インドネシアの国産品優先政策と現地調達率規程について
2045年の経済大国入りを目指すインドネシアでは、国内の産業を強化するために、国産品優先政策を実施しています。国産品優先政策には「部品や材料を一定の割合以上国内で調達・生産を義務付ける」という現地調達率規程が定められています。
本記事では、インドネシアの国産品優先政策と現地調達率規程について詳しく解説していきます。今後インドネシアでのビジネスの展開を考えている人は、ぜひ記事を確認してみてください。
インドネシアの国産品優先政策と現地調達率規程とは

インドネシアでは、国産品優先政策として、現地調達率規程を定めています。インドネシアにおける現地調達率規程とは「部品調達率が一定を超えるものでないと販売できない規制」のことです。携帯電話や太陽光発電機器、電気自動車のバッテリーについては個別で割合が設定され、政府調達品については国産化率40%以上が求められます。
政府調達品とは、インドネシアの国立施設や道路、橋脚などのインフラ構築のための資材、設備が挙げられます。現地調達率規程は年々厳格化しつつあり、直近では2024年11月にiPhone16やGoogle Pixelが基準を満たしていないとして販売停止となりました。
次からは国産品優先政策について、より詳しく解説していきます。
インドネシアの国産品優先政策の概要
インドネシアでは、2018年6月より国産品優先政策を実施しています。国産品優先政策は「P3DN」とも呼ばれています。
国産化率は、製品に使用される原材料、労働力、間接費のうち、国内で調達・生産された割合を意味します。具体的な計算方法は製品や産業によって異なりますが、一般的に国内調達された原材料費と、国内労働者の賃金や製造間接費(間接労働、作業機器の費用)などを合計したものを、製品の総コストで割って算出する仕組みです。
この割合が政府の定める基準を満たすことで販売可能となります。
インドネシアの国産品優先政策の目的
インドネシアの国産品優先政策は、国内産業の成長促進と能力強化、雇用の拡大が目的です。
インドネシアは石油、天然ガス、天然ゴムなどの豊富な資源を持ち、原材料の輸出を中心に発展してきた国です。しかし、資源価格は国際情勢に左右されやすく、経済の安定には課題がありました。
こうした背景のもと、ジョコ大統領は自国産業の強化が不可欠と考え、2020年1月にニッケル、2024年5月には銅、鉄鉱石、亜鉛、鉛などの未加工鉱石の輸出を禁止し、国内での加工を推進する政策を打ち出しています。
国産品優先政策もこの流れの一環であり、インドネシアに進出する外資系企業は、規制への対応を求められています。
インドネシアの国産品優先政策と現地調達率規程による影響

ここでは、インドネシアの国産品優先政策と現地調達率規程が、企業にどのような影響を与えているかを解説していきます。
iPhoneやGoogle Pixelなど携帯電話が販売禁止
2024年11月インドネシア政府は、iPhone16とGoogle Pixelが国産化率40%を満たしていないと指摘し、販売を禁止したと発表しました。発表時点ですでに個人輸入で2万2,000台程度が入っていましたが、それらはデバイスのIMEI識別コード(固有の端末番号)が無効化され、現地の通信事業者で登録されないような措置が行われます。
執筆の2025年3月15日時点で販売禁止措置は継続されていますが、同月内にはiPhone16が規制解除される予定との報道がでています。
EV二輪車の現地調達率を強化
インドネシアでは、日本のホンダを始め、中国のBYDやウーリン、韓国の現代自動車やベトナムのビンファストなど、複数のEV二輪車メーカーが供給を行っています。インドネシア政府は、現地調達率40%以上の新車EV二輪車に、補助金700万ルピア(約6万7,000円)を導入する施策を通じて購入を促進しています。
現地調達率は2025年までに60%以上、2026年以降は80%以上に引き上げる見込みです。
外資規制の厳格化
インドネシアでは2021年6月に外資企業の初期投資に対する規制の変更が行われ、従来の「25億ルピア(約2,275万円)」から「100億ルピア(約9,100万円)」へと引き上げられました。これにより、外資企業がインドネシア市場に参入するための投資額が増加しています。
また、2023年6月には「標準産業分類(事業を分類する5桁の番号)」について、従来は「上2桁ごとに100億ルピア」とされていましたが、今回「上4桁ごとに100億ルピア」と変更されています。これは会社のライセンス取得時の負担増加を意味し、外資企業にとってさらに高いハードルとなります。
過度な現地調達化要請により影響を受けている企業も
国産品優先政策や現地調達率規程によって、特に大きな影響を受けているのは輸出企業です。輸出企業は、現地調達率の要件を満たすために、インドネシア国内での部品調達や生産拠点の設立が求められます。
こうした流れにより、流通網の変更や追加投資が必要となり、事業コストが増加しています。
まとめ
インドネシアでは、2018年より国産品優先政策を展開し、現地調達率規程を定めています。こうした取り組みによって、国内企業の技術が強化され、経済の発展が見込めます。
しかし、日系企業含む外資企業は、従来の流通網の変更や追加投資が必要になる可能性があります。インドネシアで事業を行う企業は、今後もインドネシア政府の動きを注視し、規制に則った展開が求められることになるでしょう。