製造

インドネシアの繊維産業の今

インドネシアの繊維産業の今

繊維産業は、インドネシアを支える主要な産業の一つです。産油国であるインドネシアでは石油や天然ガス由来の繊維の精製が盛んであり、中国や韓国を始めとした国から投資を集めています。近年はイスラム教徒が多くいる中東やアフリカ向けの輸出も増えています。

本記事では、インドネシアの繊維産業の概要や特徴、課題をまとめました。

インドネシアの繊維産業とは

繊維産業は製造業に分類されます。インドネシアにおいて製造業は全体の19.2%を占めており、その内の6.8%が繊維によるものです。製造業全体では国内に1,800万人を超える従業者がいるとされています。

インドネシアの繊維産業は年々成長を続けており、国内外さまざまな企業がインドネシアに工場を設立しています。国としての伸び代があることから、海外の投資家は中国やマレーシア、タイよりもインドネシアを選ぶケースも増えているようです。

インドネシアの繊維産業の特徴

ここでは、インドネシアの繊維産業の特徴を挙げていきます。どのような繊維産業が盛んなのか、また輸出や海外からの投資状況などについて詳しく見ていきましょう。

石油由来の合成繊維の生産が盛ん

インドネシアは国内各所に油田や天然ガス田がある資源国であり、合成繊維の精製が盛んです。主な合成繊維は以下が挙げられます。

ポリエステル
ナイロン
ポリウレタン

2022年8月に素材メーカーのユニチカが設備を強化しナイロンフィルムを増産、2023年12月には三井化学がポリウレタン事業を始めるなど、日系企業の投資も進んでいます。

中東向けの輸出が好調

インドネシアはイスラム教徒が約87%を占める国です。2023年に入ってからは、同じくイスラム教徒が多い中東の国々への民族衣装の出荷が増加しています。

インドネシアでは、2019年11月よりセーフガードが発動していました。セーフガードとは、糸製品や布製品に対して緊急関税を課す措置ですが、3年経過後の2022年11月に解除されています。

今後は海外から素材の輸入が増え、国内の輸出産業の苦戦が予想されます。繊維分野の日系企業である日清紡は「品種の拡充や商品開発などを元に高付加価値を目指す」という方針を示しています。

人口ボーナス期で労働力が豊富

インドネシアの2023年時点の平均年齢は29.9歳であり、毎年300万人ペースで増加しています。若年層が多いピラミッド型をしており、人口ボーナス期は2040年ごろまで続く見込みです。こうした数字は、インドネシアにおける労働力の豊富さを示しています。

インドネシアの平均月収は3万円程度であり人件費の違いによるメリットも大きく、郊外には数千人程度の人員を抱える縫製工場も多くあります。

海外からの投資

インドネシアは、海外からの投資でも人気がある国です。2022年〜2023年の間でも、以下の国の企業からの投資事例を確認できました。

・2022年3月:台湾でポリエステルやナイロンなどを扱う力麗企業が、60億元(約250億円)投じてインドネシアに新工場を設立
・2022年5月:韓国のアパレル大手の信元が、スマート縫製工場設立
・2023年6月:中国のポリエステルメーカー大手の桐昆集団と新鳳鳴集団が、石油精製~化学の一体化統合プロジェクトを発表

インドネシア政府も、外交の場で投資の呼びかけを積極的に行っています。

インドネシアの繊維産業の課題

インドネシアの繊維産業ではまだまだ課題が残っています。大量解雇や給与未払いなどの問題が起こっているので、具体的な事例をもとに解説していきます。

大量解雇問題

2022年2月に勃発したウクライナ侵攻により、世界的なファッションブランドからの発注が激減し、解雇された人も少なくありません。解雇された背景には、食料品や光熱費など生活に必要なコストが高騰し、ブランド製品に対する購買意欲が下がっていることが挙げられます。

物価高騰は2024年3月現在も続いており、インドネシアの経済成長の背景で職を失っている人も多くいます。

給与未払い問題

インドネシアでは、2022年10月頃から倒産する外資の工場が増え始めました。倒産を機に職を失っただけでなく、給与の不払いも発生しています。

インドネシアの失業者に対する保障制度は十分に整備されておらず、給与や退職金は次の仕事までの重要な生活資金です。未払いとなっている企業には世界的なアパレル企業も含まれており、中には8年も抗議活動が続いている事案もあります。

繊維産業でインドネシアに進出している日系企業

最後にインドネシアに進出している日系企業を紹介していきます。

東レ
ワコール

各社の歴史と事業内容を詳しく見ていきましょう。

東レ

日本でも屈指の素材メーカーである東レは、インドネシアで原糸や原綿、生地の生産拠点を保有しています。東レは1971年にインドネシアで拠点を初めて設立し、すでに50年以上の歴史があります。

新型コロナが終息し始めたことで、2022年以降の業績は回復傾向です。一方で、原価の高騰や物流コストなどの上昇にも苦しんでおり、付加価値の高い商材への移行が求められています。

ワコール

世界的な下着メーカーであるワコールは、インドネシアにも進出しています。インドネシアで会社を設立したのは1991年のことで、現地の百貨店や小売店、直営店舗、EC店舗を通じて消費者へ供給しています。

SNSを通じたマーケティングにも力を入れており、InstagramやTikTokには数万人規模のフォロワーがいます。

まとめ

インドネシアの経済成長とともに、繊維産業も大きく売り上げを伸ばしています。宗教や資源国である強みを活かし、海外からも多くの投資を集めています。

一方で、大量解雇や給与の未払い問題など燻っている問題もあります。また、繊維産業は環境への影響も大きいです。進出する企業はコンプライアンスの遵守と環境への配慮を行い、持続可能な取り組みが求められるでしょう。

海外のレンタル倉庫・工場をお探しの方へ

CRE倉庫検索 for ASEANではベトナム・インドネシアを中心とした海外の物件を取り扱っております。
これから海外進出をご検討されている企業様、または既に海外展開中の企業様もお気軽にお問い合わせください。

電話でのお問合せはこちらから

TEL : 03-5114-5442

(携帯電話・PHSからもご利用いただけます)
営業時間 : 午前9時30分から午後6時まで (平日のみ)

ページの先頭へ