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ベトナムの徴兵制(兵役)について

ベトナムの徴兵制(兵役)について

ベトナムでは、主に国家の防衛体制を強化する目的で徴兵制が導入されています。ベトナムの軍隊は陸・海・空(防空)で構成され合計人数は約48万人、軍備や兵力、財政状況などによって算出された2025年の世界の軍事力ランキングでは23位、東南アジアでは2位です。

今回の記事では、ベトナムの徴兵制の概要と、徴兵制がビジネスにどのような影響を与えるかを解説していきます。

ベトナムの徴兵制(兵役)とは

ここでは、ベトナムの徴兵制についての概要を解説していきます。

18~25歳の男性は原則兵役に従事しなければならない

ベトナムでは、18〜25歳の男性は原則全員が兵役に従事しなければなりません。ベトナムの兵役法の第6条1項に定められており、徴兵された場合は例外を除いて兵役に行く必要があります。

省ごとに決まった人数が徴兵され、入隊時期は2〜3月、任期は原則24ヶ月です。ただし、省によっては任期が24ヶ月より短いこともあります。

延期・免除事項が存在する

ベトナムの徴兵制には、主に以下の延期・免除事項が存在します。

◆延期事項
・大学、専門学校に通っている者(延期は27歳まで)
・入隊前の検査で健康状態が良好でないことが認められた者
・兄弟姉妹が人民軍に入隊中の者
・災害や疫病によって深刻な被害を被っている家族の唯一の稼ぎ手である者

◆免除事項
・革命戦死者の唯一の兄弟または1級負傷兵の子供
・枯葉剤により81%以上の労働力を失った者の唯一の子供、81%以上の労働力を失った病兵の唯一の子供
・経済的に特に困難な地方に24ヶ月以上赴任する公務員や青年ボランティア
・精神疾患や重篤な病気にある者
・HIVやAIDSに感染している人

延期事項に該当する場合は、条件から外れ次第兵役の対象となります。もし徴兵されたにもかかわらず、入隊前の健康診断や指定された場所に集合しなかった場合は「3,000万〜7,500万VND (約18万円〜45万円)」の罰金を支払わなければなりません。

また、公式に記載はありませんが、目に見える刺青が多い、重度の近視・遠視なども徴兵免除の理由になります。一部では徴兵逃れの賄賂や健康診断でわざと悪い結果を出すこと、海外へ留学することなどが問題視されており、近年は違反者を厳罰化する動きもあります。

女性は志願者のみ

女性は18歳以上で自ら志願、かつ防衛省で募集がある場合のみ、軍に行くことができます。徴兵ではなく「志願制」という点で、男性とは大きく異なります。

配属先としては、医療・救護部隊や情報伝達、後方支援などの分野が中心です。戦闘部隊ではなく、軍のサポート機能を担うケースが多く、専門的なスキルを身につけることができます。

給与は基礎賃金に係数を掛けて算出する

ベトナムの軍人の給与は公務員と同様で、基礎賃金に係数をかけて算出します。具体的な月収の目安は以下の通りです。

中尉:7,110,000VND〜8,010,000VND(約4万2,500円〜約4万8,000円)
上級中尉:8,010,000VND〜8,820,000VND(約4万8,000円〜約5万3,000円)
大尉:8,820,000VND〜9,540,000VND(約5万3,000円〜約5万7,500円)
少佐:9,540,000 VND〜10,980,000VND(約5万7,500円〜約6万6,000円)
中佐:10,980,000 VND〜12,240,000 VND(約6万6,000円〜約7万3,500円)

ベトナム全体の平均月収は「770万VND(約4万5,000円)」です。軍では食事や住居は保証されますが、全体の月収と比較しても特別給与自体は高くはありません。

また、約2年間の兵役でもらえる給与は上記よりも低いです。兵役中にもらえる金額はあくまで補助的なもので、収入面ではあまり期待できないのが実情です。

地方部の若者が徴兵される傾向にある

ベトナムでは地方部ほど大学進学率が低く、経済的に困窮していることも多いです。ベトナムは毎年経済発展を遂げていますが、地方部は産業が乏しく、軍隊に行かないと仕事がない人もいるのが現状です。

ベトナムでは、省ごとに徴兵される人員が決まっています。特に人口が少ない地域やコミュニティが狭い場所では、徴兵の対象になりやすいです。

ベトナムの徴兵制(兵役)がビジネスに与える影響

ここでは、ベトナムに進出する会社が徴兵制にどのように対応していくべきかを解説していきます。

従業員が突然徴兵される可能性

ベトナムで徴兵される人は、毎年テト(旧正月)が始まる3ヶ月前の10月〜11月頃に発表されます。会社で働く人は徴兵された場合には休職期間となり、兵役中の給与の支払い義務は発生しません。ただし、兵役を理由とした解雇は認められないことは覚えておきましょう。

兵役を終えた後は、15日以内に業務に復帰することも定められています。しかし、2010年〜2014年の間に兵役義務を果たして除隊した青年にアンケート調査を行った結果、全体の約3分の1が失業していることが分かり、社会復帰には依然として課題が残っています。

地方の人員確保の不安定化

地方部の若者ほど徴兵される傾向があるため、郊外に工場を構える会社の人事に影響を与える可能性があります。特に会社の幹部で徴兵対象年齢の人がいる場合には、突然欠員が出ることになるため注意してください。
一度徴兵に行くと、約2年間は欠員が出ることになります。採用時は出身地や年齢を確認し、会社として柔軟な姿勢を持つことが重要です。

年齢や経歴を考慮した採用

ハノイ市やホーチミン市などの都市部を除く地域では、年齢や経歴を考慮した採用活動が求められます。ベトナムの日系企業では、全体の42.7%が「人材不足の課題に直面している」と回答しているように、人材離脱の懸念を少しでも減らすことが重要です。

人材の離脱を抑えると、教育コストを低減することにもつながります。長く働ける人材を見極めることが、事業活動の質を向上させるためのポイントになります。

まとめ

ベトナムでは、日本と異なり徴兵制が存在します。対象者は18〜25歳の男性であり、特に地方部に住む人ほど兵役にいく傾向があります。

ベトナムの徴兵制は、採用活動にも影響を与える可能性があります。ぜひ本記事を通じてベトナムの徴兵制の理解を深め、人材確保や教育に役立ててみてください。

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