インドネシアの技能実習生事情
ここ数年間、日本全体の技能実習生の受け入れ数は増加傾向にあります。従来は中国人やベトナム人が高い割合を占めていましたが、最近ではインドネシア人の受け入れも増え始めています。
今回の記事では、インドネシアの技能実習生事情について、実際の数字や政府の取り組み、今後の課題を詳しく解説していきます。
インドネシアの技能実習生事情とは

2024年末の在留外国人の中で、インドネシア人は合計「199,824人」で、全体の割合は「5.3%」です。割合としては高くないものの、2014年末時点の「30,210人」からは6倍以上に増えており、日本への関心が高まっていることがわかります。
また、厚生労働省によると、2024年10月末時点で日本にいる外国人労働者(技能実習生含む)のうちインドネシア人は「169,539人」全体の割合に対しては「7.4%」でした。前年は「121,507人」であり、1年間で約39.5%増加したことになります。
技能実習生は、制度の目的である「技能の習得と母国への技術移転」に加えて、日本側の労働力確保の側面でも注目されていることも事実です。次からは、インドネシアからの技能実習生の受け入れ拡大の背景や課題を詳しく見ていきましょう。
技能実習生の数は7年間で10倍以上増加
技能実習生の認定件数は、2017年は「5,495件」でしたが、2024年6月末には「87,090件」となりました。6年間で10倍以上に増えており、今後も日本の人手不足や海外からの就労需要から、増加傾向が続く見込みです。
近年では「特定技能」の資格を持つ外国人も増加しています。特定技能とは、人材確保が困難な分野で、一定の技能を持つ外国人を受け入れる制度であり、2019年から導入されました。技能実習を終えて一度帰国した人が、再び日本に戻り特定技能者としての道を選ぶケースも増えています。
インドネシア政府も後押し
技能実習生制度は、インドネシア政府も後押しをしています。2019年6月に日本政府とインドネシア政府は、送出機関の認定を適切に行い、帰国した者が技能を活用できるよう支援をすることなどの覚書を交わしました。また、2024年9月には、イダ・ファウジヤ労働大臣が今後5年で25万人の労働者を送り出す目標を明らかにしています。
インドネシアは、2023年に特定技能者を約1万5千人送り出しています。2024年6月末 時点の特定技能者の合計「44,305人」は、ベトナム人の「126,740人」に次ぐ第2位の数字です
建設、食品製造系の仕事に就く人が多い
インドネシアの技能実習生は、一都五県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、群馬県)、大阪府、愛知県を中心として、建設や食品製造系の仕事に就く人が多いです。これは日本全国で人員不足が深刻な分野であり、今後も受け入れの拡大や現場での活躍が期待されています。
特定技能では、介護や農業、漁業などの従事する人の割合が高い点が特徴です。特定技能者が主力人材として活躍している会社も少なくありません。
地方部と都市部の収入格差が大きいことも影響
インドネシアには、17,000以上の島、6,000を超える有人島があり、地方部と都市部の収入格差は非常に大きいです。高収入の仕事の多くはジャカルタに集中しており、地理的な問題で仕事の選択肢が限られてしまう人も多いです。
こうした背景からも、地方出身者を中心に、海外で安定した収入を得られる技能実習制度に対する関心が高まっています。
他国と比較しても失踪が少ない
近年、技能実習生が勤務先から突然失踪することが問題となっています。2023年は技能実習生の失踪者数は9,753人でしたが、そのうちインドネシア人は「662人」で全体の割合は「0.8%」でした。
もっとも割合が高いのはミャンマー人「1,765人」「5.4%」で、次いでベトナム人「5,481人」「2.1%」です。こうした数字を比較してもインドネシアの割合は低く、一つの会社で勤め上げる人が多いことがわかります。
インドネシアの技能実習生の今後

ここでは、インドネシア人の技能実習生の今後の展望や懸念について紹介していきます。
技能実習生の数は増える見込み
前述の通り、政府の後押しもあり、インドネシアの技能実習生や特定技能者の数は今後も増える見込みです。日本の人手不足とインドネシアの経済事情がある中で、両国にとって重要な制度となることでしょう。
一方で、仕事内容や生活環境が合わず、技能実習制度の期間3年以内に帰国する人もいます。長期的な定着を実現するには、労働条件や生活環境の充実が求められます。
宗教や食習慣の違いへの懸念
インドネシアでは、国民の約9割がイスラム教徒です。イスラム教は日本ではあまり馴染みがなく、豚肉やアルコールを避けるハラル料理や、1日5回の礼拝といった習慣について、日本企業の理解が十分でないケースも少なくありません。
技能実習生が長期的に働ける環境を整えるためには、企業を含む地域全体が宗教や文化の違いを尊重することが重要です。双方の理解を深めることが、継続的な受け入れにつながるでしょう。
他国との間で日本が優位性を保てるかが焦点に
台湾や韓国も高齢化と少子化による人材不足に直面しており、労働者の確保が課題となっています。そのため、インドネシアを含む送り出し国にとっても、受け入れ先の選択肢は広がりつつあります。
日本が優位性を保つには、待遇や生活環境の改善、キャリアの形成につながる制度の設計が重要です。人手不足が深刻な地方では、外国人が地域社会に溶け込み、労働力としてだけでなく、地域を支える存在として大きな役割を果たしている事例も増えています。
まとめ
インドネシアから日本への技能実習生・特定技能人材は、ここ数年で大幅に増加しており、今後も拡大が見込まれています。失踪や、会社内・技能実習生同士のトラブルなどの課題が指摘されている一方で、これまでに多くの人材が日本の建設・製造・介護など幅広い分野で活躍してきたことも事実です。
今後より良い制度として発展していくためには、受け入れ体制の改善や双方の理解を深めることが重要になるでしょう。