ベトナムのハイフォンに直撃した台風「ヤギ」被害状況とその影響
2024年9月にベトナムに台風3号(日本では11号)「ヤギ」が到来し、ベトナム北部を中心に大きな被害を与えました。ヤギはベトナムで30年に一度と呼ばれるほどの規模の台風であり、多くの日系企業が事業に支障をきたすことになりました。
本記事では、ベトナムのハイフォンに直撃した台風「ヤギ」の被害状況とその影響について、詳しく解説していきます。
ベトナムのハイフォンに直撃した台風「ヤギ」とは

台風ヤギは、2024年9月7日の午前中にベトナム北部の街ハイフォン市に上陸しました。米軍合同台風警報センターの階級では最強レベルの「スーパー台風」と評価され、上陸後はハイフォン市やハイズオン市、ハノイ市を中心に大きな被害を与えました。
在ベトナム日本大使館の集計によると、9月13日時点で日系企業169社に被害があり、そのうち少なくとも72社は事業活動に支障が生じたようです。
ヤギはハイフォン市、ハノイ市を通過した後に勢力を弱め、8日正午には熱帯低気圧へと変わっています。
この見出しでは、ヤギによる被害や経済的な影響について解説していきます。
経済損失は81.5兆VND
台風ヤギによる経済損失は81.5兆VND(約4,890億円)に達しており、製造や農業、小売、物流など、さまざまな業種に影響を与えました。
被害はクアンニン省(ハロン市など)が最も大きく、次いでハイフォン市、ハイズオン省(ハイズオン市など)、ラオカイ省(サパなど)と続きます。こうした被害を受けて、農業農村開発省のレ・ミン・ホアン大臣は「大規模な自然災害への対応計画は不完全である」と述べ、災害に対する対策不足を指摘しました。
死者は299人、行方不明者は34人に
台風ヤギによる死者は299人、行方不明者は34人となりました。被害者の多くは、山間部で自然条件が悪く、土砂崩れや鉄砲水などの被害が多かったラオカイ省やカオバン省などに集中していたようです。
ベトナムは比較的天災による影響が少ない国ですが、今回の台風では過去に前例のないほどの被害が出ています。
ベトナム北部を中心に冠水や停電が発生
台風ヤギによって、ベトナム北部全域で停電や洪水、土砂崩れなどの被害がありました。ハノイ市の東に流れるホン川の水位は10.54mの警戒レベル2に達し、低地のハイバーチュン区やタイホー区、ホアンキエム区などでは冠水や停電が確認されています。
また、被害があったのはベトナムだけではありません。ラオスやミャンマー、タイの一部でも浸水・洪水被害が発生しています。こうした被害は、ヤギ通過後も断続的に雨が降り続けたことも原因の一つとされています。
ベトナムのハイフォンに直撃した台風「ヤギ」の復旧状況
ここでは、台風ヤギ通過後の復旧状況について紹介していきます。
1週間程度で工場は復旧
大きな被害を及ぼした台風ヤギですが、多くの工場は1週間程度で復旧しました。ハイフォン市内の14工業団地では、9月15日時点でほぼすべてが通常生産を再開しています。
しかし、ハイフォン市に隣接するクアンニン省の工業団地では、150の工場のうち少なくとも20が数週間操業停止になっています。屋根が飛ばされたり壁が破れて、場内が浸水した場合には、特に復旧までに時間がかかっているようです。
台風を受けて対策を強化
ハイフォン市は、今回の被害を受けて企業での対話を実施し、自然災害に向けた対策を行う意向を示しました。今後は、浸水の可能性がある地域での防災訓練の実施や水道システム改善、緊急時の電力供給計画の策定などを実施していきます。
山間部では被害が色濃く残る
ラオカイ省やカオバン省など山間部でアクセスの悪い村は、ハイフォン市やハノイ市など都市部と比較して復旧作業が遅れています。山間部の地域は農業が盛んですが、鉄砲水によって田んぼ20万2,094ha、畑3万9,298ha、果樹園2万2,300haが冠水、水産養殖ケージ1848基が流され、来年以降の生産にも影響が出る見込みです。
国連児童基金(UNICEF)は、ベトナムでは1,607の学校が被災し、学校閉鎖や教材・学用品の喪失により、96万人以上の子どもが学習に支障が生じていると発表しています。こうした流れを受けて、国連児童基金(UNICEF)は各国政府やパートナーと協力し、一刻も早い生活の再建を目指して支援活動を続けています。
※国連児童基金(UNICEF):開発途上国の子どもや母親に長期の人道援助や開発援助を行う組織
日本政府は400万ドルの緊急無償資金協力を実施
日本政府は台風ヤギの被災者を対象とした、緊急無償資金協力を実施しました。具体的な内容は以下の通りです。
ベトナム
国際移住機関(IOM):一時的避難施設・非食料援助物資(100万ドル)
国連児童基金(UNICEF):水・衛生、子どもの保護(100万ドル)
ミャンマー
国連世界食糧計画(WFP):食料(100万ドル)
国連児童基金UNICEF):水・衛生、子どもの保護(100万ドル)
これらの資金は、水と衛生物資の配布、給水システムの復旧などに用いられます。
まとめ
台風ヤギは甚大な被害をもたらし、通過から2ヶ月半を経た現在でも復旧作業が続いている地域があります。
今回の災害によってインフラの弱点が浮き彫りとなりました。今後ベトナムが外資企業の誘致を進めるためには、災害対策を実施し地域のインフラ基盤を強化する取り組みが重要となるでしょう。