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ベトナムと米国との相互関税交渉について

ベトナムと米国との相互関税交渉について

2025年4月2日、トランプ大統領は輸入するすべての製品に最大50%の相互関税をかけると発表しました。この発表は世界の経済に大きな混乱を招き、各国の首相が電話会談を行い、代表団を現地に派遣するなど対応に追われています。

今回の記事では、ベトナムと米国との相互関税交渉の概要や今後の展望について解説していきます。

ベトナムと米国の相互関税とは

相互関税とは、貿易を行う2か国間に平等の税率を課すことです。国の利益を守り、公平な貿易を行うために実施される施策で、ベトナムには他国と比較しても高い「46%」の税率が設定されました。

ベトナムにとって、米国は中国と並ぶ貿易の重要国の一つです。輸入額より輸出額が圧倒的に大きく、米国の対ベトナム貿易赤字 は「1,235億ドル(約18兆円)」と全体の3位を記録しています。つまり、関税の増加はその利益を圧迫することにつながります。

結果的に、4月9日に相互関税の発動は90日間の延期が発表されました。執筆時点の5月17日は延期期間の中にあり、各国は対応に迫られています。

次からはベトナムと米国の相互関税についてより詳しく解説していきます。

ベトナムと米国の相互関税交渉とは

前述の通り、米国はベトナムに対して46%の関税を発表しました。この数値はタイの36%、インドネシアの32%、マレーシアの24%と、他の東南アジア諸国と比較しても高いです。

この数値は相手国との貿易赤字額を米国への輸出額で割り、それを2で割るというシンプルな方法で算出しています。米国にとって貿易赤字額が大きい国ほど数値は大きくなっており、トランプ氏はベトナムについて「悪質な国」とも表現しています。

ここでは、両国の相互関税交渉の現状を紹介していきます。

ナイキやフォックスコンなど複数の米国企業が進出

ベトナム国内には大手スポーツブランドのナイキや、ジーンズブランドのリーバイス、iPhoneの組み立てを行うフォックスコンなど、さまざまな米国企業が製造拠点を置いています。ベトナムで製造され、米国に出荷されるものには、46%の相互関税が課される見込みです。

ベトナムはチャイナリスクを懸念した国が進出する「チャイナプラスワン」として人気のある国です。ベトナムに進出している米国企業に大きな影響を与えることになり、拠点の移管や規模の縮小が進む可能性があります。

ベトナム政府は米国に対して保留を要請

相互関税が発表されて各国が対応に動く中で、2025年4月4 日、ベトナムのラム党書記長はトランプ大統領と電話会談を行いました。ラム党書記長は、米国からの輸入品に対する関税をゼロに引き下げる、ベトナムへの投資をさらに促す用意があることなどを表明しています。

この電話会談について、トランプ大統領は自身のSNSにも投稿し、「非常に有益な会談を行った」「近い将来の会談を楽しみにしていると伝えた」と発言しています。

米国との2か国間貿易協定の交渉開始に合意を発表

2025年4月9日、ベトナム政府は米国との2国間貿易協定の交渉開始に合意したと発表しました。ベトナムのホー・ドゥク・フォック副首相は、9〜10日に米国通商代表部のジェミソン・グリア代表やスコット・ベッセント財務長官と対談し、両国発展に向けて協議することを確認しています。

しかし、4月7日に米国は中国製品の迂回輸出や、知的財産の盗用、付加価値税(VAT)などを問題視しており、トランプ政権のピーター・ナバロ上級顧問は「ベトナムの提案は不十分である」と発言し、さらなる対応を求めています。

ベトナムと米国との相互関税交渉の今後

ここでは、ベトナムと米国との相互関税交渉の今後の展望について解説していきます。

中国との調整が争点

ベトナムは米国との貿易において重要なパートナーである一方で、中国との関係性にも配慮する必要があります。ベトナムにとって中国は最大の輸入相手国であり、経済的にも大きく依存しています。

中国の製品がベトナム経由で米国へ迂回輸出されるケースも少なくありません。米中の対立が激化する中で、ベトナムはどちらにも偏りすぎない中立的な外交が求められています。

5月7日に1回目の相互関税交渉を実施

ベトナム政府は対米技術交流代表団を結成し、5月7日に初の交渉セッションを実施しました。ベトナムは、相互関税問題に関する優先交渉対象6か国(英国、インド、韓国、日本、インドネシア)の1つであり、首相は慎重かつ迅速に交渉準備を進めるよう指導したと発言しています。

また、この交渉では、高関税回避に向けて自国を経由した中国製品の対米輸出の取り締まり強化を米政府に提案しています。今後、中国に対する姿勢は厳しく見られていくことになるでしょう。

知的財産の侵害や付加価値税も懸念材料に

米国はベトナムを含む東南アジア諸国に対し、知的財産の侵害や技術盗用のリスクを懸念しています。米国企業が持ち込んだ技術やデザインが現地で流用される事例が指摘されており、競争力の低下とブランドイメージ毀損の要因となっています。

また、付加価値税(VAT)制度も指摘されている項目の一つです。現地の取引で発生する付加価値税は、輸入時に課税され輸出時に還付されます。付加価値税のない(Sales Taxは存在する)米国から見れば輸出企業への実質的な補助金のようなものであり、是正を求めています。

まとめ

ベトナムの米国向けの輸出額は全体の3割を超えており、非常に重要な位置付けにある国です。執筆時点の5月17日にはまだ具体的な結論は出ておらず、今後の動きが注目されています。

また、ベトナムはもう一つの貿易重要国である中国に対しての配慮も求められます。今後の交渉動向によっては、ベトナム経済に大きな影響を与える可能性があるため、政府は米中両国とのバランスを見極めながら慎重に対応していく必要があるでしょう。

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