【巨大な隣国】ベトナムと中国の関係について
ベトナムと中国は1,400kmにも及ぶ国境で接しており、経済的に深い関係があります。ベトナムにとって中国は輸入額で1位、輸出額で2位の貿易上で重要な国です。
しかし、ここ10年の間で中国に対するデモや事件が数回起こっています。特に両国が領有権を主張する南沙(チュオンサ)諸島の問題は根深く、今後も大きな事件への引き金となる可能性があります。
本記事では、ベトナムと中国の関係性についてまとめました。
ベトナム人と中国人の関係

ベトナム人の中で、中国に対して好意的に思う人は多くありません。古くから対立してきた歴史があり、中国に対する負の感情は今の若い世代にも引き継がれています。
普段、反中感情が表に出ることは少ないです。しかし、南沙諸島での出来事やベトナム国内で中国人が重大な事件を起こした際には、一時的に高まることがあります。
一方で、世界でもっとも多いGDPを誇る中国との経済的なつながりを無視できないことも事実です。中国へは、電子部品や衣類の原料、食料品がベトナムから輸出されています。
ベトナムにとって中国は、過去に負の歴史がありながらも、決して無視できない存在でもあります。
ベトナムと中国の経済関係
ここでは、ベトナムと中国の経済に関するトピックを紹介していきます。
・中国は輸入額で1位、輸出額で2位
・ベトナムには75万人以上の中国人が住む
・中国にベトナム政府の代表団を派遣し関係を深める
それぞれ詳しく見ていきましょう。
中国は輸入額で1位、輸出額で2位
ベトナムにとって中国は、輸入額で1位、輸出額で2位の重要な顧客です。

2021年の輸入額は約1,100億ドル(約15兆4,000億円)で、スマートフォンやテレビなどの電子機器や、ビニールなどのプラスチック製品などが中心でした。

一方で輸出額は約559億ドル(約7兆8,260億円)で、回線電話や半導体などの電子機器や衣類の原料、ナッツやフルーツといった食料品が中心でした。
これらの額を見ても、中国からの輸入に頼っていることがわかります。
ベトナムには75万人以上の中国人が住む
ベトナムには、2019年時点で75万人の中国人が住んでいました。この数字は日本の2万人、韓国の20万人と比較しても圧倒的に多いことがわかります。
中国の大手EC会社であるアリババも魅力的な市場と捉えて、ベトナム小売大手のザ・クラウンXの株式を取得しています。
中国にベトナム政府の代表団を派遣し関係を深める
ベトナム政府は中国を重要な国として捉えており、2国間で良好な関係を築いています。
2022年10月には代表団を派遣して中国に公式訪問を行い、ドリアンの輸出を開始、陸上の国境問題に対する不一致点の解決や、平和と安定の維持での共通認識を確認しました。新型コロナの影響も小さくなり、さらなる連携の強化が期待されています。
ベトナムと中国に関連する事件

次に、ベトナムで中国に関する出来事が原因で発生した事件を3つ紹介します。
2014年5月:労働者が暴徒化
2014年5月、南沙諸島周辺で中国が設置した石油掘削装置付近で、ベトナムと艦船が衝突する事件が起こりました。中国の強引な行動にベトナム全体が嫌中ムードが高まり、主要都市ではデモ活動が発生しています。
当初は比較的和やかな雰囲気の中で行われましたが、数日後にデモに参加していた労働者が暴徒化し、漢字表記のある工場を襲撃する事態が起こりました。北中部ハティン省にある多くの中国人が従事する製鉄所建設現場では、4人の死亡者が確認されています。
しばらくは各所で暴走が続いたものの、数週間ほどで再び元の状態に戻りました。結果的に問題の発端となった石油掘削装置は撤去されましたが、南沙諸島に関する問題はその後も続きます。
2018年6月:反中デモ
2018年6月、ベトナムの北部・中部・南部地域に、リース期間「最長99年間」の経済特区を新設する法案への反対のデモが発生しました。当初は中国に対する言及はありませんでしたが、利権が関係しているというフェイスブックの投稿が人気を集め、国民の感情に火がつきました。
南部ビントゥアン省では、地方政府の建物に石や火炎瓶を投げるなどの騒ぎに発展し、最終的に法案の審議を無期限延期することを決定しています。
2020年8月:軍事演習に対して中国に抗議
2020年8月、中国が南沙諸島近辺で軍事演習を行なっていたことに対して、ベトナム政府が抗議しました。2016年には石油掘削装置は撤去されましたが、南沙諸島に関する問題はいまだに根深いものがあります。
2023年6月にも中国を本社とするアイスクリームのチェーン「MIXUE」が、公式サイトで南シナ海全域を領海として記載したことで不買運動が起こりました。今後も問題の火種となる可能性は大いにあります。
ベトナム人にとっての米国
ベトナム人の中では、中国よりも米国志向の方が強いです。過去ベトナム戦争では、アメリカ軍によって枯葉剤が撒かれ被害者に悲惨な後遺症が残る事件も起こりましたが、今はその影響をあまり感じさせません。
ベトナムの大学で優秀な成績を残している層は、米国への留学や就職を志す人も多いです。今後の経済発展とともに、米国への関心や傾倒が高まると考えられます。
まとめ
ベトナムでは、中国に対してネガティブな印象を持つ人も多く、現在でも嫌中感情が高まることがあります。一方で経済上のつながりも強く、今後の発展には欠かせないパートナーであることも事実です。
ベトナムでは、政治的な出来事が原因で緊張感が高まることがあります。進出する日系企業は、こうした側面を理解した上で事業を行う必要があります。