金融

インドネシアの消費者金融市場

インドネシアの消費者金融市場

15歳以上のインドネシア人で銀行口座を持つ人は*約56.3%で、世界平均の*78.7%を大きく下回る数字です。こうした背景もあり、銀行の窓口や審査がなく、スマートフォン一つで融資の申し込みまで完結するデジタル金融サービスは、現在インドネシア国内で広がりを見せています。

本記事では、インドネシアの消費者金融市場の現状と課題、日系企業の参入動向について解説していきます。

*出典:世界銀行Global Findex 2025

インドネシアの消費者金融市場の現状

インドネシアでは、まとまったお金が必要になった際、親族や知人の間で貸し借りをする文化が根強く残っています。冠婚葬祭や学費など大きな支出が発生する場面では、こうした身内間の融通が長らく機能してきました。

しかし近年は、インターネットやスマートフォンの普及によって、企業から手軽にお金を借りられる環境が整いつつあります。また、近年はECサイトでの買い物も拡大しており、各社が後払いサービスを展開するなど、新しい借り方が急速に浸透しています。

デジタル経済の拡大が市場を後押し

VISAはインドネシア人の90%以上がデジタルウォレットを利用している、という調査結果を発表しています。銀行口座保有率は世界平均を下回り、クレジットカードの保有者も6%程度に限られる中、キャッシュレス化は幅広い世代に広がり、モバイル決済やデジタル金融が一気に普及する形になりました。

人口約2.8億人という規模と若年層の多さから、金融サービスの潜在需要は非常に大きいとみられています。この需要を取り込む形で、OVOやAkulakuといった国内企業に加え、三井住友銀行が株主のBTPNやクレディセゾンなど外資系企業も、モバイル送金や公共料金の支払い、個人事業主向けの融資サービスなどの展開を拡大しています。

個人向けネット融資の残高は前年比2割超の伸び

インドネシアの金融庁(OJK)の統計によると、個人間で資金を貸し借りするネット融資サービスの残高は、2025年9月時点で約90兆ルピア、2026年3月には100兆ルピアを突破しました。たった半年ほどで10%超の残高を増やしている状況です。

利用者は19〜34歳の若年層が中心です。銀行の融資審査に通りにくい層や、正規雇用に就いていない層にとって、スマートフォン一つで完結するデジタル金融サービスは身近な選択肢になりつつあります。

後払い決済サービスの利用が急拡大

ShopeeやTokopediaなどECプラットフォームが、自社の金融部門を通じて提供する後払い決済サービスの利用を拡大しています。市場規模は2025年に約85.9億ドルで、2030年には約135.9億ドルまで拡大すると予測されています。

ECでの買い物時にその場で支払い方法を選べる手軽さが、若年層を中心に支持されている理由です。特にクレジットカードを持たない層が多いこの世代にとっては、他の決済手段にはない独自の強みとなっています。

消費者金融市場が抱える課題

急速な市場拡大の裏で、返済能力を超えた借り入れという新たな問題も生まれています。ここでは、具体的な課題を解説していきます。

多重債務問題が深刻化

低所得層を中心に、複数のオンライン融資・後払いサービスを併用し、多重債務に陥るケースが社会問題化しています。借入の何倍もの支払いをすることになってしまったケースも少なくありません。また、返済が滞った利用者に対する厳しい取り立てといった点も指摘されています。

借り入れのハードルの低さは市場拡大の大きな要因である一方、返済能力を超えやすいという側面もあります。市場が急拡大する中で、健全性の確保と法的な整備が追いついておらず、課題として浮かび上がっている状況です。

金融庁が後払いサービスの規制を強化

こうした課題を受け、金融庁(OJK)は後払いサービスに関する新規則を2025年12月15日から施行しました。また、2027年1月1日から、利用者は18歳以上または既婚者であることに加え、月収300万ルピア(約3万円)以上の証明が新たに義務付けられます。

今まで比較的緩やかだった与信基準に、年齢や収入という具体的な条件が加わった形です。こうした規制は、市場の急拡大を支えてきた利便性の高さに、一定の歯止めをかける可能性があります。

日系企業の動向と今後

規制強化が進む一方、市場そのものの成長性は依然として高く評価されています。ここでは、日系企業の動向と今後について解説します。

クレディセゾンがインドネシアに進出

日系企業ではクレディセゾンが2015年にインドネシアへ進出し、中小企業や個人事業主向け融資を展開してきました。クレディセゾンは配車サービスを提供するグラブとも提携し、インドネシアを始めシンガポール、フィリピン、ベトナムなど計6カ国で事業を展開しています。

事業としては運転手や加盟店、消費者に対し、グラブが持つ利用データを活用して融資を組み込む形でサービスを提供しているのが特徴です。インドネシアの消費者金融市場では、地場のフィンテック企業だけでなく、外資系企業も交えた競争が続いています。

年平均20%以上の成長率を維持する見込み

インドネシアのフィンテック市場は、今後も年平均20%以上の成長率を維持する見込みです。近年はネット融資サービスだけでなく、デジタル保険や資産運用といった新興分野も拡大が見込まれています。

2026年7月の新規制導入は、市場の勢いを止めるというより、無理な貸し付けを減らしながら成長を続けるための調整という見方もできます。今後は規制の枠内でいかに健全にサービスを広げられるかが、各社の競争力を左右していくことになりそうです。

まとめ

インドネシアの消費者金融市場は、デジタル経済の拡大とともに急成長を続けており、ネット融資や後払い決済の残高はいずれも強い伸びを示しています。一方で多重債務問題が社会問題化し、2026年7月に金融庁による規制強化も始まったところです。

市場の成長性は今後も維持される見通しですが、規制環境の変化を踏まえた事業設計が求められる局面に入っているといえるでしょう。日系企業にとっても、健全な与信管理を前提とした参入戦略が重要になってきています。

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