない限り、トレンドが大きく反転する可能性は低いと考えられます。

ベトナム投資の二極化

円安ドン高のトレンドにより、ベトナムへ進出する日系企業は現地での事業コストや調達負担が増大し、厳しい環境を強いられています。製造業やIT業を中心に、事業縮小・撤退を始めている企業も少なくありません。

その一方で、ベトナム国内市場をターゲットとする企業や、製品を日本以外へ輸出する企業にとってはチャンスとなっています。同じベトナムへの投資であっても、企業の事業モデルやターゲット層によって明暗が分かれる、二極化の構図が鮮明になっています。

まとめ

ベトナムの通貨であるドンは、ここ数年間ドン安ドル高、ドン高円安の傾向を示しています。昨今の状況を踏まえても、今後も同様の流れが続くという見方が一般的です。

日系企業においては厳しい状況が続いており、縮小・撤退を行うケースも目立つようになりました。そうした状況から、今後は日本市場ではなく、ベトナム国内や海外市場に目を向ける企業が増えると考えられるでしょう。

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