ベトナム鉄道は“眠れるインフラ”か
──物流と人流を変える次の一手
東南アジアの中でも、ひときわ高い経済成長を続けるベトナムです。その陰で、長らく存在感を発揮できずにいたインフラがあります、それが鉄道です。トラック輸送と港湾を軸に発展してきた同国の物流において、鉄道は“脇役”に甘んじてきました。しかし今、この構図が静かに変わり始めています。
老朽化した鉄道網という現実
ベトナムの鉄道は、南北を結ぶ約1,700kmの幹線を中心に構成されています。この南北鉄道はハノイからホーチミンまでを縦断しますが、輸送速度や利便性の面では必ずしも高い評価を得ているとは言えません。
その要因は明確で、インフラの老朽化と構造的な制約となっています。単線区間が多く、列車のすれ違い待ちによる遅延が発生しやすい状況と考えられ、軌道規格の違いも貨物輸送の効率化を阻んできました。結果として、鉄道は「時間がかかる」「利用しにくい」といった評価が定着しているのも背景にあります。
物流構造を変えるポテンシャル
それでも鉄道が再び注目されている理由は、物流需要の急増にあります。経済成長とともに貨物量が拡大する中、トラック輸送への依存だけでは、コストや輸送効率の面で限界が見え始めています。
特に北部から南部への長距離輸送では、時間とコストの両面で課題が顕在化しているため、ここで鉄道の役割が見直されています。鉄道は大量輸送と安定性に優れており、一定の条件が整えば、長距離輸送の一部を担う現実的な選択肢となり得えます。
さらに、中国との接続性も重要な論点となるのが、北部では既に鉄道による越境輸送が行われており、これが拡張されれば、ベトナムは「中国+1」の製造拠点として、より強固な物流基盤を持つことになります。モーダルシフトが進めば、物流コストの最適化だけでなく、環境負荷の低減という副次的な効果も期待できると考えます。
人の移動も変わる
鉄道の進化は、物流だけでなく人の流れにも影響を与えており、都市間移動の主役は航空機や長距離バスですが、鉄道の高速化が実現すれば、その構図は変わる可能性があります。
特にハノイ~ホーチミン間の移動時間が短縮されれば、国内の経済圏はより密接に結びつくことが容易に予想されます。ビジネス機会の拡大に加え、観光需要の活性化にもつながり、鉄道は単なる移動手段ではなく、経済の血流そのものを変えるインフラであると言えます。
動き出した国家プロジェクト
こうした背景のもと、ベトナム政府は鉄道分野への投資を本格化させています。その象徴が南北高速鉄道計画です。総投資額は数兆円規模とされ、国家の将来を左右するプロジェクトとして位置付けられています。
加えて、日本や中国をはじめとする海外パートナーとの連携も視野に入っており、技術面・資金面の双方で国際協力が進む可能性が高く、既存路線の改修と新規高速路線の整備が並行して進めば、鉄道の位置付けは大きく変わることになります。
“使われるインフラ”になるか
もっとも、課題は依然として多く、巨額の投資負担、用地取得の難航、技術選定といったハードルは決して低くないと考えられます。計画が想定通りに進まないリスクも現実的に存在しています。
それでも、もし鉄道が実用的な輸送手段として再生すれば、ベトナムの物流構造は大きく転換するため、トラック依存からの脱却、国際物流の強化、そして都市間の距離感の縮小、その影響は広範囲に及ぶと考えられます。
鉄道は長らく“眠れるインフラ”でしたが、ようやく再評価の段階に入っています。次の10年で、この国の物流と人流がどこまで変わるのか、その変化の中心にあるのは、間違いなく鉄道であると言えます。
~おまけ~ ハイフォン-ハノイ間の鉄道移動
ここからはベトナム出張時に移動手段としてベトナム鉄道を利用し、ハイフォンからハノイまでの移動を行った体験談です。通常はドライバー付きのカーハイヤー利用しますが、今回鉄道が1つの移動手段となるかを検証しました。事前にネット調査とホテル受付で確認を取り、電車の出発時刻表を確認し、当日朝の駅でチケットを購入しました。(ネットでの事前購入あり)受付はベトナム語のみで、身振り手振りで説明し、価格は18万VNドン(約1,000円程度)、他の席は15万VNドン、10万VNドン(約900円~600円程度)であった。内装はアンティーク調で伝統的な家具で、最近リニューアルしたばかり。約2時間でハノイ駅まで到着しました。道中、ゆっくり走行でトラックに追い抜かれる場面もありましたが、渋滞もなくハノイ市内地まで到着出来るので、特に市内へのアクセスとしては移動手段としては選択肢になると感じました。