【2025年10月】インドネシア首都移転の進捗
2022年1月にインドネシア政府が首都移転を宣言してから、3年半以上が経過しました。政府は順調に移転作業が進んでいることを強調する一方で、インドネシア国内からは計画の停滞を指摘する声も上がっています。
今回の記事では、2025年10月現在のインドネシア首都移転の進捗について解説していきます。
インドネシア首都移転とは

インドネシアの首都は、ジャカルタからヌサンタラへ移転される予定です。ヌサンタラは、ジャカルタから直線距離で1,200kmほど離れた、カリマンタン島にある地域です。
首都移転の主な理由としては、ジャカルタ一極集中による地震リスクや交通渋滞、大気汚染、地盤沈下などが挙げられます。ヌサンタラへの首都移転完了は2045年を予定しており、現在はインフラ整備や、マンションの建設が急ピッチで進んでいます。
しかし、思うように移転が進んでいない現状があります。当初は2024年8月に閣僚全員がヌサンタラで執務を開始する計画がありましたが、インフラ建設の遅れを理由に実現しませんでした。
現大統領のプラボヴォ氏は首都移転事業を継続し、2028年8月にはヌサンタラで執務を開始する意向を表明していますが、見通しは不透明な状況です。
インドネシア首都移転の進捗

ここでは、インドネシアの首都移転の進捗について詳しく紹介していきます。
現在は開発フェーズ2
2025年10月現在、インドネシアの首都移転は開発フェーズ2の段階にあります。開発フェーズは1〜5まであり、それぞれの概要は以下の通りです。

インドネシア政府は新首都開発に関して、総額最大486兆ルピア(約4兆3,740億円)の予算計画を立てています。このうち国家予算で19%を負担し、残りは民間企業の投資によって賄われる予定です。
インドネシア地場5法人が参画
2025年3月、国営建設のブランタス・アビプラヤ、ホテル運営会社プリ・プルサダ・ランプンなど合計5社が、ヌサンタラの開発へ参画することが発表されました。今後は、複合施設やオフィス、ホテル、大学などの建設や施設整備を進める見込みです。
インドネシア政府は、外資企業にも積極的な投資を呼びかけています。すでに中国やロシア、オーストラリアなど、複数の国々の企業の参入が発表されています。
2024年10月に日系企業団による視察会を実施
2024年10月には、日系企業23社によるヌサンタラへの視察会が実施されました。視察時点では官公庁関連工事は進んでいたものの、民間企業による工事はほぼ行われていなかったようです。
日系企業の視察会は2025年10月中にも計画されています。執筆時点で投資を表明している日系企業はありませんが、ヌサンタラの開発が進むにつれて、具体的な発表が行われる可能性があります。
2020~2024年に契約したプロジェクト数は109件
2020年〜24年に契約したプロジェクト数は109件、総額89兆700億ルピア(約8,000億円)でした。公共事業省によると、これらのプロジェクトの完工によって約2万人が受け入れ可能になるようです。
公務員向け集合住宅は47棟が建設済みで、そのうち29棟が入居できます。しかし、まだ十分ではなく、公共事業省は「さらなる誘致を呼び込むためには生活インフラの充実が求められる」と述べています。
計画の停滞を指摘する声も多い
2025年8月時点で、政府系の建物が集まる首都の中心部はほぼ完成しました。しかし、2024年8月より始まる予定だった公務員の移住は進んでおらず、人通りの少ない状況が続いています。
さらに、ヌサンタラの作業員の下宿先も、以前より空きが多くなっているようです。与党のナスデム党は「財政を圧迫しており、首都移転はいったん停止すべき」と述べていますが、現政権は引き続き開発を続ける方向性を示しています。
プラボウォ氏の首都移転対する姿勢
インドネシアの首都移転は、ジョコ前大統領の肝いりの政策でした。任期満了直前の2024年8月、首都移転宣言を行う予定でしたが、工事の遅れを理由にキャンセルしています。
引き継いだプラボウォ現大統領は、2028年8月には執務を開始する意向を示しています。しかし、現政権の目玉政策である無償給食が予算を圧迫しており、2025年の建設費は前年比65%の減となる見込みです。
インドネシア首都移転の今後
ここでは、インドネシアの首都移転計画の今後の展望を述べていきます。
今後も計画遅延が見込まれる
すでに建設・移住計画は遅れている上、首都移転の予算も減っています。外資企業の投資を呼びかけていますがいまだ十分ではなく、遅延を取り戻すことは容易ではないでしょう。
現在ジャカルタで働く公務員の移住意識も低いようです。新首都庁は「2024年8月に予定していた、公務員の大量移転の開始時期は改めて通知する」と述べていますが、まだ次の目処は立っていません。
2028年頃に大きな決断が下される可能性
プラボヴォ氏はジョコ前大統領の意向を引き継ぎ、移転に前向きな姿勢を示しています。現時点では移転計画を中止しない見込みですが、今後の進捗によっては2028年の大統領選を前に大きな決断がされる可能性があります。
また、予算の減少や他の政策を優先する姿勢を踏まえて、一部では「大統領は首都移転を優先していない」という声もあがっています。ヌサンタラの未来は依然として不透明であり、今後の政策判断が大きなカギを握ることになりそうです。
まとめ
首都移転先のヌサンタラにおいて、インドネシア法人の参画や外資企業の参入など、前向きな話もある一方で、計画の遅れを指摘する声も多くあります。今後、十分な資金を確保できない場合は、大幅な方針展開を迫られる可能性もあるでしょう。