インドネシアのユニコーン企業「Goto」の今
インドネシアの「Goto」はGojekとTocopediaが合併してできた会社で、上場直後に国内の時価総額で第4位を記録しました。しかし、上場後は多額の赤字を計上しており、順風満帆とはいえない状況にあります。
本記事では、Gotoの現在や事業内容、なぜ赤字を計上しているか、などを詳しくまとめていきます。
インドネシアのユニコーン企業Gotoとは

2021年5月、オンライン配車・配送サービス大手Gojekと、地場大手ECサイトを運営するTocopediaとの合併によってGotoは誕生しました。両社はユニコーン企業(企業価値10億ドル超えのベンチャー企業)であり、Gojekについては世界で40社しかないデカコーン企業(企業価値が100億ドル超えのベンチャー企業)の基準も満たしています。
インドネシアの歴史で最大規模の合併であり、世界的に話題を集めました。
そして、2022年4月にはインドネシア証券取引所に上場しユニコーン企業を卒業しました。多くの雇用を生み所得向上に貢献した実績により、政府からは「インドネシアの誇り」として賞賛されています。
しかし、2021年の上場後初の決算発表では約21兆4,000億ルピア(約1,900億円)の赤字を計上し、2022年以降も黒字を達成することができずにいます。
インドネシアのGotoが赤字を計上している理由

2021年から赤字を計上しているGotoは、現在も厳しい状況にいます。2022年は売り上げ自体は伸びていますが、販促費がかさみ赤字幅が拡大しているようです。
販促費がかさんでいる理由としては、配送サービス大手のGrabやデジタル金融サービスを提供するSeaなどが台頭してきていることがあります。対策として、新CEOに伴う経営方針の見直しや、人員の削減で固定費の削減を行っています。
インドネシアのユニコーン企業Gotoの現在

Gotoは、2024年第1四半期からの黒字化を目指しています。
従来の配車サービス、EC事業に加えて電子決済事業にも注力し、複数サービスを持つスーパーアプリとして、インドネシア国内での需要拡大を狙っています。
Gotoの事業内容
配車サービスとしての印象が強いGotoですが、同社の加盟店責任者のリュウ・スリアワン氏は、それを否定しています。同氏は「アプリを使うという点はウーバーを参考にしたことは確かだが、サービスは全然違う」と述べ、フードデリバリーやEC、金融まで対応したGotoは、未だかつてないサービスであると主張しました。
ここでは、Gotoが現在展開している主な事業を紹介します。
・配車サービス
・フードデリバリー
・EC
・電子決済
配車サービスとフードデリバリーはGojek、ECはTocopediaと、前身となった会社の名前を残し、電子決済はGotoファイナンシャルという名前でサービスを提供しています。
それぞれ詳しくみていきましょう。
配車サービス
Gojekは、合併前からインドネシアの配車サービスで名を知られた会社でした。現在は、同業態のサービスであるGrabとほぼ半分ずつシェアを分け合っている状況です。
一般的なバイクと車のタクシーや、信頼性の高いブルーバードタクシーの手配、従業員の出張を監視できるプラットフォームなど、配車に関する幅広いサービスを提供しています。
フードデリバリー
Gojekは、まだフードデリバリーが一般的でなかった2015年頃からサービスを提供してきました。
デリバリーは、カフェやレストランでの飲み物や料理、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでの食料品、フードデリバリー専用のクラウドキッチンに対応しています。
EC
インドネシアにはTocopediaを始め、Shopee、Bukalapak、Lazadaなど数多くの競合ECサイトがあります。2022年の第4四半期、TocopediaのECサイト訪問者数は1億3,500万人で、Shopeeの1億8,100万人に次ぐ2位でした。
Tocopediaは個人商店や中小規模の販売者が多い点が特徴で、インドネシア国内にある17,000ある島々に対して、サービスを平等に届ける課題に取り組んでいます。
電子決済
Gotoファイナンスは、電子決済サービスのgopayや、金や投資信託に投資できるgoinvestasi、保険商品を購入できるgosureなど、金融に関連するサービスを展開しています。
インドネシアでは、クレジットカードや銀行口座を持たない人が多いです。Gotoファイナンスはそうした人に対して、便利で信頼性が高いサービスを提供しています。
Gotoの競合企業
最後にGotoの競合企業を挙げていきます。
・Grab
・Shopee
それぞれの企業について解説します。
Grab
シンガポールに本社を構えるGrabは、Gojek最大のライバル企業として知られています。2022年6月配送サービスのマーケットシェアは「Gojek:52%」「Grab:48%」でした。
2社の基本料金には大きな差はありませんが、Gojekは割引率を上げるなど積極的なプロモーションを行うことで、ユーザーを獲得しているようです。
Shopee
Shopeeは、インドネシアのEC市場で1位のシェアを誇ります。2022年第4四半期、インドネシアのEC市場での取引額は「Shopee:40%」「Tocopedia:30%」でした。
Tocopediaがインドネシア国内に特化していることに対し、Shopeeは日本を含む東南アジア、ヨーロッパ、南米で事業を展開しています。2社の間には取り扱い商品数で大きな差があります。
まとめ
Gotoは上場した2021年以降大きな赤字を計上しています。軸となっている配車サービスとEC事業は成長産業である反面、競合他社との競争も激化しているため、販促費がかさんでいる状況と考えられます。
経営陣が黒字化を見込む2024年以降、どのような結果を迎えるかに注目していきましょう。