経済

ベトナムの最低賃金引き上げについて

ベトナムの最低賃金引き上げについて

ベトナムでは毎年最低賃金の引き上げが行われます。引き上げは毎年のインフレ率やGDP成長率をもとに政府が決定します。この引き上げ率は、現地日系企業における従業員の給与や昇給基準に直結することも少なくありません。

本記事では、ベトナムの最低賃金引き上げについて、詳しく解説していきます。

ベトナムの最低賃金とは

ベトナムにおける最低賃金とは、月額と時間あたり給与の法定最低額のことです。最低賃金には、「一般(GMW、公務員向け)」と「地域別(RMW、民間企業向け)」の2種類があります。

一般の最低賃金は2023年7月に、月額「194万VND(約1万1,600円)→234万VND(約1万4,040円)」へと改訂され、2026年7月にはさらに8%引き上げされる予定です。地域ごとで差は設けられていません。

地域別は経済発展の度合いに応じてベトナム国内を4つの地域に分け、それぞれに対して金額が決められます。今回の記事では、この地域別の最低賃金について解説していきます。

ベトナムでは毎年最低賃金が改定される

ベトナムでは、例年1月もしくは7月に最低賃金が改定されます。最低賃金は、政労使(労働・傷病兵・社会問題省・ベトナム労働総同盟・ベトナム商工連盟)と、専門家で構成する国家賃金評議会によって最終的な決定、発表が行われます。

決定までのプロセスは、まず第1回評議会で労働側と経営側がそれぞれの希望引き上げ率を主張します。続く第2回評議会で国家賃金評議会が最終案を取りまとめ、政府へ提案・決定する流れが一般的です。

2026年1月からは平均7.2%の引き上げを実施

2026年1月より、ベトナム全体で最低賃金が約7.2%上昇します。この最低賃金は時給にも反映されており、地域1「2万5,500VND(約153円)」地域2「2万2,700VND(約136円)」地域3「2万VND(約120円)」地域4「1万7,800VND(約107円)」に変更されています。

こうした中、企業からは引き上げ率が高すぎるという意見も多くでているようです。企業は米国の関税や燃料費、物流コストの高騰がある中で、今回の改定はさらなる追い打ちとなり、負担増を強いられる格好となっています。

地域ごとに大きな差がある

最低賃金の表を見てもわかるように、都市部の地域1と地方の地域4では、改定後で161万VND(約30%)の開きがあります。今後新たに進出をする場合は、拠点がある地域と改定後の数値を把握しておく必要があります。

日系企業において最低賃金は、製造業のワーカーの給与に関連してくることが多いです。給与が高く設定されている事務職や営業職では、額面よりも上昇率が注目され、定期昇給の指標になる傾向があります。

経済成長や物価上昇率に応じて決定

2025年の前年比で、ベトナムのGDP成長率は「8.02%」、消費者物価指数(CPI)は「3.31%」でした。今回の引き上げ率は、これらの堅調な推移が反映された形です。

2026年は、GDP成長率は「10%」消費者物価指数(CPI)は「4%前後」という高い目標を掲げています。企業側は来年以降も同様以上のペースで給与が上昇していく可能性を見据えて、計画を立てる必要があるといえるでしょう。

生活費を十分に賄うには不十分

都市圏に分類されるホーチミン市では、4人家族の生活費は月1,700USD(約4,470万VND)ともいわれています。地域1の最低賃金531万VNDでは、共働きでも生活費を賄うことは不可能です。

つまり、現在の法定最低賃金は、都市部における「生活費や労働市場の給与相場」とは大きくかけ離れています。企業が優秀なローカル人材を確保し定着させるためには、最低賃金ではなく市場価格に基づいた給与体系や福利厚生の整備が不可欠です。

ベトナムの最低賃金の今後

次にベトナムの最低賃金の今後について解説していきます。

2027年以降も上昇傾向

前述の通り、2026年にベトナム政府はGDP成長率と物価上昇率ともに近い目標を掲げています。2027年1月もしくは7月頃には、今回の上昇率「7.2%」を上回る上昇率が発表される可能性が高いといえるでしょう。

2026年第一四半期の実質GDP成長率は「7.83%」、物価上昇率は「3.51%」でした。物価上昇率は3月に世界的なガソリン価格の急騰があった影響から、前年同月比で4.65%を記録しており、企業のコスト負担は一段と重くなっています。

企業側の負担が増える可能性

近年、ベトナムでは最高指導者である書記長の交代を経て、労働者保護を目的とする法整備が進められています。2025年7月には社会保険に関する変更があり、加入対象者が増えたことによって企業側の保険料負担が増加しました。

2026年に入ってからも、最低賃金を始め、個人事業主の税金や関税に関する法律の変更が行われています。今後も労働法の見直しや各種法定基準の引き上げなど、企業側のコスト負担が増大する法改正が進む可能性が高いといえるでしょう。

まとめ

2026年1月の改定によりベトナムの最低賃金は約7.2%上昇しましたが、大都市部の生活費や労働市場の相場とは依然として大きな乖離があります。また、日系企業の事務職や営業職に対しては、この上昇率をベースアップの指標として活用していくことが求められるでしょう。

政府の高い経済目標やインフレ傾向をふまえると、2027年以降もさらなるコスト増が続く可能性が濃厚です。企業は段階的な負担増を見越して、計画を立てる必要があるでしょう。

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