ベトナムの台風「Wipha(ウィパー)」の影響とハロン湾で起きた惨事について
ベトナムは南シナ海に広く海岸線を面しており、毎年台風による高波や洪水、暴風雨に見舞われます。特にインフラが十分に整っていない地域では、物流や通信、電力網に深刻な影響を及ぼすことが多くあります。
本記事では、2025年7月にベトナムで被害を及ぼした台風「Wipha(ウィパー)」と、ハロン湾で発生した惨事について詳しく解説していきます。
2025年7月にベトナムで発生した天災・事故について

2025年7月、ベトナムに到来した台風6号のWiphaと、ハロン湾での強風・暴風雨に伴う観光船の転覆という、2つの天災・事故が発生しました。台風Wiphaは、北部から中部にかけて広範囲に甚大な被害を及ぼし、工場の営業停止や物流の遅延などさまざまな産業に影響を及ぼしています。
ハロン湾で発生した観光船の転覆事故は、突発的な暴風が原因で、合計39名の死者が出てしまいました。この事故によって、運行体制に対して不信感が広がり、ハロン湾観光を取りやめた人も多くいたようです。
次からは、ベトナムで被害を及ぼした台風Wiphaと、ハロン湾での惨事を詳しく紹介していきます。
ベトナムの台風「Wipha(ウィパー)」の概要

ここでは、台風Wiphaの勢力や経路、具体的な被害内容について詳しく紹介していきます。
2025年7月21日〜23日にかけてベトナム北部を通過
台風Wiphaは、2025年7月22日の午後にハイフォンの南側より上陸し、23日にかけてナムディンとニンビンを通過しました。そして、24日にラオス北部の山地へ侵入した後に勢力を弱め、熱帯低気圧となっています。
特に被害が大きかったのは、ナムディンやニンビンをはじめ、ハイフォン、ゲアン、タンホア、フンイェンなどベトナム北部の都市です。ハノイは進路からわずかに逸れたため、洪水や大規模停電といった被害は回避されました。
レベル15の非常に強い台風
Wiphaは、気象庁の基準で『非常に強い』に分類されるレベル15の台風です。台風は中心付近の最大風速によって、以下の通りレベル分けされています。

レベル15はスーパータイフーンに分類される一歩前の勢力です。こうした点から、日本の外務省からもベトナム在住者に向けて注意喚起が出ています。
観光や物流に大きな影響
Wiphaによって飛行機が欠航し、ベトナム北部を中心に物流が遅延しました。ハノイ市内では、買いだめをする住民によって売り上げが急増した店舗が多くあったようです。
また、ゲアン省では屋根が吹き飛ばされる、ニンビン省では田んぼが広域にわたり冠水、フンイエン省では越水が発生し、42世帯が緊急避難するなどの被害が発生しました。被害は広範囲に及び、住民の生活や経済活動に打撃を与える結果となりました。
ハロン湾で起きた惨事の概要

次にハロン湾での転覆事故について紹介していきます。
2025年7月19日にハロン湾で船が転覆し39名が死亡
2025年7月19日午後2時頃にハロン湾で観光船が転覆し39名が死亡する、という事故が発生しました。当日は強風と大雨の天候の中、一部の乗客からは引き返すべきという声もありましたが、乗組員が無理に運航を続けたことが原因のようです。
ハロン湾は世界遺産にも登録されている有名な観光地です。海外からの観光客も多く訪れるこの観光地で起きた事故は、日本でも広く報じられています。
突然の事故で多くの人が室内に閉じ込められる
ハロン湾の転覆事故は、出港から約30分後に大きな波が船の右側を襲い、右から左に傾いた際に発生したと証言されています。乗客の多くはライフジャケットを着ていました。しかし、突然の事故で多くの人が客室やエンジン室に取り残されたことが、犠牲者が増えてしまった原因です。
なお、この事故は台風Wiphaとの直接的な関係はないとされています。しかし、この事故は観光船の安全管理や運行可否の判断、避難体制に大きな課題を残しました。
天災による影響
最後に台風Wiphaとハロン湾の転覆事故が発生した結果、どのような影響があったかを解説していきます。
ハロン湾クルーズへの参加者が大幅に減少
ハロン湾クルーズは、事故が発生した4日後の7月23日に再開したものの、大幅に観光客が減少しました。7月23日の来場者4,500人は通常の4分の1の数字であり、特にベトナム人観光客は少なかったようです。
7月24日以降も来場者数は徐々に回復しています。しかし、事故発生から心理的な不安が広がり、旅行会社からは最少催行人数を満たせずツアーが成立しないとの声も上がっています。
台風の影響で洪水や土砂崩れが発生
前述の通り、台風Wiphaによって一部のエリアでは洪水や土砂崩れが発生しましたが、多くは比較的軽微で短期間で復旧しました。2024年9月にベトナム北部へ到来した台風「ヤギ」よりは、全体として被害は小さめでした。
しかし、ベトナムは日本と異なりインフラ体制が十分とはいえず、復旧が遅れがちです。有事の際には物流や交通が一時的に混乱し、思わぬトラブルを招くことがあります。ベトナムを訪れる際は、このようなリスクを念頭に置いた行動が求められます。
まとめ
2025年7月には、同時期に自然災害と人災が重なり大きな被害をもたらしました。台風の被害は限定的でしたが、インフラの脆弱さや復旧の遅れといった課題が明らかになりました。
今後も自然災害の発生は十分に予想され、観光業や地域経済への影響は避けられません。ベトナムを訪れる際には、交通やインフラ面での不測の事態に備えることが求められるでしょう。