2023年にベトナムは景気後退しているのか
ベトナム経済は2022年に大きな躍進を遂げました。これは新型コロナの感染防止措置が解除され市場の動きが再開したことで、鉱工業や建設業、サービス業を中心に大きな成長があったためです。
一方で2022年後半には製造業での受注減、不動産業で大企業の幹部の逮捕など懸念材料も浮上し、2023年の景況を不安視する声も多く挙がっていました。
2023年もすでに折り返しを迎え、現在のベトナムの経済状況について気になっている人も多いのではないでしょうか。本記事では、2023年前半のベトナムの経済状況や今後の見通しについて詳しく解説していきます。
2023年にベトナムは景気後退しているのか

ここでは、2023年のベトナム経済の主な動向についてまとめていきます。
第2四半期のGDP成長率は前年同期比で4.14%の成長
サービス業が景気を牽引
依然として不動産市場は不安定
外資企業の投資件数が増加も、金額が減少
輸出入ともに大幅減少
株価は回復傾向
それぞれ詳しく解説していきます。
第2四半期のGDP成長率は前年同期比で4.14%の成長
ベトナム経済は、2023年第1四半期で3.28%、第2四半期で4.14%の成長を記録しました。全体としてはいずれもプラスになったものの、業界別では第1四半期には製造業が−0.49%、不動産業が−0.74%、第2四半期には不動産業で−0.89%とマイナス成長をしています。
製造業は海外からの受注減、不動産業は信用不安や物件価格価格が大幅に下落していることが、マイナスの要因として挙げられます。
サービス業が景気を牽引
サービス業は2023年第1四半期に6.56%、第2四半期に6.11%の成長を記録し、製造業や不動産業のマイナスをカバーした形になりました。内訳を見ると第1四半期にホテル・飲食で22.89%、文化・レジャーで12.72%など、観光に関連するサービスが大きく伸びています。
小売りと金融業も順調に成長しており、ベトナム経済全体の向上を促進しているといえるでしょう。
依然として不動産市場は不安定
資金繰り悪化により、これまでに1200件を超えるプロジェクトが中断に追い込まれています。
今まで多くのベトナムの不動産会社は社債を発行して資金の調達をしてきましたが、用途と異なる形で使用していたことが発覚しました。これにより運用資金が途絶え、社債のデフォルトが発生し、信用不安が広がっています。
2023年1月末の時点で、社債を償還できない企業が54社あるとされています。ここ数年、不動産価格は右肩上がりで推移してきましたが、2023年に入り南部地域を中心に大きく下落しています。
外資企業の投資件数が増加も、金額が減少
2023年上半期の外資企業による投資件数は55%増加しましたが、金額自体は20%減少しました。これは大規模な投資案件が少ないことが理由と考えられます。
業種別では、投資認可額1位が製造業、2位が不動産業、3位がコンサルでした。海外からベトナム国内で低迷している業種への投資が進んでいます。
輸出入ともに大幅減少
ベトナムの、2023年上半期の輸出額は前年同期比で−12.0%の1,646億8,090万ドル、輸入額は前年同期比で-18.4%減の1,518億3,733万ドルです。貿易収支としては黒字になったものの、全体としては減少する形となりました。
国別では米国への輸出が前年同期比-22.1%、中国からの輸入が前年同期比-19.5%減を記録しています。加工貿易を主とするベトナムでは、輸出入額の減少が製造業の低成長率につながっていると考えられます。
株価は回復傾向
ベトナム株の代表的な株価指数であるVN30は、年始を底に緩やかに回復しています。
VN30はベトナムの代表的な企業30社によって構成されますが、2023年7月には大手不動産会社のノバランドとファットダットが外れ、代わりに銀行銘柄が組み込まれることが発表されています。
2023年下半期の景気予測
2023年のGDP成長率について、予想は割れています。
2023年7月、シンガポールの国際機関「AMRO(ASEAN+3マクロ経済調査事務局)」は、4月時点で予想していた6.8%から4.4%に下方修正しました。この理由として、外需低迷が予想以上に深刻であったことを挙げています。
一方でベトナムの計画投資省は2つのシナリオを想定し、それぞれ6%、6.5%の成長を見込んでいます。いずれのシナリオも第3四半期は7%前後、第4四半期は10%前後上昇すると予想しています。
まとめ
2023年下半期のベトナム経済は、米国や中国からの輸出入額の減少、不動産市場の信用不安が引き続き影響する見込みです。特に不動産市場の問題については、まだ解決の糸口が見えておらず、長期化する様相を見せています。
一方で、外資企業の投資件数が増加していることは良い傾向といえるでしょう。製造業に多くの案件が集中しているように、人件費が上昇する中でも、依然としてベトナムは魅力的な市場として捉えられていることがわかります。