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ベトナムの鉄道

ベトナムの鉄道

ベトナムは、東南アジアの中でも鉄道の発達が遅れている国です。国内には統一鉄道と呼ばれるハノイとホーチミンを南北に結ぶ鉄道がありますが、移動に時間がかかることに加え、遅延も日常的に発生しています。

ベトナムにおいて鉄道は有効な移動手段といえませんが、2021年にハノイでメトロが開通したように、ここ数年動きが見られるようになりました。

本記事では、ベトナムの鉄道事情をまとめました。今後ベトナムへ訪れる予定のある人は、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。

ベトナムの鉄道の歴史

ベトナム最初の鉄道は、1885年に南部のサイゴン(現ホーチミン)とメコンデルタの街ミトーを結んだ路線といわれています。その後、1910年に中国の雲南省からハノイを経由してハイフォンまでを結ぶ滇越(てんえつ)鉄道、1936年にハノイからホーチミンを結ぶ統一鉄道が完成しました。

しかし、フランスに続きアメリカとの戦争が始まり、鉄道設備も攻撃対象となり、路線は寸断されることになります。1975年に戦争が終わり、1976年12月には統一鉄道が復旧しますが、外交での孤立や経済的な困窮があり、安定的な運行は行われていませんでした。

その後、1990年代に日本によるベトナムへの政府開発援助が再開したものの、移動手段はバイクやバスが定着しつつあり、思うように発展が進みませんでした。今も国内の路線は限られたままであり、タイやインドネシアなど他の東南アジア諸国と比較すると、大幅に発達が遅れています。

ベトナムの鉄道の種類

ここでは、ベトナムの鉄道の種類を紹介していきます。

鉄道

ベトナムの旅客鉄道は、ハノイ〜ホーチミン間の約1,700kmを約32〜35時間で結ぶベトナム統一鉄道を始め、北部で4つ、南部に2つの路線が存在します。

◆ベトナム北部の路線
ハノイ〜ラオカイ線
ハノイ〜ハロン線
ハノイ〜ハイフォン線
ハノイ〜ドンダン線

◆ベトナム南部の路線
サイゴン〜クイニョン線
サイゴン〜ファンティエト線

しかし、すべてが動いているわけではありません。2023年7月時点で運行していたのは統一鉄道と「ハノイ〜ラオカイ線」と「ハノイ〜ハイフォン線」のみです。

ベトナムの国内輸送は陸路や空路が中心で、鉄道が使われるケースは多くありません。ただし、中国の雲南省とベトナムのハイフォンを結ぶ貨物列車の往来は盛んで、2023年からは本数も増便しています。

都市鉄道(メトロ)

現在ベトナムでは都市鉄道と呼ばれる、街中を走る路線の開発が行われています。2021年11月にはベトナムで初となる「ハノイ市メトロ2A号線」が開通しました。当初の完成予定が2015年だったので、実に6年ほど遅れて開通したことになります。

ハノイ市メトロ2A号線は、主に住宅街や学校が集中する地域を通る路線です。旧市街やタイ湖などの観光地は通りません。

ホーチミンでは2024年7月に「ホーチミン市メトロ1号線」、2027年にハノイでは「ハノイ市メトロ3号線」の開通を予定しています。開通すれば交通環境が改善される見込みですが、いずれの路線も延期を重ねており、予定通り開通するか疑いの目を持っている人は多いです。

路面電車

1900年代の始めから半ばにかけて、ハノイでは路面電車がありました。ピーク時には6路線ありましたが、現在はその面影はありません。

当時は乗り物の種類が少なく、ハノイに住む人の貴重な交通手段となっていたようです。

ベトナムの鉄道が抱える問題

ベトナムの鉄道が抱える問題について、詳しく解説していきます。

開発の進捗が遅い

本記事でも紹介しているように、ハノイやホーチミンの街中を走る都市鉄道の開発は大幅に遅れています。2010年には中央政府の承認を得ていましたが、手続きの遅れで計画は後ろ倒しになっており、最初の都市鉄道が開通したのは2021年のことです。

また、延期によって開発資金が膨らみ、完成前に予算を超過しているプロジェクトもあります。例えばハノイメトロ3号線は、2022年内に完成し当初建設費は12億ドルと予想されていました。しかし2023年末時点では、完成していないにも関わらず、すでに建設費は15億ドルを超えています。

設備の老朽化

ベトナムでは、鉄道の車両や線路など設備の老朽化が進んでいます。2024年4月にはハノイと中国を結ぶ高速鉄道の開発が発表されましたが、ベトナム側の線路に老朽化がみられるため、改修が必要になる見込みです。

遅れと運行不順

ベトナム統一鉄道の平均時速は50km程度で、天候を理由に遅延することも少なくありません。鉄道利用者が少ないことで投資も行われず、車両が古いままになっているという現状があります。

また、新型コロナの影響から今も運行を停止している路線も存在します。

ベトナムのモーダルシフトに関する動き

ベトナム国内の鉄道の輸送シェアは、1995年時点では旅客11.7%、貨物7.9%でしたが、2018年には合算で3.0%にまで減少しています。国内の輸送は自動車や航空機がメインで、電車の普及は進んでいません。

最近では電気で動くビンバスが街中で走るようになり、サッポロビールは環境に配慮して輸送に内航船の使用を発表するなど、モーダルシフトの動きが見られます。しかし、鉄道は依然として旧型でディーゼル燃料の車両が走り続けており、時代から取り残される形となっています。

ベトナムの鉄道の今後

ベトナムではメトロの開発が進んでいますが、延期を重ねている状況です。過去の歴史から、今発表されている予定もさらに延期になる可能性があります。

また、ハノイとホーチミンを最大350km約5時間で結ぶ南北高速鉄道や、ハノイ市内のバス路線を鉄道に変える構想も計画されています。しかし、まだ具体的な話には進んでおらず、将来的に実現する可能性は低いかもしれません。

まとめ

ベトナムでは鉄道の存在感は年々低下しており、設備は老朽化しています。移動や輸送手段としては、車や飛行機が優先される傾向にあります。

都市鉄道の開発も遅れており、鉄道のビジネスが活発化するのは数年もしくは数十年先になる見込みです。

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