今回は物流拠点などの立地としての可能性や投資先としての魅力を中心に、発展目覚ましいハイズオン省の実情を探ります。
ハイズオン(Hai Duong)省の魅力 〜物流拠点として高まる可能性〜
ハイズオン(Hai Duong)省とはどんな所?
首都ハノイと港湾都市ハイフォンに挟まれ、ベトナム北部に位置するハイズオン省とはどのような地域なのでしょうか?
ハイズオン省の地理・歴史・文化
ハイズオン省はベトナムで最も歴史の長い地方の一つで、1,000点以上もの歴史遺産を有しています。ベトナム陳(チャン)朝の初代皇帝、チャン・フン・ダオ(Trần Hưng Đạo)など、多くの逸材を輩出した地としても有名です。西側のハノイ市と、東側の港湾都市であるハイフォン市を繋ぐ東西のルート上に位置します。
駐在拠点や飲食店があり、自然豊かなハイズオン省
ハイズオン省には駐在拠点となるサービスアパートメントがあり、飲食店なども点在しています。また、近年観光スポットとして注目される遺跡や神社、寺院などの歴史的建造物のほか、野鳥を観察できる湖など、大都市とは違った魅力も発見することができる場所です。
物流拠点としてのハイズオン省の魅力

ビジネスの観点から、ハイズオン省の魅力を解説します。
ハノイ市やハイフォン市、ハロン湾などへ好アクセス
ハイズオン省の省都であるハイズオン市からは、ハノイの中心部まで60キロ、ハイフォン市まで45キロ、ハロン湾から80キロの距離です。これらの都市部や工場地帯、そして港湾へのアクセスの良さは、物流拠点などとしてハイズオン省が恵まれた立地にあることを示しています。
ベトナム北部では生産拡大に伴い、輸送される物量が増加している
ハイズオン省を含む北部地域では、輸送物量が増加しています。この背景には工業生産の増加や、国民所得の向上による消費市場の拡大などがあり、こうした傾向は今後も続くと考えられます。そのためハイズオン省は、ハイフォンなどにある北部の工業団地からの物流拠点としても更なるニーズが見込まれているのです。
南北経済回廊に関わる交通の要衝
南北経済回廊とは、ハノイやハイフォンと中国の広州、香港を繋ぐ輸送ルートを指します。ハイズオン省は、この南北経済回廊の要衝です。ベトナムの対中貿易額は増加を辿っているため、トラック越境輸送の拠点としても有望な地域と言えるでしょう。
ハイフォンへ通じる橋が竣工、交通利便性も向上
2021年7月、ハイフォン市とハイズオン省を結ぶクアンタイン橋とジン橋が竣工しました。2本の橋の竣工により、同2省・市の各エリアを繋ぐ交通が便利になり、観光開発や経済発展にも繋がると期待されています。
投資先としてのハイズオン省の価値

工場や倉庫用地としての需要の増加に伴い、ハイズオン省は投資先としてもその人気が高まりつつあります。
借地料の高騰や用地の不足により、工場がハイズオン省などの地方へシフトしている
CBRE社によると、ハノイやホーチミン市から近隣省への工場移転が進んでいるとのことです。原因としては、ハノイやホーチミン市での工業用地の借地料は近隣省よりも高くなっている点が挙げられます。1平米当たりの借地料は、ホーチミン市では約180〜300米ドル、ハノイでは約175〜260米ドル。一方、ハイズオン省では約65〜95米ドル、ハイフォン市では約80〜125米ドルです。さらに、ハノイやホーチミン市では工業用地が枯渇し、借地率はホーチミン市で90.8%、ハノイで99%と不足傾向にあり、このことも地方への工場移転を加速させています 。
ハイズオン省、不動産投資が活発化
ハイズオン省への不動産投資も活発化しています。旅行者の増加や工業団地の拡大に伴い、コンドテル、オフィス、5つ星の商業施設などを併設する複合施設建設も計画されているということです。ベトナム計画投資省のまとめでは、ハイズオン省への外国直接投資(FDI)は2019年上半期(1~6月)に4億5,000万米ドルとなりました 。
米フォード、ハイズオン工場拡張に8200万米ドル投資へ
米自動車大手フォード・モーター傘下のフォード・ベトナムは2020年、北部ハイズオン省の生産拠点の拡張に8,200万米ドル(約1兆9,000億ドン超)を投資すると明らかにしました。拡張によりハイズオン工場の年産能力は現在の1万4,000台から4万台に拡大する見通しです 。
まとめ
ハイズオン省は都市部や港湾へのアクセスに優れており、ベトナムの発展に伴い特に北部地域で増している物流需要に応える物流拠点や投資先としての魅力に富んでいます。こうしたことから、今後工場や物流倉庫などの投資を検討する上で、ベトナム国内でも特に魅力的な地域だといえるでしょう。