ベトナムEC市場の状況と乗り越えるべき参入障壁
参入障壁が他のアジア諸国より高いと言われるベトナム EC市場について、最新の状況をお伝えします。また越境ECにはどのような問題点や解決策があるか、事例を交えてご紹介します。
ベトナムEC市場の現状

まず、ベトナムでのEC利用率やネット環境などを概観してみましょう。
EC利用率はアジア諸国の中でも高水準
2019年の調査では、ベトナムの EC利用率は77%、インターネット普及率は66%と、いずれも世界平均を超えており、EC利用率に関しては日本や韓国を上回っています。これは東南アジア諸国の中でも比較的高い水準であり、潜在的な越境ECニーズもあると考えられます。
また、日系企業による2020年のアンケート調査では、スマートフォンの保有率はほぼ100%に至っており(※1) 、多くの国民がEC利用可能な環境にあります。
※1:株式会社Fun Japan Communicationsによるアンケート調査。
調査方法はFUN! JAPAN会員へのアンケート、調査時期は2020年1月10日~2020年2月10日、サンプル数は1269件。
https://www.viet-jo.com/news/statistics/200309181431.html
国家主導の5G開発も順調、インターネット環境整備が進む
ネット環境については、2020年に国内通信事業者Viettelが初めて5G通信サービス運用を開始するなど、順調に発展しています。また、フリーWi-Fiサービスを提供する。
店舗が多く、個人契約をしていない人でもこれらの通信環境を簡単に利用することができます。
なお、2021年2月の時点で、ベトナムでアクセス回数の多いECサイトの1位は、シンガポール企業が運営するshopee.vn(ショッピーベトナム)で、2位は電子機器に特化したThegioididong、3位がベトナム発の企業が運営するTiki(ティキ)となっています(※2) 。
※2:The Map of E-commerce in Vietnam (https://iprice.vn/insights/mapofecommerce/en/)
なぜ売れない? ベトナムのEC市場の問題点
ただ、既にベトナムEC市場に参入した企業からは、想定ほど売れないという声も聞かれます。なぜなのでしょうか?
まず中国や韓国と比べた場合、ベトナムは距離が遠く、送料が高くなります。配送日数も長く、商品受け取りまでに2〜4週間程かかります。
また他のASEAN諸国と比較して、輸入の際のEPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)利用率の低さが目立ちます。通関手続きがわかりにくく煩雑なのが一因と言われていますが、こうしたことも問題です。
但し最近では、TPP11に基づき輸入化粧品の自由販売証明書が不要となるなど、輸入時の手続きが軽減される傾向が見られます。
障壁を乗り越える越境ECのための方策

こうした問題点を乗り越えて越境ECを行うためには、どのような方法があるのでしょうか。関税や法制度を確認し、EC市場における日系企業の参入事例を見てみましょう。
越境ECの方法と税制
ベトナムで越境ECを行う方法としては、大きく分けて以下の4つの選択肢があります。
①現地の既存ECモールに出店する
②日本から現地向け自社ECサイトを展開
③日本の既存現地向けECモールに出店する
④現地子会社を設立し、当該現地法人を通してECサイトを構築・展開
この中で、①〜③は日本国内のECサイトに出店する場合と、支払う税などに大きな違いはありません。ただし、④の現地子会社を設立してECサイトを構築する場合は、外国契約者税が課される可能性があります。
また、いずれの出店形態の場合でも、ベトナム国内への輸入の際は以下の税が課されます。
・ベトナムの税率に基づく関税
・付加価値税(VAT)
・特別消費税(ET)
アリババを利用した日系専門商社の参入事例
機械工具専門商社の植松商会は、中国ECサイト最大手のアリババを活用し、ベトナムへの販路を開拓しました。注目したいのは、顧客とのマッチングを目的に既存ECサイトへ出店した点です。実際の商談や取引はメール等で直接行い、決済もECサイト経由ではなく、前払いの銀行送金等で行っています。
既存ECサイトへの出店は、越境ECの方法として比較的ハードルが低いため、まずはこうした方法を取りつつ、顧客を開拓するのもEC市場に対して有効だと考えられます。
まとめ
EC利用率やネット環境の普及状況を見ると、ベトナムにおけるEC市場は、潜在的なニーズを秘めていると考えられます。顧客獲得には工夫や努力が必要ですが、手続きが省略されるなど事業環境は改善傾向にあり、ベトナム国内のECサイトも急激に発展しているので、越境ECを検討する価値は十分にあると言えます。