インドネシアのパティンバン港とその周辺地域の開発状況について
現在建設が進むパティンバン港は、インドネシアの首都であるジャカルタの東120kmに位置する港です。日本のODAの一環として開発される港であり、2025年末を目処に竣工する見通しです。
既存の港湾設備では限界を迎えているジャワ島において、パティンバン港は新たな貿易、物流拠点としての役割を果たすことが期待されています。
本記事では、パティンバン港とその周辺地域の開発状況について詳しく解説していきます。
インドネシアのパティンバン港とは

パティンバン港はタンジュンプリオク港の混雑を解消するために建設されています。
タンジュンプリオク港は19世紀末より開発が行われ、現在ジャワ島内の物流において重要な役割を果たしている港です。しかし、経済発展につれて貨物量が増加し、港湾内や周辺では慢性的に混雑が発生しています。
タンジュンプリオク港を沖合へ拡張する計画も練られていましたが、用地不足や軟弱な地盤などの要因が重なり、思うようには進みませんでした。そうした状況の中、2017年1月当時にジョコ・ウィドド大統領と安倍総理との間で、都市圏の新たな港としてパティンバン港の建設に関する協力に合意し、日本のODAによる円借款事業として着手することとなりました。
現在のパティンバン港の開発状況
ここでは、現在のパティンバン港の開発状況を解説していきます。
2025年末に本格稼働予定のプロジェクト
パティンバン港は2025年末に本格的に稼働を始める予定です。
2025年のインドネシア全体のコンテナ需要は「1,024万TEU」が予想されており、既存のタンジュンプリオク港の年間取扱可能量「863万TEU」では対応できなくなる見込みです。また、周辺では渋滞も発生しており、一刻も早い貨物交通量の分散が求められています。
すでにカーターミナルが一部稼働
2018年8月にパティンバン港の第1期工事が着工し、2021年12月からは車の出入庫のためのカーターミナルが一部稼働しています。カーターミナルは、豊田通商グループの100%出資会社であるパティンバン・インターナショナル・カーターミナルが運営しています。
2023年のインドネシア全体の完成車輸出台数は50万5,134台、その内パティンバン港からの台数は12万4,594台でした。すでに25%近い割合を占めており、国内の車産業において重要な役割を果たしています。
日系企業が多く開発に携わっている
パティンバン港の建設工事は、五洋建設や東亜建設工業、東洋建設、りんかい日産建設など多くの日系企業が携わっています。これらの建設会社は、港湾のODA工事を始め、石油化学やプラント関連工事、日系の工場建築など、インドネシア国内での実績が豊富です。
パティンバン港の近くには日系製造業が多く拠点を構えています。竣工後は、輸出入や物流において大きなメリットが見込まれることでしょう。
パティンバン港周辺の道路網の建設が進む
パティンバン港は港湾内だけでなく、交通環境も整備されています。
現時点の交通インフラでは、今後急増が見込まれる需要に対応することは困難です。現在はJICAの「パティンバンアクセス有料道路建設事業」によって高速道路の新設工事が行われており、2025年2月頃までに完成する予定です。
インドネシアのパティンバン港の今後
次に、インドネシアのパティンバン港の今後を紹介していきます。
トラックやコンテナ車の交通量が飛躍的に増加する見込み
パティンバン港の完成によって貨物が分散され、周辺地域ではトラックやコンテナ車の交通量が飛躍的に増加する見込みです。
現在、タンジュンプリオク港の周辺や首都圏の高速道路では、慢性的な交通渋滞が大きな問題となっています。2023年には、ジャカルタは世界で30番目に渋滞がひどい都市に選ばれており、円滑な物流の妨げになっています。
パティンバン港の完成により交通負担が軽減され、物流の効率化やコスト削減につながることが期待されています。
2027年に完工予定
2025年1月現在、パティンバン港はstep2の開発期間にあり、カーターミナルとコンテナターミナル拡張が行われています。2027年内には完工する予定であり、将来的にはコンテナ取扱い量750万TEU、完成自動車の取扱い量60万台を見込んでいます。
日系企業では五洋建設と東洋建設、りんかい日産建設の3社JVによる*パッケージ6 コンテナターミナルNo.2 建設工事が行われており、2025年10月に竣工予定です。
*パッケージとは、プロジェクト全体をいくつかの工程に分割すること。パッケージ6はパティンバン港開発事業の第一期工事では、パッケージ1〜9まで存在する。
日系企業の輸出・物流効率の向上
パティンバン港からジャカルタへ続く道には「MM2100」「Jababeka」「GIIC」など、日系企業が進出する工業団地が多くあり、輸出・物流効率の向上が見込めます。
周辺では新しい工業団地の建設も進み、交通インフラの整備も加速する見通しです。今後、輸出拠点としての重要性が一層高まることになるでしょう。
まとめ
パティンバン港は、タンジュンプリオク港に次ぐ規模を誇り、インドネシアの物流と貿易を支える重要な拠点となります。建設途中には新型コロナによる人員、作業時間の制限があった中で、概ね予定通り工事は進行しています。
インドネシアに進出している日系製造業の会社は約871社と非常に多いです。2027年に控えるパティンバン港の完工によって、さらなる発展が期待できることでしょう。