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ベトナムの環境汚染の現状と対策

ベトナムの環境汚染の現状と対策

近年、ベトナムでは平均収入が上昇し生活水準が向上するにつれて、環境汚染も深刻化しています。特に人口が集中する首都のハノイ市やホーチミン市では、大気汚染や水質汚染が進行し、人々の健康被害を及ぼすケースも少なくありません。

本記事では、ベトナムの環境汚染の現状と対策についてまとめました。

ベトナムの環境汚染の現状

ベトナムの環境汚染については、大気・水質・農業に分けて説明していきます。また、
廃棄物の処理についてもお伝えします。

大気汚染

ベトナムは世界でも大気汚染が深刻な国として知られています。

ハノイ市では1月〜3月の時期に、地面の空気が上空より冷たくなることがあります。この状況は逆転層と呼ばれ、大気の安定度が高くなることに加えて風も弱くなるため、汚染物質が拡散されない状況が続きます。

そのため街を覆うようなスモッグが発生し、健康に深刻な被害を及ぼすPM2.5の粒子によって、肺の炎症や呼吸器疾患を引き起こす人も少なくありません。

大気汚染が発生する理由には、野焼き、建設工事、工場からの煙、車の排気ガスが主な原因として考えられます。2022年3月には大気汚染の程度を示す大気質指数が「160〜220」と世界ワースト3に入る数字を計測し、ここ数年は改善も見られていません。

水質汚染

ベトナムの汚水処理率は約14%であり、下水処理場が十分に整備されていません。街中を流れる川からは異臭が発生し、生活排水の処理が行われずそのまま流れ出ている様子も確認されています。

製造業が盛んなベトナムでは、工場排水が適切に行われていないことで摘発されるケースもあります。具体的には以下の事例が報告されています。

味丹社:2008年9月、汚水の垂れ流しが判明
ジョーンテクノロジー社:2010年5月、工場の排水管が工業団地の雨水排水管に直結されていたことが判明
ベタン社:2011年8月、環境基準を満たしていない排水の垂れ流しが判明

近年はJICAや外資企業の参入、法整備が進んだことにより工場排水の摘発事例は少なくなっています。しかし、生活排水においては、まだインフラが十分に整っていないといえます。

農業汚染

ベトナムでは、収穫量増加を目的とした農薬や化学肥料の使用を理由に、農産物や土壌・水環境の汚染が生じています。政府は有機農業の推奨や農薬の規制を進めていますが、末端の農業従事者の意識向上にはつながっていないのが現状です。

2014年6月に中国からベトナムへ輸入された果物や野菜に過剰な農薬や防腐剤が使用、2019年5月にはベトナムから日本へ輸出された農産物で、基準値以上の農薬残留が確認されました。農業汚染により食品の安全性が損なわれることは、ベトナムの大きな課題の一つとなっています。

廃棄物の処理

ベトナムは経済発展により年々廃棄物が増加しています。具体的には、以下が挙げられます。

生活廃棄物:プラスチックや廃油など
建設廃棄物:ガレキ、土砂など
医療廃棄物:血液やアルコール、注射針、ギプス用石膏など

人々の疾病や自然環境に多大な影響を与える医療廃棄物を除き、多くは適正に処理されず埋め立てられています。郊外では廃棄物が放置されただけの土地を見かけることも少なくありません。

ベトナム国内には、廃棄物を堆肥化するコンポストや、廃棄物の燃焼から熱エネルギーを得て行う焼却発電を行う設備も存在します。しかし、維持コストの高さや収益性の低さから普及は進んでおらず、今も原始的な方法に頼ることが多いです。

その他

本記事で紹介した以外では、海洋汚染や自然生態系の劣化が挙げられます。

ベトナムは3,200kmの海岸線に面しており、漁業は国の重要な産業の一つです。しかし、近年では給油ホース破裂やタンク破損による油の流出や、海洋ゴミによる海の汚染が報告されています。

また、水質汚染や森林伐採により自然生態系も劣化しています。2021年からは「国連生態系回復の10年」も始まり、ベトナムの環境総局は生物多様性や自然の保護を推進する姿勢を示しています。

ベトナムの環境汚染に対する対策

ここでは、ベトナムで行われている環境汚染に対する対策を紹介していきます。3つの項目に分けて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

2014年に環境保護法を制定

2014年にベトナムでは、環境保護における組織、家族、個人の権利と義務について規定した環境保護法が制定されました。環境保護法では、技術規定に従わない毒物、放射性物質、廃棄物、危険物質の運搬と埋め立ての禁止や、国の環境保護に関する政策など、環境に関することを幅広く定めています。

環境保護法の制定後には何度か改訂が行われ、2022年5月からは罰則が強化されるなど、より一層の法律の遵守が求められています。

電動バイク、EV車の推奨

2022年4月、ベトナム政府はハノイ市やホーチミン市、などの主要5都市に対して、2030年以降のバイク制限計画に取り組むように指示しました。バイクによる排気ガスが環境へ悪影響を及ぼすとされており、電動バイクを推奨する動きが見られます。

また、国産の車メーカーであるビンファストはEV車の開発に注力しています。充電スタンドや修理環境の整備も進み、今後の成長性を感じさせます。

JICAや日系企業が排水処理施設を整備

ベトナム国内では排水処理技術やリソースが乏しいため、さまざまな団体や外資企業が施設の整備を行っています。2010年5月にはKOBELCO(神戸製鋼)が水処理設備の納入、2021年5月からはJICAによる環境や水質改善を目的とした下水排水処理事業が始まりました。

これらの取り組みにより、ベトナムの排水処理率の向上が期待されています。

まとめ

近年、ベトナムでは人々の収入や生活水準が向上している一方で、環境汚染もますます顕在化しています。環境汚染について若干の改善傾向が見られますが、依然として抱える問題は多いです。

世界的なSDGs化、EV推奨の動きもあり、今後はさらに環境汚染に対する取り組みが強化されると考えられます。

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