新型コロナが流行した2020年以降、海運輸送費の高騰が進みました。輸送費の高騰に限らず、物流の遅延や船がなかなかブッキングできないことに頭を悩ましている方も多いのではないでしょうか。昨今の海運輸送費高騰の背景には、「コンテナの不足」があるとされています。今回の記事では、コンテナの不足が運賃高騰につながった理由や海運輸送費の動向を解説していきます。
コンテナ不足が招く海運輸送費の高騰 〜海運輸送の現状と今後の展望〜
近年の海運輸送費の推移

上の画像は「世界の工場」と呼ばれる中国から世界各国への海運輸送費のグラフです。
新型コロナ発生前の2019年と比較すると、北米東海岸向けで約5倍、北米西海岸・欧州向けで約2倍に高騰しているのがわかります。
冒頭でも述べたように、輸送費高騰の背景には「コンテナの不足」があります。次の見出しではそもそも、なぜコンテナが不足したかを見ていきましょう。
そもそも、なぜコンテナは不足しているのか
コンテナが不足している背景には、コロナ渦による人員不足が大きく関係しています。ここでは、人員不足によって起こった事象を紹介していきます。
港でコンテナの停滞
新型コロナにより港で働く人が減り、港に到着したコンテナが停滞し循環が行われていない現状があります。
もともとは、輸入地となる港についたら「14日以内」にコンテナの中の貨物を取り出し、返却するというルールがありました。しかし、港で勤務する人が減少したために、コンテナが放置され、返却することができていません。
さらに、海運会社も船を減便させたことも重なり、輸入地には手付かずのコンテナが残り、輸出地のコンテナが不足する事態に陥っています。
コンテナ生産量の低下

近年は、コンテナの生産量自体も低下しています。
世界で流通するコンテナの約98%は中国で生産されていますが、2018年以降「米中貿易摩擦」が発生し、主に米国向けの荷動きが低下していました。コンテナの生産にも影響し、2018年から2019年には約40%ほども生産量が低下しています。
そして、追い討ちをかけるように新型コロナが発生し、2020年は前年比から生産量がさらに下落する結果となってしまいました。
輸出量増加によりコンテナ需要が増加
2020年前半は世界的に景気が悪かったものの2020年後半はV字回復し、経済活動が活発になるとともに、コンテナの需要が大幅に増加しました。
先述したように、コンテナの生産力も下がる中で需要が増加したことで、動いているコンテナの取り合いになり、市場にさらなるコンテナ不足を招いています。
コンテナ不足と輸送費高騰の関連

ここからは、コンテナ不足と輸送費高騰がどのように関連しているかを見ていきましょう。
コンテナの停滞により港は混乱し、ブッキングが困難に
コンテナが停滞し市場にコンテナが出回らなくなったことで、輸送を行うコンテナ船も減少。結果的にブッキングが困難になり、運賃は高騰しました。
下記は、北米西岸港であるロサンゼルス(LA)港とロングビーチ(LB)港において、コンテナを下ろすために待機している船や、荷下ろしされたコンテナを運び出すまでの日数をまとめたものです。
■ コンテナ船の滞船数(コンテナを下ろすために待機している船の数)
2020年10月以降沖待ちコンテナ船が発生し始め,2021年2月1日に最大40隻に到達。その後改善を見せ、同年6月末時点では10隻を下回る日もあったものの、その後7月22日時点で29隻へと逆戻り。
■ コンテナターミナル内のコンテナ蔵置日数(荷降ろしされたコンテナがトラックで運び出されるまでの日数)
2020年6月は約2.5日であったのが、2021年1月では約5日と2倍に。その後減少に転じて改善が見られたものの、2021年5月から再び上昇し、同年6月では4.76日となっている。
■ コンテナがターミナルから鉄道で搬出されるまでの蔵置日数
2021年1月が7.9日であったのが、 2021年4月には12.4日に上昇。その後減少したものの再度上昇して、6月には11.8日となった。
2020年後半から、コンテナの循環が悪くなっているのは数値としても明らかです。
港での待機により、延滞料が発生
人員不足から、予定日になってもコンテナの納品や引き取りができない、また当日予定していた引き取りのキャンセルなどによって、延滞料が発生しています。
延滞することにより、海運会社の人件費や船の燃料費はもちろん、後の予定にも大きな影響が出てきます。船を延滞することによりかかるコストが、輸送費にも上乗せされていると考えられるでしょう。
今後のコンテナ供給と海運輸送費の展望
海運輸送費の高騰にはコンテナ不足が関係しており、コンテナ不足には新型コロナが大きく影響しています。新型コロナの状況はワクチンが普及したことで改善には向かっているものの、いまだ感染者の収束は見えない状況です。根本的な問題が解決されない限り、海運輸送費が平常に戻ることは難しい見込みです。
今後しばらくは高騰した状態が続くことが考えられます。
まとめ
今回の記事では、コンテナ不足が海運輸送費の高騰している理由を解説してきました。コンテナ不足は港の混乱を招き、輸送費の高騰へと繋がっています。
じゃがいもの供給不足によりマクドナルドの一部店舗でポテトのLサイズとMサイズの販売提供を一時停止、半導体の調達不足による工場の稼働の低下など、海運の問題は身近なところでも聞くようになってきました。輸送費の高騰は続く見込みであることから、輸出入に関するお仕事をされる方は、今後も注意深く動向を見守る必要があるといえるでしょう。