2023年以降の国際物流事情 〜現在も続く新型コロナの影響〜
2022年は多くの国で規制が緩和されたことに伴い、国際物流も復活を遂げた年となりました。全世界的に物流量が増加し、港湾に人員が復帰し沖で荷下ろし待ちの船も減少するなど、明るいニュースが多く出てきています。
一方でスケジュールの遅延や、ウクライナ戦争が勃発し燃料費が高騰するなど、新たな課題も発生しています。
本記事では、2022年12月現在の国際物流事情と2023年以降の展望をまとめました。
2022年の国際物流事情

まずは、2022年の国際物流に関する重要なトピックを振り返っていきましょう。
多くの国で物流量が増加
2022年の物流量は中東14.6%増、アフリカ6.0%増(予測値、前年比)と、大きく増加する見込みとなっています。その他の地域でも、北米3.4%増、アジア2.9%増、欧州1.8%増、南米1.6%増とやや上昇率は低いものの、前年比ではプラスを維持しています。
新型コロナワクチンが普及し規制解除が行われ、物量は少しずつ戻りつつあると言える状況です。
中国では「ゼロコロナ」政策が実施
中国は2022年に入ってからも、厳しい「ゼロコロナ政策」を行っています。上海では5月から数ヶ月に渡りロックダウンを敢行し、食料品店や病院などへの移動を制限してきました。しかし、11月には感染報告者が3万人を超えているように、改善は見られていません。
そうした中、11月末から中国各地でゼロコロナ政策に反対するデモが行われ、規制を解除する動きが急速に広まります。その後間もなく中国国内の往来が許可されるようになり、公共の場で陰性証明書が求められることもなくなりました。
しかし、まだ完全な復活を遂げるにはいたらず、本格的な物流量が戻るには時間がかかりそうです。
沖待ちコンテナ船は減少もスケジュールは遅延傾向
2022年初め、米国の港湾では人員不足が原因で荷下ろしができず、沖で待機を強いられるコンテナ船が100隻以上いることもありました。その後、米国政府や港湾関係者が介入したことで6月には30隻ほどとなり、大きな改善が見られます。
しかし、需要の急増やウクライナ紛争勃発により航路の変更を余儀なくされることを理由に、スケジュール遅延も発生しています。現在は新型コロナとウクライナ紛争、両方の影響を受けている状況です。
米国では取り扱い量が減少
米国は2022年の春をピークに取り扱いコンテナ量が減少しています。米国ロサンゼルス港では10月は取引量が大幅に落ち込み、2009年以来の最低水準「67万8,429TEU(20フィートコンテナ換算)」を記録しました。
こうした背景には、昨今の不安定な状況を鑑みて、年末商戦などピークシーズンに向けた調達を早めたことがあるとされています。
ウクライナ紛争勃発により運賃が高騰
2022年2月に勃発したウクライナ紛争により、航空輸送時にロシア上空を迂回せざるをえない状況が続いています。これによりアジア発欧州向け航空運賃が高騰し、利用者の大きな負担となっています。
ウクライナ紛争は終わりが見えておらず、今後も運賃の高騰は続いていくことでしょう。
今後の国際物流の展望

続いて、2023年以降の国際物流事情を紹介していきます。
2023年は輸送量が増加傾向

2022年10月、WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)は、2022年の世界貿易量は前年比3.5%増、2023年は1%増の見込みであることを発表しました。
中東やアフリカでは2022年は大幅に貿易量が増加し、2023年は需要が減る可能性は高いものの、アジアや米国で堅調に推移し全体を底上げすると予想されています。
ウクライナ紛争や中国のゼロコロナ政策による経済の遅れは懸念点ではありますが、2023年以降コンテナ船の積載量も増えていくことでしょう。
運賃高騰はしばらく続く見込み
原油価格は2022年3月をピークに下落基調です。しかし、ロシア上空を通れないことや中国のコンテナ供給がまだ本調子でないことで、運賃の高騰はしばらく続くとされています。
需要は戻りつつあるものの運賃は落ちず、輸出入企業の悩みの種となることでしょう。
需要が急増する可能性
今後世界的に重要なニュースが発表された際は、需要が急増する可能性があります。具体的には、中国の規制解除による往来の自由化やウクライナ紛争の休戦発表、コロナの特効薬の開発や世界的な沈静化、などが考えられます。
そのような発表が行われた場合には、運賃が変動し船の予約が困難になる可能性が高いです。物流に影響を与えるニュースをチェックし、状況に合わせた柔軟な判断が求められます。
まとめ
2022年は中東やアフリカを筆頭に多くの国で物流量が増えました。2023年の伸び率はやや鈍化する見込みではありますが、需要は回復し国間の往来もさらに盛んになることでしょう。
一方で、中国の政策やウクライナ紛争、運賃の高騰など懸念点も多いです。中国やロシアとの貿易が盛んな国は、両国の動向に大きく影響を受けると考えられます。
今後新たに行われる発表を注視し、早め早めの手を打っていくことを心がけましょう。