【2023年最新】ベトナムの製造業の今と今後
ベトナムの経済は、製造業が支えているといっても過言ではありません。GDP全体の製造業が占める割合は高く、多くの外資系企業がこの数字を稼ぎ出しています。
ベトナムは製造業の会社にとって魅力的な国であり、ここ10年の間にも多くの会社がベトナムに進出してきました。しかし、近年の国際情勢の悪化などにより、市場に変化が見られます。
本記事では、ベトナムの製造業の今と今後を解説していきます。ベトナムへの移住や進出を考えている人は、ぜひチェックしてみてください。
ベトナムの製造業の今

ここでは、ベトナムの製造業に関する話題を5つピックアップしました。
・製造業がGDP全体の25%近くを占める
・サムスンはインドへの製造拠点移転を否定
・2022年の貿易額は過去最高を記録
・欧米の需要減により数万人の従業員が解雇
・日系の工場でストライキが発生
それぞれを詳しく解説していきます。
製造業がGDP全体の25%以上を占める
2021年、ベトナムのGDP全体に対する製造業の割合は「25.4%」でした。ベトナムには、スマートフォンや半導体の製造、バイクの組み立てなど、さまざまな分野の会社が進出しています。
2022年には、トイレメーカーのTOTOや、韓国の電動バイクメーカーのジオホールディングスも工場を設立しました。製造業の企業にとって、ベトナムは今もなお魅力的な市場であることがわかります。
サムスンはインドへの製造拠点移転を否定
2021年、サムスンは「742億USD(約8兆5,000億円)」の売上高を記録しました。これは、ベトナム全体のGDPの約20%にあたる数字です。一つの企業がこれほどの数字を達成していることからもわかるように、サムスンはベトナムにとって欠かすことのできない存在です。
2022年、新型コロナを理由にインドへ製造拠点を移転する話も浮上しましたが、サムスンは公式で否定しています。最近はR&Dセンターも開業したように、ベトナムを重要な拠点と捉えており、2023年以降も積極的な投資が続くことでしょう。
2022年の貿易額は過去最高を記録
2022年にベトナム経済は復活を遂げ、GDPで約8%の成長、輸出・輸入ともに過去最高を記録しました。貿易黒字も達成し、概ね良い結果に終わった貿易収支ですが、細かく見ていくと懸念点が残ります。
伸び率は、2022年前半に前年同期比で輸出が17.3%増、輸入が15.5%増に対し、後半は輸出が4.3%増、輸入が0.7%増と伸び悩みました。これはウクライナ紛争により世界的にインフレが発生し、景気が後退していることが原因と考えられます。
欧米の需要減により数万人の従業員が解雇
ベトナムの輸出全体の約30%は米国向けです。前の見出しでも述べたように、米国ではウクライナ紛争を原因としたインフレが発生し、需要が減少しています。
2022年後半の受注額は米国向けで約40%、ヨーロッパは約60%減少しており、数万人の工場労働者が解雇されました。貿易額は最高額を達成した一方で、一部の輸出企業は厳しい状況を迎えています。
日系の工場でストライキが発生
2023年1月、日系企業の工場で賞与額を不満に思った従業員によって、ストライキが発生しました。勤続12ヶ月未満の社員に対しては、賞与を一律「10万ドン(約550円)」を支給していたようです。
ベトナムは日本と異なり、給与や昇給が少ないことによるストライキが頻繁に起こります。外資企業は国内のインフレ率や、他社の昇給額などを考慮して対応することが求められます。
ベトナムの製造業の今後

次に、2023年以降のベトナムの製造業の展望を述べていきます。
・2022年の下半期低迷の影響を受ける可能性が高い
・外資系企業の投資は依然として活発
・人件費は増加傾向
それぞれを詳しく見ていきましょう。
2022年の下半期低迷の影響を受ける可能性が高い
2023年は、ベトナム国会はGDP成長率目標を6.5%と定めていますが、達成は厳しいと予想されています。理由としては、2023年に入っても需要が回復しておらず、情勢悪化の原因となっているウクライナ紛争の終わりが見えないためです。
グエン・ティ・フオン統計総局長は「先行きが不透明であり、予測することは難しい。2022年は順調に成長したが、2023年は挑戦的な目標となる」と述べています。
外資系企業の投資は依然として活発
国際通貨基金(IMF)は、2023年のベトナムのGDP成長率を「6.2%」と予測しています。これは、タイやインドネシア、シンガポールなどを抑えて、東南アジアでもっとも高い数字です。
日系企業の意欲も高く、半導体工場向けの部品を作るヨコオは2月に新工場を稼働開始、スマホ用基盤を生産するメイコーベトナムは新しいラインを立ち上げるなど、盛んに投資が行われています。
人件費は増加傾向
2021年から2022年の間で、ベトナムの日系企業の人件費は「約5.8%」上昇しました。2023年も同程度上昇すると予想されています。
工場従業員の給与が上がる中で、どのように人員を確保していくかは、今後も重要なポイントとなるでしょう。
まとめ
ベトナムでは製造業はGDPの25%を占める重要な産業です。日系企業を含む外資系企業の投資は依然として好調である一方で、国際情勢悪化による需要減の懸念を抱えています。
欧米ではすでに撤退する会社も出てきており、ここ3年、5年の間で産業の構造に大きな変化が出てくるかもしれません。今後ベトナムへの進出を検討している方は、最新の情報を元に判断するようにしてください。