ベトナムの地方再編により34省・市体制が始動
ベトナムは2025年に地方再編を実施し、もともと63あった省と市が34に統合されました。これは南北のベトナムを統一して省市を再編した、1976年に匹敵する大がかりな改革になります。
本記事では、ベトナムの地方再編が日系企業に対してどのような影響を与えたかを解説していきます。
ベトナムの地方再編とは
ここでは、ベトナムの地方再編の概要について紹介していきます。
2025年7月1日に63省と市が34に削減
ベトナムの地方再編は2025年7月1日に実施され、63省と市が34に削減されました。
◆合併した省と市
◆合併しなかった省と市
主要都市のダナン市やホーチミン市は合併をしてさらに大きくなった一方で、ハノイ市やフエ市は既存の体制のままとなりました。
業務効率の向上と経済発展の促進が目的
地方再編は省と市を統合して業務効率を高めることを主な目的として実施されます。公務員の数や行政運営費の削減が期待され、財政面での負担が軽減できます。
従来は公的機関の基準が地域ごとでバラバラであり、工期の延長や営業許可の遅延を招くことも少なくありませんでした。統合によって基準が統一化され、国内外の投資手続きを進めやすくなり、地域全体の活性化を促す効果が見込まれるでしょう。
12万9千人の人員が削減
今回の地方再編によって省庁が統合され、合計12万9千人の公務員が削減される予定です。削減した分は公共投資に回され、地域の発展やインフラの開発に用いられます。
ベトナムの公務員採用は戦争で功績を残した人の子孫が優遇される傾向にあり、能力が備わっていない人が採用されるケースも少なくありませんでした。今回の取り組みは単なる人員削減ではなく、質の高い組織を形成するためのものでもあります。
最低賃金の是正や海外からの投資を促す可能性
地方再編により、地域ごとに設定されている最低賃金の是正が進み、賃金水準が上昇する可能性があります。賃金水準の上昇によって地域経済が底上げされる上、知名度の高い省に統合されることで、海外からの投資を呼び込みやすくなる効果も期待できます。
さらに、今回は省庁だけでなく官庁の統廃合も進みました。以前は投資計画省が数年間の免税を認めても財政省が承認しない事例が見られましたが、今回の再編では両省が統合され手続きの一本化が図られています。統合によって不確実性が減少し、企業が事業を展開しやすい環境が整うことになるでしょう。
ベトナムの地方再編による日系企業への影響
続いて、ベトナムの地方再編が日系企業へどのような影響を与えたかを解説していきます。
行政手続きの遅延が発生
地方再編後の数ヶ月は、投資承認や労働許可証の発行といった行政手続きに遅延が生じていました。これは新担当者の知識不足や引き継ぎ不足、明確化されていない新ルールによって、手続きフローが一時的に停滞したことが原因です。
2025年11月時点では概ね遅延は解消されていますが、12月の年度末、または翌年2月に控えるテト(旧正月)に向けて、再び手続きが集中する可能性があります。テト期間は1週間ほど政府機関が休止するため、手続きが必要な方は早めに進めるようにしてください。
ホーチミン市が大きく拡張
今回の地方統合によって、特にホーチミン市が拡張しました。統合されたバリアブンタウ省は117万人、ビンズオン省は267万人の人口を有する中核都市でした。
従来は省・市によって投資許可や工場建設に関わる審査基準が統一されておらず、許認可取得に時間がかかるケースが多く見られました。今回の統合により、行政対応の一元化が進み工場新設や事業拡張の際の手続きがスムーズになることが期待できるでしょう。
統合後、ホーチミン市の人口は1,300万人以上となります。ホーチミン市はベトナムの経済・物流・都市開発の中心として、これまで以上に重要な役割を担うことが期待されています。
まとめ
今回の地方再編は、行政効率の向上や政策決定の迅速化、地域経済の底上げを目的として実施されました。まだ目に見える効果は得られていませんが、今後海外投資の促進や経済の活性化が進む効果が期待されています。
現時点で日系企業への影響は限定的であり、登記住所の変更など特別な手続きは求められていません。ただし、繁忙期に向けて手続きに遅延が生じる可能性があり、今後の政令や運用ガイドラインを継続的に確認することが重要です。