インフラ

インドネシアの交通インフラ(高速道路・鉄道)の開発状況

インドネシアは、国土面積は日本の5倍、人口は2億7,000万人で世界4位と、東南アジアのリーダーにとどまらない世界トップクラスの地力です。半面、島嶼(とうしょ)国として国土が1万3,466個の島に分断され、交通インフラも十分ではないというアキレス腱も存在します。

本記事では、インドネシアの陸上面の交通インフラ(高速道路・鉄道)の開発状況について紹介します。

インドネシアの交通インフラ(高速道路・鉄道)の開発状況

国際的プレゼンスを急速に増すインドネシア

インドネシアのGDPは、2022年4月現在、ASEAN第2位のタイに2倍の大差をつけています。G20(世界主要20ヵ国)にランクインしているのは、ASEANではインドネシアだけです。

2000年以降のGDP成長率は平均5%以上で推移し、2030年には日本に次ぐ世界第5位の経済大国になると予想されています。

インドネシアの高速道路の現状

飛ぶ鳥をおとす勢いのインドネシアですが、一方で「貧富の差の拡大」という大きな悩みがあります。GDPランキング世界16位のインドネシアも、一人当たりGDPとなると、世界平均を大きく下回っている状態です。その原因は、ジャカルタへの一極集中といわれます。

諸島間の交通が分断されるのは仕方がないにせよ、スマトラ島とジャワ島内における交通網も決して十分とはいえないのが現状です。

高速道路と高速鉄道はともに未整備で、経済効果がジャカルタから他の都市へ、ジャワ島から他の島へと波及するのを阻害してしまっています。

アジアハイウェイ計画

日本政府は、インドネシアに対する円借款供与および無償援助を長年に渡って実施してきました。日本からの国別の援助額は、インドネシアが長年1位でしたが、現在は中国が1位となっています。

巨額の援助は、資源国インドネシアから日本が石油・天然ガスの安定供給を受けるための見返りといわれています。

アジアハイウェイ計画は、日本からの円借款供与および無償援助を原資とする壮大なプロジェクトです。スマトラ島北端のバンダアチェから、スマトラ島とジャワ島を背骨のように貫通し、バリ島のデンパサールへと抜けます。

A.P.ペタラニ高架有料道路~NEXCO西日本が技術支援

A.P.ペタラニ高架有料道路は、2020年5月に開通した、スラウェシ島のマカッサル市における都市内高速道路です。

交通量の多いエリアに、高架橋を連続で建設する難度の高い工事で、日本のNEXCO西日本が技術支援を行ったことで注目を集めました。

モダ・ラヤ・テルパドゥ~インドネシアの高速鉄道計画

モダ・ラヤ・テルパドゥ(インドネシアの高速鉄道)は、日本の新幹線が受注し、2014年まで着々と計画が進められましたが、その後、中国に転注された、いわくつきのプロジェクトです。

高速鉄道・三国志

中国に転注された理由は、日本がインドネシア政府による高速鉄道公社への債務保証を要求したのに対し、中国は債務保証を要求しなかったためとされます。

時系列的には、ジョコ新大統領の就任直後に、転注が決定。その後、ジョコ大統領は、カリマンタン島への遷都を発表しているので、何らかの陰謀があると囁かれています。

日本と中国のいずれかに肩入れしすぎずに、権益争いを演じさせることで、30年後には自らが両国をしのぐ超大国になろうという野望があるのではないかとも言われます。

首都移転計画でちゃぶ台返し

カリマンタン島への遷都は、中国にとっても寝耳に水で、ジャワ島の高速鉄道は役割が低下し、黒字化の見通しがつかなくなってしまいました。

赤字しか生まないプロジェクトに対して、中国のやる気も後退し、計画は停滞。困ったインドネシア政府は、日本に再度の支援を依頼するも、転注に怒り心頭の菅内閣(当時)はこれを拒絶して、現在に至っています。

二大国を手玉に取ろうとしたインドネシア政府も思い通りにはいかないようです。

ジャカルタの都市鉄道(地下鉄)

ジャカルタ首都圏では、都市鉄道網とMRT(地下鉄)が整備されています。首都圏は、ジャカルタ首都特別州と4つの衛星都市群から構成されています。

日本から下取りした中古車両が、「蒲田」などの行先表示もそのまま使用されていることで有名です。

円借款ここでも

ジャカルタ首都圏のMRT(地下鉄)も、日本からの円借款を原資に建設されました。MRTの運営には、多くの日系企業が入札しましたが、MRT公社からの理不尽な減額要求により、日系企業各社に大きな赤字が生じました。

新幹線の受注に際して、日本側がインドネシア政府による債務保証にこだわったのは、このときの遺恨ともいわれています。

港について(タンジュンプリオク港とパティンバン新港)

経済成長による貨物量の増加により、タンジュンプリオク港が手狭となったため、パティンバン新港が建設されることになりました。
パティンバン新港の建設には、日本企業の高い造成技術が活用され、円借款による潤沢な資金をもとに、わずか3年という短期間で完成しています。

まとめ

ジョコ新大統領の登場により、インドネシア政府の国家戦略は大きな変貌を遂げました。

ジャカルタ中心の交通インフラ(高速道路・鉄道)の開発は、カリマンタン島への遷都計画により停滞しています。早ければ5年以内にアメリカを抜き、世界一のGDPとなる中国の台頭も、インドネシアをめぐるパワーバランスに影を落としています。

目下(2022年4月)の円安トレンドも、日本政府の円借款に誤算をもたらすでしょう。インドネシア・日本・中国の思惑が入り乱れる新たな時代の開幕です。

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