衣食住

インドネシア進出企業が「ラマダン」期間中に注意すべき3つのこと

ラマダンをご存じでしょうか? ラマダンとは、イスラム暦における断食月(ラマダン月)のことです。ラマダン月には、イスラム教徒は「日の出から日没まで」一切の飲食・喫煙・性行為が禁じられます。日中は一口の水すら飲めませんが、日が沈めばいくら食べても問題はありません。

イスラム暦は月の満ち欠けを元にするため、ラマダン月の日程は年によって異なり、2022年は、4月3日から5月3日まで実施されました。

インドネシアでは、国民の87%がイスラム教徒で、ラマダン月には多くの国民が一斉に断食を行います。それゆえ、会社の業務への影響は甚大です。本記事では、インドネシアに進出した日本企業が注意すべき3つのことについて紹介します。

インドネシア進出企業が「ラマダン」期間中に注意すべき3つのこと

なぜ断食をするのか?

イスラム教徒が断食をする理由を一言でいえば、「天国に行くため」です。多くの日本人には到底理解できない価値観かもしれません。しかし、国際社会で仕事をするうえでは知っておくべき考えのひとつといえるでしょう。

宗教的な説明と科学的な説明

イスラム教は、経典であるコーランに書かれている教義を守らないと天国に行けないとされています。そのため、イスラム教徒はコーランに書かれている教義を守ります。教義内容としては、断食のほか、豚肉やアルコールの禁止、1日5回の礼拝などが有名です。

断食は宗教的な観点だけでなく、科学的な意義もあります。

ラマダンの断食は、現在日本で流行している「16時間断食ダイエット」にも通じるプチ断食の健康的効果があるとされています。また、富める者も貧しき者も共に断食を行い、イスラム教徒同士の連帯感を高める、社会的効果も指摘されています。

それでは、本題のインドネシア進出企業が「ラマダン」期間中に注意すべき3つのこと」に入りましょう。

【注意点その1】ダイバーシティ

ラマダンは、インドネシアに進出した日本企業にとって、ダイバーシティ経営を学ぶ絶好の機会といえます。

ムスリムへの配慮と非ムスリムへの配慮

出典:宗教統計調査(2016)

盲点となりがちなのが、ラマダン中にムスリム(イスラム教徒)への配慮に気をとられすぎるあまり、非ムスリムへの配慮を忘れてしまうことです。

ラマダン期間中には、ムスリムは飲食・喫煙をしません。だからといって、非ムスリムの飲食・喫煙が不自由になると、彼らのストレスが溜まって、職場の人間関係がギスギスすることになります。

インドネシアでは国民の87%がイスラム教徒ですが、キリスト教徒も約10%と意外と多く、中国系には仏教徒もいることを忘れないで下さい。

勤務時間の配慮

朝から断食をすると、夕方には空腹でイライラしがちになり、集中力も低下します。そのため日系企業の多くは、7:30~16:30(もしくは8:00~17:00)の「早上がりシフト」に変更しています。

長期休暇の配慮

ラマダン月の最後の10日間には、故郷を持つ人のほとんどが実家に帰省します。そのため、インドネシア国内において、通常通りに生産活動や事業活動を行うことはほぼ不可能といってよいでしょう。

ボーナス支給時期の配慮

ボーナスは、ラマダン月の中間までに早めに支給をしてあげれば、従業員は余裕をもって帰省の準備をすることができます。

商機(ビジネスチャンス)

インドネシアでは、ラマダン月に帰省ラッシュとなり、キリスト教国でいうクリスマスからニューイヤーにあたる祝祭ムードに包まれます。ラマダン月の日没後には、家族みんなで豪勢な料理を食べるのが通例であるため、外食産業もかき入れ時となります。インドネシアでは、国民の購買量が最大となる月はラマダン月なのです。

ラマダン月の日没後の食事には、まずコップ一杯の水を口にします。これに目をつけた大塚製薬は、ポカリスエットを「水よりも体に良いラマダン用の飲み物」として売り出し、インドネシアで成功を収めました。

Facebookは、ラマダン月には商売気を抑えて、「家族」「コミュニティ」「感謝」「愛する人々との食事」「スフールとイフタール(ラマダン用の食べ物)」などを連想させるイメージ広告を出稿することを推奨しています。

かつて大塚製薬は、日本でカロリーメイトを「受験生用の食べ物」として売り出すことで、リバイバルヒットさせています。

既存の自社製品やサービスを「ラマダン用」として売り出すことはできないか、考えてみるのもよいでしょう。たとえば、ラマダン月には、帰省のための「資金」や「おみやげ」が入り用となるのが狙い目になります。

ただし、日本人の価値観だけだと的外れになりがちなので、イスラム教徒の意見を吸い上げるダイバーシティ経営を試みてください。

【注意点その2】健康

ラマダンの断食にはプチ断食の効果があるとされますが、これは正しく断食を行った場合の話です。実際には、断食前の朝と断食後の夜のドカ食いで、ラマダン中に肥満になるインドネシア人の方が多いとされています。

ラマダンの健康リスク

ラマダン中の健康リスクが最も大きいのが、糖尿病患者です。糖尿病患者が誤った断食を行うと、様々な合併症を引き起こします。

医者に相談なしで断食を行う、糖尿病のイスラム教徒は後を絶ちません。おせっかいかもしれませんが、人事部を通して糖尿病の従業員への正しい断食指導を行いましょう。

商機

ラマダン中の肥満対策になるような製品やサービスを提供すれば、喜ばれるはずです。たとえば、腹持ちのよいダイエットフード、栄養管理付きパーソナルジム、消費カロリー測定器などが考えられます。

【注意点その3】テロ

人の移動や集合が活発に行われるラマダン月は、テロリスト達の格好の標的となります。金曜日はイスラム教徒の集団礼拝日です。人が集まるラマダン月の金曜日には、モスク等の宗教施設や群衆を狙ったテロが行われることがあるので、注意が必要となります。

まとめ

米調査機関ピュー・リサーチ・センターの予測によれば、2070年には世界のイスラム教徒の数が、キリスト教徒の数を上回ります。イスラム教徒へのダイバーシティマネジメント/マーケティングを異教徒に比較的寛容なインドネシアでマスターし、全世界に横展開するのがグローバル経営の王道といえるでしょう。

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