ベトナム国内の小売業の今と外資系企業の動向
ベトナムの人口は、毎年100万人のペースで増え続けており、2023年内には合計1億人を突破する予定です。人口が増加するにつれ小売市場の規模も年々大きくなっており、国内では新店舗やショッピングモールが続々とオープンしています。
本記事では、ベトナムの小売市場の動向や、日系・外資の小売企業について解説していきます。
ベトナムの小売業の主な動き
2022年は、多くの産業で売上高が回復した年となりました。中でも消費財・サービスの小売売上高は前年比で20.5%の伸びを記録し、人々の購買意欲が高まっていることを表しています。ここでは、小売業の直近の大きな動きをまとめていきます。
マサングループがカフェチェーンフックロンを買収
マサングループ(Masan Group)は、ベトナムでもっとも勢いのある小売企業です。
もともとは、食品や畜産を中心とした事業を行っていましたが、2019年にビングループ(Von Group)の小売部門を担う企業を買収しました。この買収により、当時2,200店舗あった「Vinmart」が、マサングループによって運営されることになりました。
また、2021年にはベトナムの若者に支持されるカフェ「フックロン(Phuc Long)」への資本投入と買収を行い、着々とその規模を拡大しています。
2025年に1万店舗突破の目標を掲げており、マサングループはベトナム国内の小売市場を牽引しているといえるでしょう。
EC市場は2023年以降30%超の成長見込み
新型コロナの影響で広く普及したEC市場ですが、2023年以降も大きな成長が期待できるでしょう。
2018年~2022年は年平均成長率+15.0%を記録しましたが、2022年~2025年の年平均成長率は+37.1%と、さらに高い数字が予想されています。
ベトナムでは「ショッピー(Shoppe)」を筆頭に「ラザダ(Lazada)」や「ティキ(Tiki)」のプラットフォームが有名です。多くは英語にも対応しており、ベトナム人だけでなく在住の外国人にも利用されています。
ドラッグストアはベトナム全国で2,000店舗以上に増加
ここ数年で、ベトナムのドラッグストアは大きく増加しました。国内では「ファーマシティ(Pharmacity)」が1,000店舗「ロンチャウ(Long Chau)」は500店舗以上あり、有力なドラッグストアとして知られています。
日本同様に商品数も増えており、トイレットペーパーや洗剤、冷凍食品やレトルト食品を取り扱っている店舗もあります。
イオンの動向
イオン(AEON)はベトナムでもっとも成功している日系の小売企業です。現在はベトナム国内に7つのイオンモールがありますが、2025年までに18まで増やすことを予定しています。
イオンの2023年2月期第3四半期決算では、過去最高の営業収益を記録し、海外での売り上げも大きく貢献したようです。今後は、ベトナム中部の古都フエでのイオンモール建設や、EC事業に注力していく意向を示しています。
日系小売店の参入状況
毎年人口が増え成長を続けるベトナムは魅力的な市場ですが、多くの外資は苦戦しています。今までも、数々の外資企業が進出・撤退を繰り返してきました。
ここでは、ベトナムに進出し奮闘する日系企業を紹介していきます。
・MUJI
・マツモトキヨシ
・高島屋
それぞれ詳しく見ていきましょう。
MUJI
衣料品や日用品を扱うMUJIは、2020年5月にホーチミン市で1店舗目がオープンしました。現在はベトナム国内に3店舗あり、少しずつ店舗数を増やしています。
それぞれ、Vincomなどの大きなショッピングモールの中に店舗を構えています。今後は、ベトナム人に認知され定着していけるかがポイントになりそうです。
マツモトキヨシ
ドラッグストアのマツモトキヨシは、2020年10月にホーチミン市で最初の店舗をオープンしました。現在はベトナム国内に3店舗あります。
オープン当初は「ホーチミン市を中心に、3~5年後には10~15店舗を展開していきたい」と述べていましたが、新型コロナの影響もあり、現状はやや苦戦しているようです。
高島屋
日本の大手百貨店である高島屋は、ホーチミン市でショッピングモールを運営しています。
2019年6月にはハノイ市で不動産開発事業の展開を発表しましたが、進捗は思わしくないようで、2023年2月現在目立った情報は入ってきていません。
ベトナムの主な外資小売店
ここでは、ベトナムの主な外資小売店を紹介していきます。
・ロッテ
・GS25
・Emart
現在は韓国系の企業が存在感を示しています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ロッテ
日本でも有名な菓子メーカーとして知られるロッテは、ベトナムを重要な市場と捉えて、積極的な投資を行っています。
ロッテは、既にベトナム国内で複数のホテルやスーパーマーケットを運営しています。
現在ハノイ市内では大型モールの建設を進めており、2023年内にはオープンする予定です。完成後には多くの人が訪れることになるでしょう。
GS25
GS25は、ホーチミン市を中心にコンビニエンストアを展開しています。2018年に進出を果たした企業ですが、ベトナムで着々と店舗数を増やしています。
2022年12月には世界銀行グループの「国際金融公社」が、GS25に対して2,000万ドル規模の融資を検討していることが発表されました。韓国ブランドはベトナムで高く評価されており、今後はハノイやダナンでも店舗数を増やしていけるかに注目です。
Emart
Emartは、ベトナム国内で大型スーパーを運営する会社です。
低価格で豊富な品揃えに特徴があり、2022年10月にはホーチミン市で「Emart sala(イーマート サラ)」がオープンしました。Emartは、ベトナム人だけでなく在住の外国人にも広く支持されているようです。
まとめ
人口が増え続けるベトナムでは、小売市場は今後も大きく伸びていくことでしょう。
ベトナムは非常に魅力的な市場ですが、参入した外資企業のすべてが成功しているわけではありません。ベトナムへ参入する際は、入念な市場調査と戦略的な店舗展開、外資規制への対応が求められます。