インドネシアで所得格差が広がる理由とは?
インドネシアは毎年経済成長を遂げている国の一つですが、年々所得格差も広がっています。首都のジャカルタに投資が集中する一方で、地方や離島に住む人たちには行き届いていないため、高い所得を期待できる仕事に就けるチャンスが限られるのが現状です。
本記事では、インドネシアの所得格差が広がる理由や現在の経済状況、政府が行っている対策などを紹介していきます。
インドネシアの所得格差とは

インドネシアの平均月収は、過去10年間で20%ほど上昇していますが、世界的には高くありません。2022年の平均月収は「191.774ドル(約27,000円)」であり、同じアジアでも日本や韓国と比べると大きな差があります。
また、近年富の集中が進んでおり、富裕層も年々数千人単位で増えています。インドネシアでは、上位10%が資産全体の60%超を保有し、下位50%はわずか5.5%しか保有していない事実からも、所得格差が広がっていることは明らかです。
次の項目では、なぜ所得格差が生まれているのか、理由を解説していきます。
インドネシアで所得格差が広がる理由

インドネシアで所得格差が広がっている理由について、主には以下が考えられます。
・ジャワ島に投資が集中
・地方と都市部の教育格差
・相続税がない
それぞれ詳しく解説していきます。
ジャワ島に投資が集中
インドネシアには17,000を超える島がありますが、ジャワ島に人口の70%が住んでいます。ジャワ島はジャカルタを始め、スラバヤ、スマランなどの地方都市も点在しており、国内外から投資が集まっています。
ジャワ島にはさまざまな職種の仕事がありますが、投資の行き届かない地域では、旧来から存在する漁業や農業などが中心です。都市部へのアクセスが悪いため規模の拡大も望めず、将来性が見込めない仕事を続けざるをえない人も少なくありません。
地方と都市部の教育格差
インドネシアでの格差は所得だけでなく、教育でも広がっています。インドネシアの識字率はジャワ島にある都市ではほぼ100%ですが、東部のパプア州では71%ほどの数字に止まります。
また、教師の人数や、大学の数、学習環境、設備の格差も大きいです。地方では、小学校や中学校を出ただけで仕事を始める人も多くいます。
相続税がない
インドネシアには相続税がありません。親の経済力が子や孫にそのまま受け継がれるので、富裕層から転ずる可能性は低いです。
経済的な基盤を持つ人がますます富むようになっており、経済格差を助長する一つの原因となっていることは間違いありません。
インドネシア経済の今後
ここでは、インドネシアの経済について今後の展望を述べていきます。
・GDPは毎年5%前後成長
・2024年から首都移転が始まる
・政府はデジタル化を推進
それぞれ詳しくみていきましょう。
GDPは毎年5%前後増加
インドネシアは経済発展著しく、毎年GDPが5%前後増加している国です。経済政策や規制緩和も成長に寄与しており、外国からの投資も積極的に行われています。特に、ここ数年は製造業や情報通信業の伸びが強いです。
しかし、投資の多くは経済の中心であるジャワ島に集まっています。今後はジャワ島で給与のベースが上がる一方で、地方との格差はさらに広がると考えられます。
2024年から首都移転が始まる
インドネシアは人口の過密化や交通渋滞を理由に、首都をジャカルタから東カリマンタン島に移転することを予定しています。新しい首都はヌサンタラと名付けられ、総額4兆円をかけて2024年から移転が始まります。
ヌサンタラはインドネシア中部にある東カリマンタン島の海沿いの地域です。国の主要な機関が移転することにより、周辺地域の発展に大いに期待できるでしょう。
政府はデジタル化を推進
インドネシアは、GojekやTocopedia、Travelokaなどメガベンチャーが生まれているように起業が盛んな国であり、政府もスタートアップを支援しています。2015年には「Goデジタル戦略2020」を打ち出し、デジタル系スタートアップの1,000社の創業支援や、100万人の農民と漁民をデジタル化する目標を掲げました。
こうした政策もあり、農作物を高い還元率で買い取り貧困の問題を解決する「su-re.co」や、国内に低温物流サービスを提供しSBIグループも出資する「Fresh Factory社」など、数々の新しい試みが生まれています。
まとめ
インドネシアではジャカルタへの投資の集中、地方との教育格差、相続税のないことを理由に、所得格差が広がっています。上位10%が資産全体の60%超を保有しているように、一部の富裕層と多くの低所得者との間には大きな差があるのが現状です。
2024年以降は、ジャカルタからカリマンタン島へ首都移転が始まる予定です。首都移転により、ジャカルタ以外の地域の発展が促進され、経済の多様化や教育格差の改善につながることが期待されています。